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翌日、零夜くんが他の客のところに行ってしまったので俺はパソコンを開いて掲示板を見ていった。
時々俺に対するネガティブな書き込みも見られるが、ネットで話題にされることには慣れていなくとも掲示板のノリには慣れていて、意外と流せるものだった。あまり良いことではないが。
それよりも、気になる書き込みが数件。
『零夜って同棲してる彼氏が居るって本当?』
『零夜に名前間違えられたんだけど、男の名前だった』
これ、俺かな。後者はなんとも言えないけど、前者は俺ではないだろうか。すぐに否定のレスが付いていたけれど。実際間違いだし。俺は彼氏でもなければ同棲しているわけでもない。
しかし周りからそう見えているというだけで、妙な優越感のようなものが沸いてきた。
どんどん芋づる式にホストや夜の店に関する情報を見ていく。こういうのはいくらでも時間を消費してしまうから危険だ。
「......」
やはりホストに通う客には夜の仕事をやっている人が多い。別に他の客に勝てるほどお金を積みたいなんて思っていない。でも、そろそろ通帳の残高が怪しくなってきているのもまた事実だった。
自分が“そう”なので男でもできるそういう仕事はたくさん知っている。もちろん女の子ほど稼げるものになると選択肢が少ないことも、俺の容姿と能力では難しいことも知っているけれど。
零夜くんに相談してみようか。零夜くんの紹介なら、紹介料とか入るかもしれないし。
そう考えて、俺はページを開いたまま溜まっていた洗濯をしに行き、そのままパソコンが付けっぱなしなことに気が付かないまま一日を過ごしてしまったらしい。金が無いと言っておきながら節電も節約も出来ていない。
翌日仕事から帰って来ると、零夜くんがいた。
「あれ? 今日お仕事は?」
「今日は休みとった」
「ふぅん」
キッチンからガーリックの匂いがする。多分今日はシチューとガーリックトーストだ。
って、なんか夫夫みたいでいいな。
しかしいつもは寝ころんだり本を読んだり、くつろぐか何かしているかで待っているのに、今日はソファにただ座っている。表情も真剣とも暗いとも取れるものだった。
「零夜くん? どうかしたの?」
「アユム、ごめん」
「え、な、なにが」
「お前のパソコン、勝手に見た」
「え? ああ」
なんだ、そんなことか。
「つきっぱなしだったから、消した方がいいかと思って」とたどたどしく付け足されたが、別に見られて困るようなものもない。確かにあまり褒められたことではないが、付けっぱなしにしていたのは俺だし、特に怒る気にはならなかった。
「あの、それでさ。見ちゃったんだけど......その、開いてたサイト」
「ああ、そうだ。相談しようと思ってたんだよね」
零夜くんの隣に腰かける。俺の動きを追うように零夜くんの首が動いた。
「働きたいの? こういう店で」
「うん。やっぱり零夜くんと長く一緒にいるためには......」
「だ、だめっ!」
「え?」
がしっと肩を掴まれる。手が食い込んで痛いほどに。
「零夜、くん......?」
「あ、ご、ごめん」
「大丈夫だけど、どうかしたの?」
明らかに様子が尋常ではなかった。零夜くんは誤魔化すように笑って首を振る。
「ううん。でもそうだよね、お金足りなくなるよね。気が付かなくてごめん」
零夜くんはポンポン、と俺の頭を撫でると、少し迷ってから口を開いた。
「今度からアユムの分は俺が払うね」
「は、え、なんで?」
「無理させたくないから」
「無理なんて......」
「いいから」
静かに、しかし断固とした口調でそう言うと、すぐに表情を崩した。
「疲れてるのにごめんね。お風呂沸かしておいたから入っておいで。その間にシチュー温めておくから」
「ありがとう......」
夫夫を通り越して親みたいだ。
時々俺に対するネガティブな書き込みも見られるが、ネットで話題にされることには慣れていなくとも掲示板のノリには慣れていて、意外と流せるものだった。あまり良いことではないが。
それよりも、気になる書き込みが数件。
『零夜って同棲してる彼氏が居るって本当?』
『零夜に名前間違えられたんだけど、男の名前だった』
これ、俺かな。後者はなんとも言えないけど、前者は俺ではないだろうか。すぐに否定のレスが付いていたけれど。実際間違いだし。俺は彼氏でもなければ同棲しているわけでもない。
しかし周りからそう見えているというだけで、妙な優越感のようなものが沸いてきた。
どんどん芋づる式にホストや夜の店に関する情報を見ていく。こういうのはいくらでも時間を消費してしまうから危険だ。
「......」
やはりホストに通う客には夜の仕事をやっている人が多い。別に他の客に勝てるほどお金を積みたいなんて思っていない。でも、そろそろ通帳の残高が怪しくなってきているのもまた事実だった。
自分が“そう”なので男でもできるそういう仕事はたくさん知っている。もちろん女の子ほど稼げるものになると選択肢が少ないことも、俺の容姿と能力では難しいことも知っているけれど。
零夜くんに相談してみようか。零夜くんの紹介なら、紹介料とか入るかもしれないし。
そう考えて、俺はページを開いたまま溜まっていた洗濯をしに行き、そのままパソコンが付けっぱなしなことに気が付かないまま一日を過ごしてしまったらしい。金が無いと言っておきながら節電も節約も出来ていない。
翌日仕事から帰って来ると、零夜くんがいた。
「あれ? 今日お仕事は?」
「今日は休みとった」
「ふぅん」
キッチンからガーリックの匂いがする。多分今日はシチューとガーリックトーストだ。
って、なんか夫夫みたいでいいな。
しかしいつもは寝ころんだり本を読んだり、くつろぐか何かしているかで待っているのに、今日はソファにただ座っている。表情も真剣とも暗いとも取れるものだった。
「零夜くん? どうかしたの?」
「アユム、ごめん」
「え、な、なにが」
「お前のパソコン、勝手に見た」
「え? ああ」
なんだ、そんなことか。
「つきっぱなしだったから、消した方がいいかと思って」とたどたどしく付け足されたが、別に見られて困るようなものもない。確かにあまり褒められたことではないが、付けっぱなしにしていたのは俺だし、特に怒る気にはならなかった。
「あの、それでさ。見ちゃったんだけど......その、開いてたサイト」
「ああ、そうだ。相談しようと思ってたんだよね」
零夜くんの隣に腰かける。俺の動きを追うように零夜くんの首が動いた。
「働きたいの? こういう店で」
「うん。やっぱり零夜くんと長く一緒にいるためには......」
「だ、だめっ!」
「え?」
がしっと肩を掴まれる。手が食い込んで痛いほどに。
「零夜、くん......?」
「あ、ご、ごめん」
「大丈夫だけど、どうかしたの?」
明らかに様子が尋常ではなかった。零夜くんは誤魔化すように笑って首を振る。
「ううん。でもそうだよね、お金足りなくなるよね。気が付かなくてごめん」
零夜くんはポンポン、と俺の頭を撫でると、少し迷ってから口を開いた。
「今度からアユムの分は俺が払うね」
「は、え、なんで?」
「無理させたくないから」
「無理なんて......」
「いいから」
静かに、しかし断固とした口調でそう言うと、すぐに表情を崩した。
「疲れてるのにごめんね。お風呂沸かしておいたから入っておいで。その間にシチュー温めておくから」
「ありがとう......」
夫夫を通り越して親みたいだ。
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