【完結】公爵様を寝取った悪役令息に転生しましたが、子供が産まれるので幸せになるために、この事件解決させていただきます。

亜沙美多郎

文字の大きさ
5 / 235
一章~伊角光希編~

5 蘇ったアシル

しおりを挟む
 パーティー会場で突然ヒートを起こしたアシルを、エリアス様が助けてくれた。
 そして、そのまま二人は結ばれ……。

 それから約三ヶ月が過ぎ、アシルが妊娠したと発覚するとエリアス様は何を思ったかアンナ様との婚約を破棄し、アシルとの結婚を決めたと言う。
 アンナ様はエリアス様と同じく公爵家の令嬢で、二人は許嫁だった。

 幼き頃から決められた結婚。
 それを横取りした伯爵子息のΩ。

「はぁぁ……」
 ため息しか出ない。
 僕がもしアシルではなく他の人に転生していたなら、アシルに共感はしなかった。

 絶対に出産するとは決意したものの、これからどんなに頑張って態度を改めようとも、この屋敷の人たちから認められる日は来ないだろうと、絶望に襲われた。

「どうすれば……」

 自室に篭り、鏡の中の“アシル”と向き合う。
 アシルは同じΩなのに、とても綺麗な顔をしている。
 肌は白く、淡いラベンダー色の髪はふわりと柔らかい。
 大きな瞳は潤いがあり、とても性格が悪そうには思えない。

 日本人なら一度は憧れる、天使のような容姿をしている。
 人は見た目によらないとは、このことか……。

 その時、体の奥でドクンと何かが爆ぜたような感覚に襲われた。

「んぐっ……」
 突然の猛烈な吐き気にどうにか耐える。
 頭が割れるように痛い。腹の底から湧き上がるような熱を感じた。

 なんだこれ。悪阻? いや違う。身体が、壊れてしまいそうだ。

 立っていられなくて、床に蹲る。猛烈な吐き気と悪寒が同時に襲いかかる。
 ひとしきり悶え苦しんでいると、今度は自分の中から声がした。

『あなた、誰?』

 透き通るような少し高い声色。
 それは確かにはっきりと聞こえたし、耳を介さず直接脳に話しかけられている。妙な感覚に、余計に気分が悪くなった。
 なんだ、これは。どういうことなんだ。
 聞き覚えのない声に脳を支配されている。

「誰だ? どこから話かけている? 姿を現せ!!」

 宙に向かって叫ぶが、どこを見渡しても人が隠れている気配もない。
 異世界とはいえ、魔力を持ってる人がいる世界ではなさそうだ。
 じゃあ、一体誰がどのようにして僕の脳に話しかけているのか?

「どうした!? 僕が怖くて出てこられないのか!?」

 再び叫ぶ。
 本当は自分の方がドキドキしている。

 その声は少し間を置いて、ゆっくりと喋り始めた。

『ぼくは、この中にいます。この、アシルの体の中に』
「自分の、体……」

 もしかして……と閃く。
 こんなことが現実に起きるものなのか。信じがたいが、それしか考えられなかった。

「本物の、アシル……?」

 たった一言聞くだけなのに、頭痛と動悸でなかなか喋れない。
 
 震える膝になんとか力を入れ、立ち上がる。鏡を覗き込んでもアシル以外の何も映り込んでいない。
 本当に、この体の中で喋っているのか?

 伊角洸希が転生した、体の持ち主の意識が蘇った!?
 アシルが死んだから僕の魂がこの体に入ったんじゃないのか?

 頭が混乱して正気じゃいられない。
 荒い呼吸のまま、悲鳴のように叫ぶ。
 部屋の外にまで響くほどの声を上げたが、この部屋には誰一人として入ってこなかった。

 誰もアシルのことなど、心配していないのだ。

 全てに憤りを感じる。
 僕自身が何かをしたわけじゃない。
 むしろ、もしも僕がアシルなら側室で十分満足していたはずだ。
 それを寝取ってまで婚約破棄をさせる?

 神様はなぜこんな冷徹非道な人に転生させたのか。同じΩとして情けない。
 恨む感情しか出てこない。

 冷静になろうとする自分と、この状況から逃れたい自分が錯乱を招いている。

 今この体の中で、二人の人格が存在しているのだ。
 
しおりを挟む
感想 200

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした

水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」 公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。 婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。 しかし、それは新たな人生の始まりだった。 前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。 そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。 共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。 だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。 彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。 一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。 これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。 痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...