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一章~伊角光希編~
5 蘇ったアシル
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パーティー会場で突然ヒートを起こしたアシルを、エリアス様が助けてくれた。
そして、そのまま二人は結ばれ……。
それから約三ヶ月が過ぎ、アシルが妊娠したと発覚するとエリアス様は何を思ったかアンナ様との婚約を破棄し、アシルとの結婚を決めたと言う。
アンナ様はエリアス様と同じく公爵家の令嬢で、二人は許嫁だった。
幼き頃から決められた結婚。
それを横取りした伯爵子息のΩ。
「はぁぁ……」
ため息しか出ない。
僕がもしアシルではなく他の人に転生していたなら、アシルに共感はしなかった。
絶対に出産するとは決意したものの、これからどんなに頑張って態度を改めようとも、この屋敷の人たちから認められる日は来ないだろうと、絶望に襲われた。
「どうすれば……」
自室に篭り、鏡の中の“アシル”と向き合う。
アシルは同じΩなのに、とても綺麗な顔をしている。
肌は白く、淡いラベンダー色の髪はふわりと柔らかい。
大きな瞳は潤いがあり、とても性格が悪そうには思えない。
日本人なら一度は憧れる、天使のような容姿をしている。
人は見た目によらないとは、このことか……。
その時、体の奥でドクンと何かが爆ぜたような感覚に襲われた。
「んぐっ……」
突然の猛烈な吐き気にどうにか耐える。
頭が割れるように痛い。腹の底から湧き上がるような熱を感じた。
なんだこれ。悪阻? いや違う。身体が、壊れてしまいそうだ。
立っていられなくて、床に蹲る。猛烈な吐き気と悪寒が同時に襲いかかる。
ひとしきり悶え苦しんでいると、今度は自分の中から声がした。
『あなた、誰?』
透き通るような少し高い声色。
それは確かにはっきりと聞こえたし、耳を介さず直接脳に話しかけられている。妙な感覚に、余計に気分が悪くなった。
なんだ、これは。どういうことなんだ。
聞き覚えのない声に脳を支配されている。
「誰だ? どこから話かけている? 姿を現せ!!」
宙に向かって叫ぶが、どこを見渡しても人が隠れている気配もない。
異世界とはいえ、魔力を持ってる人がいる世界ではなさそうだ。
じゃあ、一体誰がどのようにして僕の脳に話しかけているのか?
「どうした!? 僕が怖くて出てこられないのか!?」
再び叫ぶ。
本当は自分の方がドキドキしている。
その声は少し間を置いて、ゆっくりと喋り始めた。
『ぼくは、この中にいます。この、アシルの体の中に』
「自分の、体……」
もしかして……と閃く。
こんなことが現実に起きるものなのか。信じがたいが、それしか考えられなかった。
「本物の、アシル……?」
たった一言聞くだけなのに、頭痛と動悸でなかなか喋れない。
震える膝になんとか力を入れ、立ち上がる。鏡を覗き込んでもアシル以外の何も映り込んでいない。
本当に、この体の中で喋っているのか?
伊角洸希が転生した、体の持ち主の意識が蘇った!?
アシルが死んだから僕の魂がこの体に入ったんじゃないのか?
頭が混乱して正気じゃいられない。
荒い呼吸のまま、悲鳴のように叫ぶ。
部屋の外にまで響くほどの声を上げたが、この部屋には誰一人として入ってこなかった。
誰もアシルのことなど、心配していないのだ。
全てに憤りを感じる。
僕自身が何かをしたわけじゃない。
むしろ、もしも僕がアシルなら側室で十分満足していたはずだ。
それを寝取ってまで婚約破棄をさせる?
神様はなぜこんな冷徹非道な人に転生させたのか。同じΩとして情けない。
恨む感情しか出てこない。
冷静になろうとする自分と、この状況から逃れたい自分が錯乱を招いている。
今この体の中で、二人の人格が存在しているのだ。
そして、そのまま二人は結ばれ……。
それから約三ヶ月が過ぎ、アシルが妊娠したと発覚するとエリアス様は何を思ったかアンナ様との婚約を破棄し、アシルとの結婚を決めたと言う。
アンナ様はエリアス様と同じく公爵家の令嬢で、二人は許嫁だった。
幼き頃から決められた結婚。
それを横取りした伯爵子息のΩ。
「はぁぁ……」
ため息しか出ない。
僕がもしアシルではなく他の人に転生していたなら、アシルに共感はしなかった。
絶対に出産するとは決意したものの、これからどんなに頑張って態度を改めようとも、この屋敷の人たちから認められる日は来ないだろうと、絶望に襲われた。
「どうすれば……」
自室に篭り、鏡の中の“アシル”と向き合う。
アシルは同じΩなのに、とても綺麗な顔をしている。
肌は白く、淡いラベンダー色の髪はふわりと柔らかい。
大きな瞳は潤いがあり、とても性格が悪そうには思えない。
日本人なら一度は憧れる、天使のような容姿をしている。
人は見た目によらないとは、このことか……。
その時、体の奥でドクンと何かが爆ぜたような感覚に襲われた。
「んぐっ……」
突然の猛烈な吐き気にどうにか耐える。
頭が割れるように痛い。腹の底から湧き上がるような熱を感じた。
なんだこれ。悪阻? いや違う。身体が、壊れてしまいそうだ。
立っていられなくて、床に蹲る。猛烈な吐き気と悪寒が同時に襲いかかる。
ひとしきり悶え苦しんでいると、今度は自分の中から声がした。
『あなた、誰?』
透き通るような少し高い声色。
それは確かにはっきりと聞こえたし、耳を介さず直接脳に話しかけられている。妙な感覚に、余計に気分が悪くなった。
なんだ、これは。どういうことなんだ。
聞き覚えのない声に脳を支配されている。
「誰だ? どこから話かけている? 姿を現せ!!」
宙に向かって叫ぶが、どこを見渡しても人が隠れている気配もない。
異世界とはいえ、魔力を持ってる人がいる世界ではなさそうだ。
じゃあ、一体誰がどのようにして僕の脳に話しかけているのか?
「どうした!? 僕が怖くて出てこられないのか!?」
再び叫ぶ。
本当は自分の方がドキドキしている。
その声は少し間を置いて、ゆっくりと喋り始めた。
『ぼくは、この中にいます。この、アシルの体の中に』
「自分の、体……」
もしかして……と閃く。
こんなことが現実に起きるものなのか。信じがたいが、それしか考えられなかった。
「本物の、アシル……?」
たった一言聞くだけなのに、頭痛と動悸でなかなか喋れない。
震える膝になんとか力を入れ、立ち上がる。鏡を覗き込んでもアシル以外の何も映り込んでいない。
本当に、この体の中で喋っているのか?
伊角洸希が転生した、体の持ち主の意識が蘇った!?
アシルが死んだから僕の魂がこの体に入ったんじゃないのか?
頭が混乱して正気じゃいられない。
荒い呼吸のまま、悲鳴のように叫ぶ。
部屋の外にまで響くほどの声を上げたが、この部屋には誰一人として入ってこなかった。
誰もアシルのことなど、心配していないのだ。
全てに憤りを感じる。
僕自身が何かをしたわけじゃない。
むしろ、もしも僕がアシルなら側室で十分満足していたはずだ。
それを寝取ってまで婚約破棄をさせる?
神様はなぜこんな冷徹非道な人に転生させたのか。同じΩとして情けない。
恨む感情しか出てこない。
冷静になろうとする自分と、この状況から逃れたい自分が錯乱を招いている。
今この体の中で、二人の人格が存在しているのだ。
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