【完結】ハズレ召喚と言われたSubの俺。実はデミゴッド 〜優美な騎士団長から溺愛される〜

亜沙美多郎

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パロミデル

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「ジェネシス!!」

 宿舎の外にサミュエルさんと数人の騎士団員が到着していた。

 俺たちが丘を登っている姿が遠くから見えたそうだ。他の騎士団員は街の巡回、森の巡回と手分けして回っているとのことだった。

 タイミングよく合流できてよかったと呑気に考えていると、サミュエルさんはジャックスさんの姿を見るや否や飛び掛かった。

「貴様!! この国の騎士団だろ!? 一体どうなってる? 街も森もボロボロじゃないか!! お前らは何のために騎士団をやっているんだ!!」

 いつもの口調ではない。騎士団として怒りをジャックスさんにぶつけたのだ。

 ジャックスさんは言い返しもせず、サミュエルさんからの怒りを受け止めた。慌ててジェネシスさんが止めに入ったが、サミュエルさんの怒りは頂点まで上り詰めていた。

 あの街の状況を見れば、そう言いたくなるのも理解できる。

「衰弱している人が何人もいた! もう助かる見込みのない人も!! 他の団員は森で魔獣と戦っている! それなのに、この国は騎士団も医師も動かないなんて!! 全く信じられない!」

 サミュエルさんはお構いなしに苦情をぶつける。

 ジェネシスさんは「後で必ず説明するから」と、どうにかその場を抑えた。
 

「サミュエル、今からは危険が及ぶかもしれない。君は街の巡回を当たってくれ」

 ジェネシスさんから促されたが、サミュエルさんはここに残ると言って離れなかった。

「今、第三騎士団をヴァシリカまで戻らせてる。早急に食事の配給と、医師をなるべく多く来させるように手配したわ。第四騎士団は森で魔獣を、第五騎士団が街を巡回してるけど……とてもじゃないけど対応しきれない。人が足りなすぎる。ヴァシリカに戻ったら第二騎士団への救助要請も頼んでおいた」

「ありがとう。流石はサミュエル、完璧な対応だ」

 ジェネシスさんに褒められて、マスクの中で目を細めた。


「しかし、グルニスランの騎士団長は俺たちが想像以上に危険な人物だ。Lienを一緒に連れて行ってくれ。ここからは俺と、このジャックスさんで動く」

 サミュエルさんはジェネシスさんと離れたくないと言いたげだ。俺も今、サミュエルさんと同じ表情をしているだろう。二人とも、不安なのだ。

 Subとして、ジェネシスさんが傍にいてくれる安心感は絶大だ。

 でも、パロミデルがどんな人物かを痛いほど知っている俺は、会うべきではないと分かっている。


「サミュエルさん、行きましょう」

 せめてジェネシスさんとジャックスさんの邪魔はしたくない。この二人が一緒なら、もしパロミデルが暴れ出したとしても止めらるだろう。


 サミュエルさんも俺の言動に驚いたが、少し黙り込むとキリッとした目つきになった。

「分かったわ……」

 ジェネシスさんも、サミュエルさんと俺が一緒なら安心だと言ってくれた。

 ジェネシスさんとジャックスさんの元を離れ、サミュエルさんと共に移動しようとした時だった。

「うっ!」

 背後からものすごいアツを感じた。俺だけではない。サミュエルさんも息苦しそうに胸元を掴んだ。


 (見つかった!)

細胞に刻まれた記憶が蘇る。この凄まじい圧の気配は……。


「外がやけに騒がしいから見に来てみれば、見覚えのある顔だな」

 ドスの効いた重い声が、頭上から押しつぶすようにのしかかってきた。

「……パロミデル……」


 ジェネシスさんは瞬時に剣を握った。

 騎士団長とは思えないラフな服装で様子を見にきたパロミデルが、頭を掻きながら気怠そうに歩いてくる。

 気怠そうなのに、この圧なのだ。もうグレアは浴びたくない。

 早く離れなければいけないのに、俺もサミュエルさんも脚がすくんで動けないでいる。

「おや? 貴様、死んだと思っていたがとんだ勘違いだったようだな。もしかして、まだ俺のコマンドが忘れられなかったか?」

 ニヤリと薄気味悪く口角を上げた。


「あなたが騎士団長のパロミデルなんだね?」

 ジェネシスさんが割って入る。

「いかにも、俺がパロミデルだが……。貴様から名乗れ」

 ジェネシスさんを見定めるようにジロジロと見ている。そんな様子さえも腹立たしい。


 ジャックスさんは下を向いて歯を食いしばっている。逆らえない状況に、心痛を嘆いたようだった。

 ジェネシスさんはパロミデルの圧に負けていない。むしろジェネシスさんの方が強い。さっきまで穏やかだったが、パロミデルと顔を合わせた瞬間から気配が変わったのを感じた。今は殺気さえ感じる。

 この人は感情のコントロールが上手い。

 
 しかしパロミデルの圧に当てられた俺とサミュエルさんは、同行した騎士団員にSubとバレてしまった。嫌なタイミングだ。

 そんな俺たちをパロミデルは益々喜んだ。Subがもう一人増えたとでも言いたげに……。

 ジェネシスさんが俺たちとパロミデルの間に立ってくれたが、この圧はそれだけで逃れるものではない。

「あの状況で助かるなんて、よほど運が強いらしい。しかし騎士団長様を連れて戻ってくるなんてなぁ」

 じわじわと近づいてきている。ジェネシスさんがいてくれるから安全だ……なんて考えはどこかに消え去った。

 パロミデルがいつグレアを放つとも限らない。恐怖に支配される。

 まともにパロミデルの顔すら見れなかった。


「今日は話をしに来た。Lienは関係ない」

 ジェネシスさんが話かけたが、気にも留めずに俺から視線を離さない。

「森と街の様子を見てきたが、この状況を説明してもらえないか?」

 続けて話しかける。それでもパロミデルの狙いは俺だけに絞られていた。


「パロミデル騎士団長!! この国の住人がどうなっても良いのか!?」

 ついに声を荒げた。これ以上近づけば剣を抜くだろう。

 辺りが緊張感で張り付いた。
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