【完結】公爵様を寝取った悪役令息に転生しましたが、子供が産まれるので幸せになるために、この事件解決させていただきます。

亜沙美多郎

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番外編〜エリアスとアシルの出会い編〜

我儘アンナ

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 アシルが二十歳を迎えるまで待とうと思った理由は、今はまだ不安定なオメガ性であるが、二年も経てば少しは安定しているのではないかと思ったのが一番大きい。抑制剤も年々質の良いものが開発されている。エリアスはアルファ性が強いと自覚しているため、むやみに近寄って怖がられるのも避けたかった。
 そしてその頃には、自分自身もアシルに相応しい人間になっていたいとも考えていた。

 クローシャー伯爵には、側室に迎え入れたいという旨を直ぐに伝えた。本当は正妻として迎え入れたいが現状それが不可能であること、しかし自分はアシルの運命の番で、誰よりもアシルを慕っていると懸命に訴えた。
 クローシャー伯爵はアシルの意志を尊重すると口で言うものの、その言葉の裏では殆ど承諾しているようなものだった。
「アシルの二十歳の誕生日に直接迎えに上がります」
 半ば押し切るように縁談を申し込んだ。

 それからの二年間、アシルに幾度となく手紙を送ったが返事が返ってきたことはない。伯爵の話だと、エリアスの匂いがついた羊皮紙を嗅いだだけでヒートを起こすようであった。その話を聞いてエリアスは心配しつつも内心では歓喜していた。手紙を抱きしめて眠っているというアシルを想像しただけで、今直ぐにでも抱きしめたくなる。なので返事など届かなくて良かった。自分の匂いを覚えてもらうためなら、一方通行でも苦にはならない。

 アンナはエリアスが側室を持つことを猛反対したが、逆らうことはエリアスが許さなかった。公爵家同士の契約された結婚。アンナを蔑ろにするわけにもいかないが、奔放に遊んでいるのをいつだって引き合いに出すことだって容易い。
 しかしアンナは「アシルを側室に迎え入れるなら、私にもそれ相当の待遇を」と言い出したのだ。

「エリアス様はオメガをこの屋敷に住まわせる気でしょうか? 側室ならば、別邸でもよろしいのでは?」
「それを決めるのは私だ。アシルの件に一切の口出しを禁止する」
「エリアス様!! ならば、私もこのお屋敷に引っ越して来ても宜しいでしょう? 離れにそのオメガを住まわせるのなら、私には本邸の一室を与えてくださらないと納得がいきませんわ」
「好きにしろ」
 エリアスの言葉に、アンナは満足そうな笑みを見せた。
「ありがとうございます、エリアス様。お忙しいところ引き止めて申し訳ございませんでした」
 対して心のこもっていない言葉を吐くと、アンナはベルクール家を後にした。
 今日は誰の相手をするのだろうか……。
「———穢らわしい女め」
 その背中を睨みつけながら、エリアスは婚約破棄するまで絶対に諦めないと再度決意した。
 
 わがまま放題育ったアンナは、エリアスの言うことだけは受け入れているとロベール公爵は言う。
 これでか……エリアスはアンナと話すたびに憤懣ふんまんとしてしまう。もし結婚すれば、我儘はより酷くなるだろう。考えただけで虫唾が走る。エリアスは大きくため息を溢し、仕事へと戻った。

 部屋くらい、いくらでも余っている。来たければ来ればいい。
 この頃のエリアスは任される仕事も増えてきて、アンナの相手をする時間は殆どなかった。いや、仕事を言い訳にして逃げているのだ。
 もしも相手がアシルなら……どんな僅かな時間であっても会いに通っただろう。
「アシル、会いたい……」
 エリアスの心の中はアシルで埋め尽くされている。あの天使のような姿を一目でも見られれば、どんなに満たされるだろうか。
 
 そして二年後。
 待ちに待ったその日を迎えたエリアスは、朝から落ち着かない時間を過ごしていた。
 クローシャー伯爵には、アシルは今発情期ではないと確認済みだ。早く、早く、その姿を見せてくれ。
 居ても立ってもいられず、予定よりも大幅に早い時間から馬車に乗り込みベルクール邸を出発した。
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