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番外編⑤ 接触と探り«室野彩流視点»
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翌日、僕は橋上君に声をかけた。
「橋上君、実はゼミのグループ作業のことで相談
したいことがあるんだけど、いいかな?」
まさか、僕が話しかけるとは
思っていなかったのか
かなり、驚かれた。
「室野君が声をかけてくるなんて珍しいね……どうしたの?」
「実に、次のグループ作業で鵲當真君と
同じグループなんだけど、
どういう人なのか
知りたくて……」
桜龍に渡せる情報が手に入るといいけど……
「鵲君と同じグループか……
ぶっちゃけ、苦労すると思うよ。
特に室野君みたいな優しくて真面目な人は関わりたくないと思う」
「留年寸前って、噂で聞いたんだけど、本当?」
「本当だよ。
ここだけの話だけど、鵲君は課題を
全部“取り巻き”の人たちにやらせて、
自分でやらないから、
テストの点数は上がらないし、
馬鹿なままで 留年寸前ってわけさ。
僕も一応、一緒にいるけど、
そろそろ、離れたいんだよね……」
おっと、これはチャンスかもしれない。
「なるほど、ありがとう。
実は、僕の婚約者が鵲君に
狙われてるみたいで怖がっているんだよ……」
まぁ、怖がってるというのは嘘だが狙われたのは本当だ。
「室野君の婚約者が鵲君に狙われてる……?」
「うん、芥原財閥の会長の孫娘で
社長夫妻の娘の芥原桜龍。
去年、鵲當真君とのお見合いを
断ったら狙われるようになったって言ってた……」
「あの、高校生にして天才で才媛って言われてる
芥原桜龍さん!?
まさか、室野君の婚約者だったとは
知らなかった……
そっか、婚約者なら
変な輩から守りたいよね」
僕は頷くことで肯定した。
「鵲君は馬鹿で留年寸前なのは事実だけど、
狡猾で腹黒い面もある。
相手の弱点を見つけて脅したり、恋人を取られたって
言ってた友人もいたよ……
課題を取り巻きにやらせてるのも
その取り巻きの弱点や弱みにつけこんで
半ば脅してやらせてるみたいだし。
だから、室野君も気を付けてほしいんだ……」
「橋上君、ありがとう」
ーー
翌週、ゼミのグループ作業で同じ班になった
鵲當真から話しかけてきた。
「君が室野彩流君?」
一件、笑っているように見えるが目の奥は
僕を見定めようとしているのがわかる。
「そうだよ。
同じ班になるのは初めてだよね、よろしくね」
とりあえず、無難な挨拶をしてみる。
「よろしく。
ところで、室野君って芥原桜龍さんの恋人なの?」
「どうして、そう思ったの?」
質問を質問で返す。
「先週から芥原家の執事が君を送り迎えしてるのを見たから」
周郷さんが僕を送り迎えしてるところを見られていたのか。
「正確には“婚約者”だよ」
「あの天才にして才媛の芥原桜龍さんが
“庶民”の大学生を選んだっていう噂は本当だったんだね。
去年、お見合いを断られてね……
半信半疑だったんだけど、本当に婚約者がいたとはね……」
鵲當真は僕を挑発したいみたいだけど、
生憎、この手の輩には前世から慣れている。
「僕は桜龍を世界一愛してるからね
誰かに譲るつもりはないんだ。
それから、桜龍を“駒”にするのは到底無理だよ。
彼女は自分より“馬鹿”のいうことは聞かないから」
クスッと笑った僕に鵲當真は眉を潜めた。
「言うじゃないか。グループ作業は
全部室野君にやってもらおうかな」
「構わないけど、それだと
鵲君は単位ゼロだね。
僕は君の取り巻きたちみたいに
自分の手柄を譲るつもりはないんでね」
グループ作業の全てを僕に押し付けたことを
教授にバレた鵲當真は勿論、単位ゼロ。
そして、夏休み前のテストも当然、散々だったらしい。
﹝終業式後﹞
「室野君」
教室を出ようとしたところで橋上君に声をかけられた。
「橋上君、やっと、夏休みだね」
「だね。それにしても、室野君はすごいね。
鵲君を撃退した人は初めてだよ。
今回ばかりは、アウトだったみたいで
留年確定だってさ。
あの、室野君、オレと友達になってくれない?
あ、室野君が鵲君を撃退したからとかじゃないけど
目が覚めたんだ……駄目かな……?」
成る程、橋上君は“離れる”きっかけがほしかったんだろう。
「僕でよければ、是非」
僕と橋上君が話していると背後から気配を感じた。
「橋上、お前、裏切るつもりか?」
気配の正体は予想通り、鵲當真。
「彩流くん!!」
鵲當真と対峙しているとふいに桜龍の声が聞こえてきたと思った
次の瞬間、鵲當真が吹っ飛んだ。
「僕の大事な婚約者に何をしようとしたのかな~!!」
相変わらず、桜龍の蹴りは鋭い。
「僕はね、自分より“頭の悪い人”と“弱い人”が
一番、嫌いなんだよ!!」
あ~あ…… 桜龍は怒ると怖いんだよね……
「芥原さんは美人で頭がいいだけじゃなくて
武術にも長けているんだね……凄いや」
ほんの一瞬前までは物凄い形相で鵲當真を睨んでいたのに
僕の隣にいた橋上君を見つけると、にこっと笑った。
「あなたが橋上さん?
初めまして、室野彩流君の婚約者の芥原桜龍です。
お祖父様の“教育方針”で芥原家に生まれたら
五歳から護身術を叩き込まれるんですよ」
自分で蹴り飛ばした鵲當真は
完全にシカトして橋上君と話している。
「五歳!? 芥原家って凄いんだね……」
「かなりスパルタな教育をされてきたので
そこら辺の男には負けないんですよ」
壁に背中を打ち付け、いまだに動けずにいる鵲當真を
桜龍は片手で持ち上げた。
「さっき、一つ言い忘れたけど、
“卑怯な奴”と
“努力しない奴”も嫌いなんだよ。
二日後には“鵲家”は
なくなってるからお楽しみに。
橋上さんはよかったら
我が家に来ませんか?
彩流君のご友人は
僕の友人でもありますから」
鵲當間に対する声色と橋上君に対する声色がまったく違う。
桜龍は興味がなくなった玩具のように、鵲當間に振り向きもせず、僕と橋上君を連れて
校門に向かった。
二日後、桜龍の宣言通り
鵲家は潰れた。
理由は脱税に政治家との癒着、
裏取引と叩けば叩くほど
埃がわんさか出てきたからだ。
夏休み明け、
大学内は鵲當間の
話題で持ちきりだった。
「ねぇ、ニュース見た?
鵲君って、裏がありそうと
思ってたけど、
あんなにヤバい家だったなんてね……」
「見た見た、
芥原財閥の会長の孫娘で
社長夫妻の娘の
芥原桜龍さんが
鵲家の不正を見つけたらしいよ。高校生なのに凄いよね。
私、彼女の医学論文
読んだことあるんだけど、
視点がもう異次元って感じで凄かった……
だから、今回の鵲財閥の
不正も見つけられたのかも。
年下だけど、尊敬しちゃう」
いつの時代も“悪”は罰せられる。
これで僕と桜龍を妨げるものはなくなった。
「室野君、食堂に行こう」
「そうだね、橋上君は今日、何食べる?」
橋上君とそんな会話をしなが僕は大学校内を歩いている。
「橋上君、実はゼミのグループ作業のことで相談
したいことがあるんだけど、いいかな?」
まさか、僕が話しかけるとは
思っていなかったのか
かなり、驚かれた。
「室野君が声をかけてくるなんて珍しいね……どうしたの?」
「実に、次のグループ作業で鵲當真君と
同じグループなんだけど、
どういう人なのか
知りたくて……」
桜龍に渡せる情報が手に入るといいけど……
「鵲君と同じグループか……
ぶっちゃけ、苦労すると思うよ。
特に室野君みたいな優しくて真面目な人は関わりたくないと思う」
「留年寸前って、噂で聞いたんだけど、本当?」
「本当だよ。
ここだけの話だけど、鵲君は課題を
全部“取り巻き”の人たちにやらせて、
自分でやらないから、
テストの点数は上がらないし、
馬鹿なままで 留年寸前ってわけさ。
僕も一応、一緒にいるけど、
そろそろ、離れたいんだよね……」
おっと、これはチャンスかもしれない。
「なるほど、ありがとう。
実は、僕の婚約者が鵲君に
狙われてるみたいで怖がっているんだよ……」
まぁ、怖がってるというのは嘘だが狙われたのは本当だ。
「室野君の婚約者が鵲君に狙われてる……?」
「うん、芥原財閥の会長の孫娘で
社長夫妻の娘の芥原桜龍。
去年、鵲當真君とのお見合いを
断ったら狙われるようになったって言ってた……」
「あの、高校生にして天才で才媛って言われてる
芥原桜龍さん!?
まさか、室野君の婚約者だったとは
知らなかった……
そっか、婚約者なら
変な輩から守りたいよね」
僕は頷くことで肯定した。
「鵲君は馬鹿で留年寸前なのは事実だけど、
狡猾で腹黒い面もある。
相手の弱点を見つけて脅したり、恋人を取られたって
言ってた友人もいたよ……
課題を取り巻きにやらせてるのも
その取り巻きの弱点や弱みにつけこんで
半ば脅してやらせてるみたいだし。
だから、室野君も気を付けてほしいんだ……」
「橋上君、ありがとう」
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翌週、ゼミのグループ作業で同じ班になった
鵲當真から話しかけてきた。
「君が室野彩流君?」
一件、笑っているように見えるが目の奥は
僕を見定めようとしているのがわかる。
「そうだよ。
同じ班になるのは初めてだよね、よろしくね」
とりあえず、無難な挨拶をしてみる。
「よろしく。
ところで、室野君って芥原桜龍さんの恋人なの?」
「どうして、そう思ったの?」
質問を質問で返す。
「先週から芥原家の執事が君を送り迎えしてるのを見たから」
周郷さんが僕を送り迎えしてるところを見られていたのか。
「正確には“婚約者”だよ」
「あの天才にして才媛の芥原桜龍さんが
“庶民”の大学生を選んだっていう噂は本当だったんだね。
去年、お見合いを断られてね……
半信半疑だったんだけど、本当に婚約者がいたとはね……」
鵲當真は僕を挑発したいみたいだけど、
生憎、この手の輩には前世から慣れている。
「僕は桜龍を世界一愛してるからね
誰かに譲るつもりはないんだ。
それから、桜龍を“駒”にするのは到底無理だよ。
彼女は自分より“馬鹿”のいうことは聞かないから」
クスッと笑った僕に鵲當真は眉を潜めた。
「言うじゃないか。グループ作業は
全部室野君にやってもらおうかな」
「構わないけど、それだと
鵲君は単位ゼロだね。
僕は君の取り巻きたちみたいに
自分の手柄を譲るつもりはないんでね」
グループ作業の全てを僕に押し付けたことを
教授にバレた鵲當真は勿論、単位ゼロ。
そして、夏休み前のテストも当然、散々だったらしい。
﹝終業式後﹞
「室野君」
教室を出ようとしたところで橋上君に声をかけられた。
「橋上君、やっと、夏休みだね」
「だね。それにしても、室野君はすごいね。
鵲君を撃退した人は初めてだよ。
今回ばかりは、アウトだったみたいで
留年確定だってさ。
あの、室野君、オレと友達になってくれない?
あ、室野君が鵲君を撃退したからとかじゃないけど
目が覚めたんだ……駄目かな……?」
成る程、橋上君は“離れる”きっかけがほしかったんだろう。
「僕でよければ、是非」
僕と橋上君が話していると背後から気配を感じた。
「橋上、お前、裏切るつもりか?」
気配の正体は予想通り、鵲當真。
「彩流くん!!」
鵲當真と対峙しているとふいに桜龍の声が聞こえてきたと思った
次の瞬間、鵲當真が吹っ飛んだ。
「僕の大事な婚約者に何をしようとしたのかな~!!」
相変わらず、桜龍の蹴りは鋭い。
「僕はね、自分より“頭の悪い人”と“弱い人”が
一番、嫌いなんだよ!!」
あ~あ…… 桜龍は怒ると怖いんだよね……
「芥原さんは美人で頭がいいだけじゃなくて
武術にも長けているんだね……凄いや」
ほんの一瞬前までは物凄い形相で鵲當真を睨んでいたのに
僕の隣にいた橋上君を見つけると、にこっと笑った。
「あなたが橋上さん?
初めまして、室野彩流君の婚約者の芥原桜龍です。
お祖父様の“教育方針”で芥原家に生まれたら
五歳から護身術を叩き込まれるんですよ」
自分で蹴り飛ばした鵲當真は
完全にシカトして橋上君と話している。
「五歳!? 芥原家って凄いんだね……」
「かなりスパルタな教育をされてきたので
そこら辺の男には負けないんですよ」
壁に背中を打ち付け、いまだに動けずにいる鵲當真を
桜龍は片手で持ち上げた。
「さっき、一つ言い忘れたけど、
“卑怯な奴”と
“努力しない奴”も嫌いなんだよ。
二日後には“鵲家”は
なくなってるからお楽しみに。
橋上さんはよかったら
我が家に来ませんか?
彩流君のご友人は
僕の友人でもありますから」
鵲當間に対する声色と橋上君に対する声色がまったく違う。
桜龍は興味がなくなった玩具のように、鵲當間に振り向きもせず、僕と橋上君を連れて
校門に向かった。
二日後、桜龍の宣言通り
鵲家は潰れた。
理由は脱税に政治家との癒着、
裏取引と叩けば叩くほど
埃がわんさか出てきたからだ。
夏休み明け、
大学内は鵲當間の
話題で持ちきりだった。
「ねぇ、ニュース見た?
鵲君って、裏がありそうと
思ってたけど、
あんなにヤバい家だったなんてね……」
「見た見た、
芥原財閥の会長の孫娘で
社長夫妻の娘の
芥原桜龍さんが
鵲家の不正を見つけたらしいよ。高校生なのに凄いよね。
私、彼女の医学論文
読んだことあるんだけど、
視点がもう異次元って感じで凄かった……
だから、今回の鵲財閥の
不正も見つけられたのかも。
年下だけど、尊敬しちゃう」
いつの時代も“悪”は罰せられる。
これで僕と桜龍を妨げるものはなくなった。
「室野君、食堂に行こう」
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