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「あ、アユムだ~!」
店に行くと、テンション高く零夜くんが迎えてくれた。テンションが高すぎて空元気に見える。
席に座ると「久しぶりだね~」と言われる。
零夜くんに代金を払うと言われてから、どうしたらよいかわからなくて来れていなかった。もちろんその間も零夜くんは俺の家に入り浸っていたので、「久しぶりに会うね」ではなく「久しぶりに店に来たね」の意だろう。
しばらく雑談したが、空元気という感じが抜けない。
呼ばれて違う卓に行く姿を目で追った。体をひねればギリギリ見える場所に零夜くんの行先がある。
その卓には、見たことのある女性が座っていた。綺麗な人だ。
零夜くんは楽しそうにその人と言葉を交わし、ニコニコと笑う。空元気とも違う、いかにもホストという感じの笑顔。
嫉妬心は沸かなかった。零夜くんからしたら俺も彼女も等しく客だろうし、俺に対する気安い対応の方が彼女に対するいかにもなキラキラした対応より好きだ。
俺の時みたいにこっそり手を繋いだり、あからさまに甘えたりもしない。俺が喜ぶと思ってやっているのだろうから当然と言えば当然だが、そういうことをしてくれた方が俺は嬉しい。あの子はそれを望んでいないのだろう。
「アユムさん?」
「あ、はい」
ヘルプの人に名前を呼ばれて慌てて振り返る。
「なんか今日、零夜さん変だよね」
「そう、ですね」
適当に相槌を打ちながらほどほどに酒を飲む。そこまで強くないので。
「アユムさんなら何か知ってるかと思ったんですけど」
こうやっておだてられるのは嫌いじゃない。高額ボトルを入れさせようとしてくるのだけ上手く躱して会話する。零夜くんは本気で俺の分を払ってくれる感じなので、お金の使い方は考えないといけない。いや、ホストというのはいくら売上げたが大事なので、零夜くんが払える程度ならむしろ使うべきなのか? 建て替える人もいるし。
「というか最近ずっと変なんですよね」
「へぇ」
こういうのは話半分だ。お金を使わせるために言っている可能性が高いから。
最初は紗雪に教えてもらったことだが、すっかり慣れてしまった自分がなんとも言えない。
翌日目を覚ますと昨夜勝手に入ってきたらしい零夜くんがソファで寝ていて、机の上に俺がホストクラブで払った代金がそっくりテーブルの上に置いてあった。俺は零夜くんを起こさないように洗面所へ向かう。
零夜くんはそう簡単に起きないけれど。
空元気の原因は何だったのか、気になる。当然だ。好きな人に元気がなければ気になる。しかし零夜くんにとっての俺は単なる客だ。詮索するものでもないし、したところで何もわからないだろう。
だから、何も聞かないことにした。
まさかあんなことになるとは知らずに。
店に行くと、テンション高く零夜くんが迎えてくれた。テンションが高すぎて空元気に見える。
席に座ると「久しぶりだね~」と言われる。
零夜くんに代金を払うと言われてから、どうしたらよいかわからなくて来れていなかった。もちろんその間も零夜くんは俺の家に入り浸っていたので、「久しぶりに会うね」ではなく「久しぶりに店に来たね」の意だろう。
しばらく雑談したが、空元気という感じが抜けない。
呼ばれて違う卓に行く姿を目で追った。体をひねればギリギリ見える場所に零夜くんの行先がある。
その卓には、見たことのある女性が座っていた。綺麗な人だ。
零夜くんは楽しそうにその人と言葉を交わし、ニコニコと笑う。空元気とも違う、いかにもホストという感じの笑顔。
嫉妬心は沸かなかった。零夜くんからしたら俺も彼女も等しく客だろうし、俺に対する気安い対応の方が彼女に対するいかにもなキラキラした対応より好きだ。
俺の時みたいにこっそり手を繋いだり、あからさまに甘えたりもしない。俺が喜ぶと思ってやっているのだろうから当然と言えば当然だが、そういうことをしてくれた方が俺は嬉しい。あの子はそれを望んでいないのだろう。
「アユムさん?」
「あ、はい」
ヘルプの人に名前を呼ばれて慌てて振り返る。
「なんか今日、零夜さん変だよね」
「そう、ですね」
適当に相槌を打ちながらほどほどに酒を飲む。そこまで強くないので。
「アユムさんなら何か知ってるかと思ったんですけど」
こうやっておだてられるのは嫌いじゃない。高額ボトルを入れさせようとしてくるのだけ上手く躱して会話する。零夜くんは本気で俺の分を払ってくれる感じなので、お金の使い方は考えないといけない。いや、ホストというのはいくら売上げたが大事なので、零夜くんが払える程度ならむしろ使うべきなのか? 建て替える人もいるし。
「というか最近ずっと変なんですよね」
「へぇ」
こういうのは話半分だ。お金を使わせるために言っている可能性が高いから。
最初は紗雪に教えてもらったことだが、すっかり慣れてしまった自分がなんとも言えない。
翌日目を覚ますと昨夜勝手に入ってきたらしい零夜くんがソファで寝ていて、机の上に俺がホストクラブで払った代金がそっくりテーブルの上に置いてあった。俺は零夜くんを起こさないように洗面所へ向かう。
零夜くんはそう簡単に起きないけれど。
空元気の原因は何だったのか、気になる。当然だ。好きな人に元気がなければ気になる。しかし零夜くんにとっての俺は単なる客だ。詮索するものでもないし、したところで何もわからないだろう。
だから、何も聞かないことにした。
まさかあんなことになるとは知らずに。
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