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三章〜クレール・ベルクール編〜
55 報告会⑤
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「それは……話が急展開過ぎないか」
少しの沈黙の後、口を開いたのはマルティネス王子だった。
息子から運命の人がクレールだとは前々から聞いていた。しかし、やっと果たした再会の後、いきなり番になっているだなんて、流石に考えが及ばなかったようだ。
確かにその意見は正論だろう。ヴィクトール様はまだ成人を迎えたばかりだし、きっとエリアスお父様もマルティネス王子も、正式に恋人になったくらいの報告だと思っていたはずだ。
「エリアスお父様、マルティネス王子、僕たちが番になったのは、決して勢いでそうなったのではありません。この二年間、僕たちの交流は手紙しかありませんでしたが、会えない時間はむしろ僕たちの距離を縮めていたのです。だから、番になりたいと言われた時、僕に迷いはありませんでした。それには彼のアルファの力を使う必要がありましたが、そうしてでも、番うタイミングはこの時しか考えられません」
アシルお母様はさっきまであんなにはしゃいでいたのに、今は人目も憚らずに泣いている。
クレールに転生してから、ずっと僕の夢が叶うのを願ってくれていた。
その一つが現実となり、喜んでくれているのもあるだろうけど、安心もしているのだと思う。
「お父様、私は祝福致しますよ。クレールお兄様の幸せが、何よりの私の喜びですから」
「ノアも! おめでとう。お兄ちゃま、ヴィクトール様」
エリアスお父様よりも先に、ノランとノアが祝いの言葉を掛けてくれた。
まさか、ノランから言って貰えるなんて……。
実は密かに、ノランだけは反対するかと思っていた。自分が情けない。いつまでも子供のノランではないのに。
「クレールお兄様、私はいつでもお兄様の味方です。万が一、ヴィクトール様がお兄様を傷付けるようなことをすれば、私は絶対に許しませんよ」
「ノラン……」
「ノラン君、私と結ばれたことを後悔させたりしない。必ず幸せにする。君に約束しよう。それが一番良いだろう?」
誰よりも兄想いなノランに、僕との愛を違う。確かに、僕に誓うよりも責任重大だ。
「ノランの言う通りだな。これはクレールとヴィクトール様が二人で決めた道。親として、応援しなければいけない」
エリアスお父様が真剣な顔を崩す。ヴィクトール様に近づくと、しっかりと抱き合った。
「クレールは、辛い事ほど言葉にしない。頑張り屋で責任感が強すぎるのが長所でもあり、時に短所にもなる。少し自分に自信がない部分もある。しかし、誰よりも人を愛する強さを持っている。きっと君の力になってくれるだろう。その分、クレールがどうしても抱え込んでしまう不安や悲しみは、君が取り除いてやって欲しいのだ。約束してくれるかい?」
「はい。私は、クレールの些細な変化に気づけるよう、しっかりと寄り添いたいと思っています。この二年間、クレールの手紙に支えられてきました。これからは、私が支えられるよう尽力致します」
みんなの話を聞き、マルティネス王子も納得したようだ。ヴィクトール様と僕に、拍手を送ってくれた。それにつられてクララ様もアシルお母様も、ノアやノランも拍手で祝ってくれた。
「ありがとう、みんな。本当にありがとう」
「クレールお兄様、それは結婚式の時で良いのではないですか?」
「わぁ! 二人の結婚式? 早くやろう」
「ノア、そんなに直ぐは出来ませんよ」
結婚するまでの間、ヴィクトール様がベルクール邸に住む話も進み、いよいよ僕達は新しい一歩を進み始めた実感が湧いた。
少しの沈黙の後、口を開いたのはマルティネス王子だった。
息子から運命の人がクレールだとは前々から聞いていた。しかし、やっと果たした再会の後、いきなり番になっているだなんて、流石に考えが及ばなかったようだ。
確かにその意見は正論だろう。ヴィクトール様はまだ成人を迎えたばかりだし、きっとエリアスお父様もマルティネス王子も、正式に恋人になったくらいの報告だと思っていたはずだ。
「エリアスお父様、マルティネス王子、僕たちが番になったのは、決して勢いでそうなったのではありません。この二年間、僕たちの交流は手紙しかありませんでしたが、会えない時間はむしろ僕たちの距離を縮めていたのです。だから、番になりたいと言われた時、僕に迷いはありませんでした。それには彼のアルファの力を使う必要がありましたが、そうしてでも、番うタイミングはこの時しか考えられません」
アシルお母様はさっきまであんなにはしゃいでいたのに、今は人目も憚らずに泣いている。
クレールに転生してから、ずっと僕の夢が叶うのを願ってくれていた。
その一つが現実となり、喜んでくれているのもあるだろうけど、安心もしているのだと思う。
「お父様、私は祝福致しますよ。クレールお兄様の幸せが、何よりの私の喜びですから」
「ノアも! おめでとう。お兄ちゃま、ヴィクトール様」
エリアスお父様よりも先に、ノランとノアが祝いの言葉を掛けてくれた。
まさか、ノランから言って貰えるなんて……。
実は密かに、ノランだけは反対するかと思っていた。自分が情けない。いつまでも子供のノランではないのに。
「クレールお兄様、私はいつでもお兄様の味方です。万が一、ヴィクトール様がお兄様を傷付けるようなことをすれば、私は絶対に許しませんよ」
「ノラン……」
「ノラン君、私と結ばれたことを後悔させたりしない。必ず幸せにする。君に約束しよう。それが一番良いだろう?」
誰よりも兄想いなノランに、僕との愛を違う。確かに、僕に誓うよりも責任重大だ。
「ノランの言う通りだな。これはクレールとヴィクトール様が二人で決めた道。親として、応援しなければいけない」
エリアスお父様が真剣な顔を崩す。ヴィクトール様に近づくと、しっかりと抱き合った。
「クレールは、辛い事ほど言葉にしない。頑張り屋で責任感が強すぎるのが長所でもあり、時に短所にもなる。少し自分に自信がない部分もある。しかし、誰よりも人を愛する強さを持っている。きっと君の力になってくれるだろう。その分、クレールがどうしても抱え込んでしまう不安や悲しみは、君が取り除いてやって欲しいのだ。約束してくれるかい?」
「はい。私は、クレールの些細な変化に気づけるよう、しっかりと寄り添いたいと思っています。この二年間、クレールの手紙に支えられてきました。これからは、私が支えられるよう尽力致します」
みんなの話を聞き、マルティネス王子も納得したようだ。ヴィクトール様と僕に、拍手を送ってくれた。それにつられてクララ様もアシルお母様も、ノアやノランも拍手で祝ってくれた。
「ありがとう、みんな。本当にありがとう」
「クレールお兄様、それは結婚式の時で良いのではないですか?」
「わぁ! 二人の結婚式? 早くやろう」
「ノア、そんなに直ぐは出来ませんよ」
結婚するまでの間、ヴィクトール様がベルクール邸に住む話も進み、いよいよ僕達は新しい一歩を進み始めた実感が湧いた。
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