ネオン街で会いましょう

星川過世

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 「......休みの日くらい、帰らなくていいの?」
 今日、俺は仕事だったが零夜くんは休みだった。帰って来るなりおいしそうなにおいがして、思わずそう口にする。
 「......ごめん。そうだよね。居心地よくてつい」
 「あ、いや、そういう意味じゃなくて! 俺は零夜くんが居てくれたら嬉しいけど、零夜くんは仕事で疲れてるだろうに、ここじゃ休めないだろうなと思って」
 客の家に居るのは実質仕事だろう。家事も労働だし。
 「でも、アユムの部屋ってなんか落ち着くから」
 「そ、そう......?」
 微妙な空気をどうフォローしたらいいかわからないままとりあえず着替える。俺はいつもそうだ。その場その場で上手に立ち回れる零夜くんはすごいと思う。
 もっとも、よく心理学の本や営業の本を読んでいるから、勉強の賜物なのだろうけれど。
 部屋着になって戻ると、美味しそうなにおいは強くなっていた。
 「和風ハンバーグだよ。大根おろしとぽんずで食べてね」
 「おいしそう......」
 向かい合って「いただきます」と手を合わせる。零夜くんは他のホストとのおもしろエピソードや最近のニュースについてなどをとりとめもなく話す。
 零夜くんと居ると、気が楽だ。相手をリラックスさせる力が零夜くんにはある。
 「来週の土曜日、デートしようよ」
 「え、あ、うん」
 デート、という言い方がなんだか面映ゆい。
 「そういえばあんまりしたことなかったよね。友達が彼女と旅行行ったらしくて羨ましくてさ。あ、もちろん旅行じゃなくていいけど」
 「そうだね。じゃあ、どっか行こうか。行きたいところある?」
 「うーん、折角だから非日常っぽいところがいいよね。遊園地とか? 最近は室内遊園地も人気らしいね」
 いつのまにか食事を終えていた零夜くんがスマホを取り出して真剣に調べ始める。その様子が可愛らしくて思わず笑みがこぼれた。
 「日帰り旅行もあり? うわ、着付け体験だって! アユム絶対着物に会う!」
 派手な顔立ちで現在髪が青い零夜くんには馴染まないだろうけど、着こなしはしてしまいそうだなと思う。
 「あ、温泉はどう?」
 「いいよ」
 疲れも取れそうだし、夜からいつも通り出勤するつもりらしい零夜くんにもちょうどいいだろう。適度に非日常感もある、ような気がする。
 「あ、神社巡りもいいな~、次デートするときは神社巡りしよう? あ、でも今回俺が決めたから次はアユムが決めた方がいいよね」
 「いいよ、そんなの。零夜くんが行きたいところに行こう?」
 というよりチョイスが全体的に渋いというか、和風? なのが意外だった。
 次、という言葉にまんまと喜ばされる。
 「いつか旅行も行こうね!」
 「うん。行くとしたら零夜くんはどこ行きたい?」
 「奈良! 鹿にせんべいあげるアユムの写真撮りたい!」
 やっぱりチョイスが渋い。零夜くんは鹿にも人気だろうか。動物や子どもにも好かれそうなオーラがあるけれど。
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