【完結】公爵様を寝取った悪役令息に転生しましたが、子供が産まれるので幸せになるために、この事件解決させていただきます。

亜沙美多郎

文字の大きさ
52 / 235
一章~伊角光希編~

52 感情の連鎖

しおりを挟む
「こんなにも楽しめたのは、ロラのおかげです! ありがとう、ロラ」
「私どもとしましても、何事もなく過ごせてホッとしています」

 部屋に帰ってからも、余韻を楽しんでいる。
 庭だけとはいえ、ただの庭ではない。ベルクール公爵邸の庭は、一日じゃ回りきれない。
 それほど広い庭の一角で、誰にも邪魔されずに楽しめた。
 こんな日が来るとは思いもよらず、提案してくれたロラには感謝しかない。

 エリアス様が帰ってきてからは、今日の出来事を子供が親に言うように、必死で伝えた。
 アシルも同時に喋るものだから、途中から何を言おうとしたのか分からなくなってしまい、エリアス様に笑われた。

「そんなに楽しかったのなら、良かった。同行したかったものだ」
「今日のハーブティー、僕が摘んだんですよ」
「そうか。今日のお茶は、いつもに増して美味しいと思っていた」

 エリアス様から微笑まれ、急に恥ずかしくなってしまった。
 庭に出たくらいで、まるで遠方までピクニックにでも出掛けたような興奮ぶり。
 エリアス様にとっては、勝手知ったる自分の庭だ。

「……どうした? 急に黙り込んで。続きの話はないのかな?」
「いえ。庭くらいではしゃいでしまい、大人気ないと唐突に反省しました。僕、母になるのに」
「何を言う。母が楽しそうにしていると、子も嬉しいものだ。私の母は幼い頃に亡くなった。だから侍女が母の代わりだった。侍女が楽しそうにしていると、自分もなんだか楽しいと思ってしまう。感情は連鎖するものだ。アシルが楽しく過ごしていると、それはきっとこの子にも伝わる」

 そっとお腹に手をあてる。
 エリアス様の言葉が聞こえていたように、内からその手を蹴った。

「今、私の手を蹴ったぞ!!」
 今度はエリアス様が、子供のように無邪気に笑った。

 本当だ、と思った。
 エリアス様が喜ぶと、僕もつられて笑ってしまう。

「沢山歩いた方がいいのだろう? 天気の良い日は散歩に出るといい。なんなら料理長監修の畑もあるぞ」
「そんな所まであるのですか?」
「記憶を取り戻すキッカケになるかもしれない。あちこち行ってみると良い」
「ロラも、今日そう言ってハーブ園へ連れて行ってくれました」
「そうか」

 ニッコリと微笑み合う。
 これも感情の連鎖だろうか。

「僕はまだ、エリアス様の全てを思い出してないかもしれません。でもきっと、記憶を無くす前と同じくらい……いや、それ以上に今、エリアス様が……す、す……あの……」
「アシル、構わない。無理に言わなくていい」
「違います。面と向かっていうのに慣れてないだけなんです」
「いや、十分伝わってきた。今は言わないでくれ」

 どうしたのかと、エリアス様の顔を覗き込む。僕から言えば喜んでもらえると期待したが、違ったか。

 しかしエリアス様は珍しく頬を染め「今、告白されると、自制が効かなくなりそうだ」と視線をそらした。

「え……?」
 えぇ……エリアス様が、そんな風に言うとは意外過ぎて、僕も固まってしまった。

「ロラに叱られたのだ。妊婦がこんなになるまで抱き潰すとは、どういう事かと」
「えぇ……? あ、いや、でもあれは、僕も、その……」

 ええぇぇぇ……激しく動揺した。
 抱かれている間は幸せに溢れていたが、確かに翌日は昼過ぎまで起き上がれないでいた。

 でも……あれは……。
 とても良かったです、なんて言えない。

 二人して羞恥心に苛まれ、視線も合わせられなくなり、ハーブティーを飲み終わると大人しく就寝した。
しおりを挟む
感想 200

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

処理中です...