ネオン街で会いましょう

星川過世

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 レストランを出ると、外はすっかり暗かった。
 夜の闇に零夜くんの髪色は同化している。
 「髪、黒いままにしておくの?」
 「どうしようかな。しばらく黒で、飽きたら染める。職場は髪色自由だから」
 黒も似合う。でも茶髪も似合うし、メッシュが入っていたときもかっこよかった。金髪でもいいと思う。他の髪色にしたってきっとかっこいい。
 これから変わっていく髪の色を、見られたらいいなと思った。
 「......あれ、アユムって本名何?」
 「本名知らないのにプロポーズしようとしたわけ......?」
 俺も本名を知らないでプロポーズを受けているから、人のことは言えないのだが。
 「墨田歩夢」
 「アユムって、どういう字」
 「......歩くに夢」
 「え、かっけー」
 よく言われる。
 「名前負けしてるから、好きじゃない。」
 「えー。俺は好きだけどな~」
 零夜くんに好きだと言われたら、それだけでまぁいいかなと思ってしまう。我ながら単純だ。
 「零夜くんの本名は?」
 「浅井宮人。......これからは宮人って呼んでよ」
 「うん。......宮人くん」
 零夜くん、で馴染んでしまっているからなんだか変な感じだが、もう零夜くんではないのだ。
 これからは、宮人くんの傍で生きていく。ホストと客ではなく、恋人同士として。あるいは、配偶者として。想像もしなかったことだが、悪くないなと思う。
 「でも、ホストやめちゃってよかったの?」
 零夜くんがいつしか語っていたことが嘘だったとしても、熱心に仕事をしていたことは見ていたから知っている。
 「うん。向いてないのは前から薄々気づいてたし」
 「そっか」
 俺は向いてないとは思わないが、本人がそう言うならそうなのだろう。
 「そもそも長く続けられる仕事でもないしね。相当能力があるなら別だけど。夜の街は夢を売ってるけど、夢からはいつか覚めないと」
 しかし、今である必要は無かったのでは? 俺のせいでやめたのか、と思わざるを得ない。やけにペラペラ喋るのがその証拠に感じる。
 そんな俺の表情に気が付いたのか、宮人くんは顔を顰めた。
 「もう、いいから! 俺が決めたからいいんです!」
 まぁ、それはそうだ。
 「あ、今日泊っていい?」
 久しぶりのセリフだ。なんだか嬉しい。
 「いいよ」
 宮人くんは、零夜くんとなんら変わらない。俺には素で接してくれていたということだろうか。そもそも誰に対してもいつでも彼はこうなのだろうか。
 どちらでもいいか。全部ひっくるめてきっと宮人くんなのだし、営業だろうが演技だろうが相手の全てを知ること自体が不可能な以上、そう変わりはしない。
 俺に見せる面が今後変わるとしても、きっとすぐに慣れる。慣れなければ、またそのとき考えればいい。相手が誰であってもそうであるように。
 今大事なのは、宮人くんが俺を好きなのは本当らしいということだけだろう。零夜くんでないなら、もうそんな嘘は吐かなくていい。こっそり新しい就職先の方をチェックしたから大丈夫だ。
 「そのうち一緒に住もうよ。俺のベッド無駄にデカいから新しい部屋にも持って行っていい? 一緒に寝よ」
 「うん、いいよ」
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