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三章〜クレール・ベルクール編〜
62 アシルとの時間
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アシルお母様に陣痛だと言われたあとも、痛みは僕を燻るだけで、産まれる気配は感じられない。
横になっていれば今日一日くらい過ごせそうだ。
「クレール、眠れそうなら寝て、食べられそうなら食べてね」
「まだまだ産まれるという実感が湧きません」
「そんなの、まだ始まったばかりじゃないか」と、アシルお母様が返す。
アシルお母様が言うと、説得力が違う。なんせ僕の出産時にはまる二日かかったらしかった。そんなにかかって僕を産んでくれたのかと思うと、感謝しかない。それでも自分がそんな長時間耐えられるかは自信がない。いや、勿論産まれてきてくれるまで頑張るしかないのだけれど……。
「───アシル?」
「コーキ?」
「うん。多分、二人きりなのは今だけだろうから」
「不安?」
ふるふると顔を横に振る。
「そりゃ、ちょっとは怖いけど……いよいよだなって」
「僕も、怖かったよ。クレールの時も、ノアとノランの時も。でもね、赤ちゃんの顔見た瞬間、頑張って良かったって思ったんだ。その時、苦しかったも、痛かったのも、忘れちゃったんだよね」
照れくさそうにアシルが笑う。こんな可愛らしい人が、出産という経験を二回も経験しているなんて……しかも、二回目は双子だ。
どうしても今、コーキとしてアシルと話したかった。転生した時は僕が守らなきゃって思ってたのに、今は僕が守ってもらっている。そしてきっと、この先も……。
「───僕、幸せになっても良いんだよね?」
「その為に産まれてきたんだよ。コーキは、誰よりも幸せになってくれないと!」
「アシル、手、握って」
布団から手を出し、アシルへと伸ばす。僕の手を、アシルは両手で握ってくれた。
「母子共に、元気でありますように。少しでも苦しまずに産めますように」
「凄く、心強いよ」
「コーキには、みんなついてるから。ひとりじゃないよ」
丁度その時、馬車が到着した。誰かと思いきやノアとノランだった。どうやら、僕の陣痛が始まったから侍女が迎えに行ってくれたのかもしれない。
「コーキ、リラックスして」
「少しでも話せて良かった。ありがとう、アシル。また、時間ができたら……」
また、クレールに戻った。流石にお腹の痛みが、ハッキリと陣痛と分かる程の痛みになっていた。
横になっていれば今日一日くらい過ごせそうだ。
「クレール、眠れそうなら寝て、食べられそうなら食べてね」
「まだまだ産まれるという実感が湧きません」
「そんなの、まだ始まったばかりじゃないか」と、アシルお母様が返す。
アシルお母様が言うと、説得力が違う。なんせ僕の出産時にはまる二日かかったらしかった。そんなにかかって僕を産んでくれたのかと思うと、感謝しかない。それでも自分がそんな長時間耐えられるかは自信がない。いや、勿論産まれてきてくれるまで頑張るしかないのだけれど……。
「───アシル?」
「コーキ?」
「うん。多分、二人きりなのは今だけだろうから」
「不安?」
ふるふると顔を横に振る。
「そりゃ、ちょっとは怖いけど……いよいよだなって」
「僕も、怖かったよ。クレールの時も、ノアとノランの時も。でもね、赤ちゃんの顔見た瞬間、頑張って良かったって思ったんだ。その時、苦しかったも、痛かったのも、忘れちゃったんだよね」
照れくさそうにアシルが笑う。こんな可愛らしい人が、出産という経験を二回も経験しているなんて……しかも、二回目は双子だ。
どうしても今、コーキとしてアシルと話したかった。転生した時は僕が守らなきゃって思ってたのに、今は僕が守ってもらっている。そしてきっと、この先も……。
「───僕、幸せになっても良いんだよね?」
「その為に産まれてきたんだよ。コーキは、誰よりも幸せになってくれないと!」
「アシル、手、握って」
布団から手を出し、アシルへと伸ばす。僕の手を、アシルは両手で握ってくれた。
「母子共に、元気でありますように。少しでも苦しまずに産めますように」
「凄く、心強いよ」
「コーキには、みんなついてるから。ひとりじゃないよ」
丁度その時、馬車が到着した。誰かと思いきやノアとノランだった。どうやら、僕の陣痛が始まったから侍女が迎えに行ってくれたのかもしれない。
「コーキ、リラックスして」
「少しでも話せて良かった。ありがとう、アシル。また、時間ができたら……」
また、クレールに戻った。流石にお腹の痛みが、ハッキリと陣痛と分かる程の痛みになっていた。
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