【完結】ハズレ召喚と言われたSubの俺。実はデミゴッド 〜優美な騎士団長から溺愛される〜

亜沙美多郎

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浄化

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 街は人で賑わっていた。

 一足先に到着したジャックスさんが声をかけて回ったようだ。

 グルニスランの騎士団員が慌てて宿舎に戻る様子も伺える。

 衰弱している人も、肩を貸し合って聖水を求め外に出てきた。

 ジャックスさんがこの雨を飲め! と促している。


「ジェネシス!! リアン!!」

 サミュエルさんも建物の中から飛び出してきた。ジョシュアと手を繋いでいたから驚いたが、触れないでおいた。

「この雨は……みんなマスクもしないで、本当に大丈夫なの?」

「サミュエル、ジョシュア、君たちもマスクを外してみればいい」

 ジョシュアと顔を見合わせながら、マスクを外した。

「「……呼吸ができる……!」」

「ふふ……俺と同じことを言ってる」

「だって! 誰だってそうなるわよ。でもなんで? 雨が穢れを浄化してるっていうの?」

「これは聖水の雨です」

「聖水ですって!?」

「サミュエル、そのリアクションはもう俺とジャックスさんがやって終わったんだ。とにかく、全ての住人をこの聖水の雨に当たるよう指示してくれ」

 サミュエルさんは「驚かせてもくれないの?」と不服そうにしていたが、すぐに動いてくれた。ジョシュアも「お手伝いします!」と、サミュエルさんについて行く。

 ジェネシスさんは各騎士団長と折り合い、第三騎士団と第五騎士団は直ちにヴァシリカに戻り、同じように指示を煽るよう話をつけた。


 街に活気が戻っていく。

 白龍はまだ戻っていないから、ヴァシリカに行ったか……それとも他にも穢れが充満している国があるかもしれないと思った。


 俺では浄化できないと嘆いたあの頃さえも懐かしい。

 聖女として召喚され、さまざまなことがあった。まさか自分が伝説のデミゴットで、(まだ未熟ではあるが)一度きりの祈りで穢れを浄化できているなんて信じられない。


 でもこの光景はすごく好きだ。

 どこもかしこも歓喜に沸いている。

 マスクをせずとも、皆が外に出てはしゃいでいる。弱っていた人が聖水の雨を飲み、元気になっていく。いい笑顔だ、子供も大人もみんな心からの笑顔を見せている。


 こんな幸せが他にあるだろうか。

 辺りを見渡し、俺も自然と笑顔になる。

 頭がふらふらし、視界が霞んできた。

 さっきまで浮いていた身体は、地面を踏みこみきれず、そのまま地面に蹲った。

「Lien!!」

 どこから見ていたのか、ジェネシスさんが気付き、駆けつけた。

「大丈夫か? Lien」

「気を抜いたら、眩暈がしてきて……」

「きっと急激に力を使いすぎたのだ。少し休むといい」

 ジェネシスさんの暖かい腕に支えられ、意識が遠のいていった。


 目覚めると、見覚えのある部屋にいた。

「二度目ましてだな」

「先生! っということは、俺は医務室に運ばれたんですね?」

「全く君は、二度も衰弱して来るなんてなぁ。困ったもんだ」

 先生は俺の肩をぽんぽんと叩きながら言った。「今度は丸二日眠っていた」と少し嘆いていた。

 そして「もっと体を大事にしてあげなさい」とお叱りを受けた。

 本気で怒っているのではなく、心配して言ってくれている。

「すみません」と素直に謝っておく。

 外はまだ聖水の雨が降り続いている。二日経っても完全に穢れは浄化出来ていないのか。

 余程濃い穢れだったのだと悲観した。

 フッと窓ガラスに映った自分の姿が目に入ると、元の月皇凛空つきがみりあんの姿に戻っていた。

(もうデミゴットじゃなくなったのか?)

 焦りを覚えた。

 別にパロミデルたちも倒したし、穢れも浄化できている。それならデミゴットとしての力は必要ないと言えば必要ない。

 でもけっこう大変な思いをして覚醒した割には呆気なかったと残念に感じただけだ。

「ジャックスたちを呼んでこよう。まだ横になっていなさい」

 先生が個室から出ていった。「はい」と力なく返事をして、しばらく窓ガラスに映る自分を見ていた。

 先生は俺がデミゴットだとは気付いていないようだ。

 特に自分から言い出したりはしない。騒がれるのは得意じゃない。

 このまま、平凡な日々に戻るのが一番幸せかもしれない。

 休んでいなさいとは言われたが、窓を少し開け、手を伸ばす。

 掌に聖水を少し溜めて飲んでみた。

「おいしい」

 疲労も取ってくれるならグラスに溜めて飲みたいくらいだ。

 何度か手を伸ばしては飲んでみる。

 乾いた喉に潤いが通っていく。これは確かに効いているようだ。

 ドアをノックする音が聞こえ、返事をするとジェネシスさんとジャックスさん、そして白い鳥も入室した。

「Lien!! やっと目覚めたんだね」

 俺の顔を見るなり抱きしめられる。暖かい懐は変わりなく心地よい。

「元の凛空に戻っちゃいました」

「俺はどっちの姿も好きだよ」

 恥ずかしげもなくジェネシスさんが言った。

「デミゴットじゃなくなってもいいの?」

 自虐的に聞いたが、それはどうも違うらしかった。

『リアン様、デミゴットトシテ覚醒サレマシタ。チカラガナクナルコトハ、アリマセン』

 白い鳥が通信してきた。

「白い鳥の声が聞こえた。本当にデミゴットのままなんだ」

 じゃあ、何故元の姿に戻ったのだろう。

『一定レベルヲ超エルチカラヲ発揮シタ時、デミゴットノ姿ニナリマス。普段ハ、人間ノ姿デ、生活デキマス』

 なるほど、半分は人間ってそういうことなのか。

 確かに普段から浮いてちゃ目立ちすぎる。それに、やはり見慣れたこの姿の方が落ち着く。


「気分はどう?」

 ジェネシスさんが頬を撫でる。これだけで頬擦りしたくなるほど幸せな気分になる。

「沢山寝たし、さっき聖水を飲んでみたら、本当に疲れが取れた気がします」

「それは良かった」

 気付けば抱きしめあったまま喋っていた。ジャックスさんもいるというのに!

 慌てて体を離そうとすると、ジェネシスさんがさらに腕に力を込めた。

「もう離したくない」

「や、でも見られてます……」

「別に構わない」

 構わないって!! 俺は恥ずかしいという意味で言ったんだが。

 チラリとジャックスさんを覗き見ると、微笑ましく俺たちを眺めていた。

「俺はすぐに宿舎に戻るから、気にしないでくれ。リアンの様子を見に寄っただけなんだ」

 過度にニコニコしている。いや、ニヤニヤしている。

 恨めしそうに見返すと、ジャックスさんが言い訳をするように言った。

「おいおい、勘違いするな。人が乳繰り合ってるのを見る趣味はないよ。俺は嬉しいんだ、リアンが幸せそうなのがな!」

「ジャックスさん!!」

「はっは!じゃあな」

 ジェネシスさんはどうにも離してくれそうにないが、この温もりに包まれた俺は確かに幸せだ。

「Lien、帰ろう」

「はい」

 先生にお礼を伝え、グルニスランを出発した。
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