BL短編集①

失ったものは

{絶望と一度の過ちと後悔}

＊＊二年前〈幸映side〉＊＊

まさか、あなた達が
そう関係になっていたとは
知りませんでしたよ(苦笑)

弟と恋人がｷｽしてるところに
遭遇するとは吃驚です。

『私を陰で嗤っていたのですね……』

兄を出し抜いた気分は如何ですか?

陰で弟と付き合いながら
私とも付き合っていた気持ちは?

訊きたいことは沢山ありますが
その答えを聞く勇気はありません。

『まぁいいですよ。

私がいなくなるだけですから……

どうぞ、お幸せに』

そんなことを思っていませんが
口からはそんな言葉が出ていました。

何も答えない二人を
その場に残し、家を出ました。

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＊＊二年後〈博義side〉＊＊

【昨夜、◆◆海岸沖で見つかった
若い男性の遺体は
T市在住の
水羽幸映さんと判明しました。

警察は事故と事件の
両方から捜査をするとのことで
詳しいことはわかり次第
お伝えいたします。

では、次のﾆｭｰｽです】

そのﾆｭｰｽを見ていた僕は
その場に崩れ落ちた。

あの日、確かに
自分がいなくなるだけと言った。

あれから二年。

何処を探しても見つからなかったのに
まさか、こんな最悪なかたちで
所在を知ることに
なるとは思いもしなかった。

これが、一度の過ちの代償なのか……

彼はこのﾆｭｰｽを見ただろうか?

見たのなら、
ｼｮｯｸを受けているだろう。

僕達が失ったものは
〈信頼〉〈恋人〉〈友人〉〈家族〉

だが、僕達には
ｼｮｯｸを受ける資格さえ
ないのかもしれない。