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一章~伊角光希編~
2 妊娠
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目の前にいる男性はエリアス・ベルクールと名乗った。
「君の婚約者だ。そして君は、私との子供を授かっている」
「え? 待ってください。僕、妊娠してるんですか?」
「あぁ、先日分かったばかりだ。それなのに階段から落ちるなんて……気が気じゃなかった」
エリアスさんは僕の手を握る。
とにかく無事で良かったと、僕の顔を覗き込む。
彼からの心配をよそに、僕は転生してもΩだったということを脳内で確認した。
でも前世の自分とは全く違うΩだ。だって、こんなにも心配してくれる人が旦那様になるんだもの。
それとも、僕も前世で妊娠していれば、こんなふうに大切にしてもらえたのだろうか。
いや、決してそんなことはないだろう。
あの毒親たちは、何かにつけて僕に期待を寄せるに違いないし、夫の無関心が変わったりするはずもない。
別にあのまま人生が終わっても良かった。それでも違う世界に転生したのは、もう一度人生をやり直すチャンスを与えてくれたのかもしれない。
都合のいい考えだと言われるだろうか。
それでも僕は今、前世では叶えられなかった妊娠をしている。
Ωなら、誰もが憧れる妊娠。
これが神のお導きじゃなければ、なんだというのか。
僕は決意した。この子を必ず産んでみせると。
そして転生前にアシルが婚約したという、この人と共に歩んでいくことを。
それが僕のためでもあり、アシルへの償いや恩返しになるような気がした。
「エリアスさん、僕は必ずこの子を産んで見せます」
「アシル、そんな意気込むことじゃない。一番に君の体を気遣ってくれ。子供も大切だが、君は私の運命の番なんだ。君を失うことが、この世で一番恐ろしいことなんだよ。さっきはもしかすると、誰かが君を突き落としたのかもしれない。今からそれを調査しにいく。いいかい? また危険な目に会うとも限らない。屋敷内を歩くときも必ず侍女を連れて行動してほしい」
「……承知しました」
突き落とした……さっき薄らと見えた女性だろうか。
でも他にも数人の人がいたような……。
転生した瞬間、すでに階段から落ちている途中だった。もし突き落とされていたとしても、それがあの数人のうちの誰かなんて、まるで見当もつかなかった。
ぼんやりと考えながら、豪華な部屋とエリアスさんを交互に眺める。きっとそれなりの爵位のある方なのだろうとは思った。
侍女までいるのか。
エリアス様って呼ぶべきなのかもしれない。
前世では考えられない待遇だな。
ぐるぐると頭の中で色んなことを考える。
エリアス様は、どうやら僕が記憶を呼び出そうとしていると思ったのだろう。じっくりと僕の顔を眺めて微笑んでいた。
その後、侍女のロラという女性を呼んでくれた。
「これからはロラを頼るといい。この屋敷で働いている侍女の中でも優秀な彼女なら、安心して任せられる」
「そうなんですね。ロラ、どうぞよろしくお願いします」
頭を下げると、ロラは片眉を吊り上げ僅かに会釈をしただけだった。
なんだこの人は……。
本当にこんな愛想のない人が優秀なのか?
自己紹介もしないし。
エリアス様はロラに一言声をかけると部屋から出ていってしまう。
残されたのは、僕とロラのみ……。
気まずい空気が二人の間に距離を生む。
前世からそんなに社交的ではなかったが、こういう人は特に苦手だ。
何か話題を振らなければいけないのだろうが、何も話題が浮かばない。
いっそ寝ると言って、部屋を出てもらってはどうかとまで考え始めた。
「念の為、お身体に異常はないかを診て頂きますので。この後先生が見えます。その前に、お召し物を着替えさせてください」
ぶっきらぼうにロラが言う。視線は一切合わさない。
「あ、はい。ありがとうございます」
ロラは手際良く服を脱がせると体を拭き、体の締め付け感のない、ふんわりとした夜着に着替えさせてくれた。
なるほど、優秀な理由が少し分かった気がする。
着替えが終わるとロラは先生を迎えに行くと言って、部屋を出た。
僕は枕に頭を埋め、赤ちゃんの存在を確認する。
まだ判明したばかりの新しい命。まだ実感は湧かないが、本当にこのお腹の中に子供がいるんだ。
男の子? それとも女の子? アシルは子供に付けたい名前があったのかな。
でもやっとこれからって時に、アシルもきっと無念だっただろうな。
でも待てよ……と考え直す。
階段から突き落とした人が本当にいるならば、もしかすると望まれてはいない妊娠なのかもしれないなんて、唐突に考えた。
「君の婚約者だ。そして君は、私との子供を授かっている」
「え? 待ってください。僕、妊娠してるんですか?」
「あぁ、先日分かったばかりだ。それなのに階段から落ちるなんて……気が気じゃなかった」
エリアスさんは僕の手を握る。
とにかく無事で良かったと、僕の顔を覗き込む。
彼からの心配をよそに、僕は転生してもΩだったということを脳内で確認した。
でも前世の自分とは全く違うΩだ。だって、こんなにも心配してくれる人が旦那様になるんだもの。
それとも、僕も前世で妊娠していれば、こんなふうに大切にしてもらえたのだろうか。
いや、決してそんなことはないだろう。
あの毒親たちは、何かにつけて僕に期待を寄せるに違いないし、夫の無関心が変わったりするはずもない。
別にあのまま人生が終わっても良かった。それでも違う世界に転生したのは、もう一度人生をやり直すチャンスを与えてくれたのかもしれない。
都合のいい考えだと言われるだろうか。
それでも僕は今、前世では叶えられなかった妊娠をしている。
Ωなら、誰もが憧れる妊娠。
これが神のお導きじゃなければ、なんだというのか。
僕は決意した。この子を必ず産んでみせると。
そして転生前にアシルが婚約したという、この人と共に歩んでいくことを。
それが僕のためでもあり、アシルへの償いや恩返しになるような気がした。
「エリアスさん、僕は必ずこの子を産んで見せます」
「アシル、そんな意気込むことじゃない。一番に君の体を気遣ってくれ。子供も大切だが、君は私の運命の番なんだ。君を失うことが、この世で一番恐ろしいことなんだよ。さっきはもしかすると、誰かが君を突き落としたのかもしれない。今からそれを調査しにいく。いいかい? また危険な目に会うとも限らない。屋敷内を歩くときも必ず侍女を連れて行動してほしい」
「……承知しました」
突き落とした……さっき薄らと見えた女性だろうか。
でも他にも数人の人がいたような……。
転生した瞬間、すでに階段から落ちている途中だった。もし突き落とされていたとしても、それがあの数人のうちの誰かなんて、まるで見当もつかなかった。
ぼんやりと考えながら、豪華な部屋とエリアスさんを交互に眺める。きっとそれなりの爵位のある方なのだろうとは思った。
侍女までいるのか。
エリアス様って呼ぶべきなのかもしれない。
前世では考えられない待遇だな。
ぐるぐると頭の中で色んなことを考える。
エリアス様は、どうやら僕が記憶を呼び出そうとしていると思ったのだろう。じっくりと僕の顔を眺めて微笑んでいた。
その後、侍女のロラという女性を呼んでくれた。
「これからはロラを頼るといい。この屋敷で働いている侍女の中でも優秀な彼女なら、安心して任せられる」
「そうなんですね。ロラ、どうぞよろしくお願いします」
頭を下げると、ロラは片眉を吊り上げ僅かに会釈をしただけだった。
なんだこの人は……。
本当にこんな愛想のない人が優秀なのか?
自己紹介もしないし。
エリアス様はロラに一言声をかけると部屋から出ていってしまう。
残されたのは、僕とロラのみ……。
気まずい空気が二人の間に距離を生む。
前世からそんなに社交的ではなかったが、こういう人は特に苦手だ。
何か話題を振らなければいけないのだろうが、何も話題が浮かばない。
いっそ寝ると言って、部屋を出てもらってはどうかとまで考え始めた。
「念の為、お身体に異常はないかを診て頂きますので。この後先生が見えます。その前に、お召し物を着替えさせてください」
ぶっきらぼうにロラが言う。視線は一切合わさない。
「あ、はい。ありがとうございます」
ロラは手際良く服を脱がせると体を拭き、体の締め付け感のない、ふんわりとした夜着に着替えさせてくれた。
なるほど、優秀な理由が少し分かった気がする。
着替えが終わるとロラは先生を迎えに行くと言って、部屋を出た。
僕は枕に頭を埋め、赤ちゃんの存在を確認する。
まだ判明したばかりの新しい命。まだ実感は湧かないが、本当にこのお腹の中に子供がいるんだ。
男の子? それとも女の子? アシルは子供に付けたい名前があったのかな。
でもやっとこれからって時に、アシルもきっと無念だっただろうな。
でも待てよ……と考え直す。
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