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第二章
お仕置き
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奴隷の子が怯えながら身構える。
そこに容赦なくドミナクス辺境伯は体を蹴り飛ばした。
「なっ……ん……」
瞠目とする私にも、同様にお腹に蹴りが入る。
痛いという感覚が脳に伝わった時には、すでに体は床に倒れ込んでいた。空腹で吐き出す固形物は何もないが、胃液の匂いがツンと鼻に通った。
ドミナクス辺境伯は、奴隷の子だけではなく私にも激憤していたのだ。
「勝手に奴隷に食事を与えるとはどういうことだ? お前は食事が要らないのか? ならば、これからはお前の分を全てこの奴隷にくれてやろうか?」
「す……みませ……」
時間差で涙で視界がぼやける。
その中に奴隷の子も蹲ったまま動いていないのが見える。
どうしてこんなことが平気で出来るか……。人をなんだと思っているのか。そこまで考えて、そうだと、思い出した。
この人たちにとって、オメガは人ではないのだと……。
「儂はな、こいつに昨晩お前が来るから部屋に案内しておけよと頼んでおいた。それなのに、うっかり眠りやがって。おかげでこっちが起こされる羽目になったわ!! お仕置きをされて当然だろうが。しかし、反省をしているのかと思いきや、オメガ同士で仲良しこよしか。お前は伯爵から儂との子を産ませてくださいと聞いていたが違うのか? 結婚したいのだろう? ならば何をするべきか考えて行動しろ」
ドミナクス辺境伯は、奴隷の子を怒鳴りつけ部屋から追い出した。
私の部屋にいない時は別の仕事をやらされているようだ。
「いいか、これだけは勘違いするな。婚約者でもない奴が、これ以上優遇してもらえると思うな。部屋と食事を与えてやっただろう。それ以上を望むなら、しっかりと奉仕しろ。その分を上乗せで褒美をくれてやる。
あぁ、そうだ。あの奴隷も最初は儂と結婚させたいと言って連れてこられた奴だったなぁ。その割にはヒートもほ殆どなく、仕方なく発情誘発剤を飲ませてやったんだが、毎回それではこっちとしても金がかかって仕方ないだろう? 薬だってタダじゃないんだ。
最終的にはオメガとして使い物にならなくなった。それなのにまだ、ここで働かせてやっている。儂の善意でな」
「そんな……」
「自分だけは例外と思うなよ。お前だって、ちゃんとオメガらしく出来ないなら行末はアレだからな」
ほくそ笑みながら吐き捨てるように言う。
何故、あの子が抑制剤を飲んでいないのか……もうヒートを起こすことがないからだ。
私と同じくらいの年齢だろうに、一体いつから……。
こんな人が辺境伯爵だなんて……とても信じたくはなかった。
権力を駆使してオメガを制圧し、体が壊れるまで凌辱する。
他にも奴隷にされたオメガが沢山居たのだろう。もしかすると、私が見ていないだけで、あの子以外にも奴隷がいても変ではない。使用人はいないのか……騎士だって……。
なんだってこんな非道な人の言いなりにならなければいけないんだ。
悔しくて唇を噛む。
知らずのうちにドミナクス辺境伯を睨んでいたようだ。
「反抗など可愛らしい。お前如きが睨んだところで何も怖くないわ。そんなことよりも、さっさと準備しろ」
「何の……でしょうか……」
「何のって……自分がなんのためにここに来たのか知らなかったは通らんぞ。さっきも説明してやっただろう。儂との子が必要なんだろうって。じゃあ、さっさとベッドに上がって服を脱げ!!」
怒りは徐々に苛烈し、腕を振り上げる。
びくりと体が強張って、振り下ろされる腕に身構えた。
頭に衝撃が走ると同時に目の前に星が散る。
暴力は、この人にとっては息をするのと同じくらい身に馴染んでいるようだった。
父よりも年配とはいえ、力にはとても及ばない。そもそも体格が違う。
私の首根っこを掴むとベッドに放り投げられ、体を押さえ込むように組み敷いた。
「ほら、儂のアルファ性を解放してやるから、さっさとヒートを起こせ。オメガのお手並み拝見といこうじゃないか」
「う……」
まだ正午にもならない明るい部屋で、ドミナクス辺境伯はアルファのフェロモンでオメガのヒートを呼び起こしたのだった。
そこに容赦なくドミナクス辺境伯は体を蹴り飛ばした。
「なっ……ん……」
瞠目とする私にも、同様にお腹に蹴りが入る。
痛いという感覚が脳に伝わった時には、すでに体は床に倒れ込んでいた。空腹で吐き出す固形物は何もないが、胃液の匂いがツンと鼻に通った。
ドミナクス辺境伯は、奴隷の子だけではなく私にも激憤していたのだ。
「勝手に奴隷に食事を与えるとはどういうことだ? お前は食事が要らないのか? ならば、これからはお前の分を全てこの奴隷にくれてやろうか?」
「す……みませ……」
時間差で涙で視界がぼやける。
その中に奴隷の子も蹲ったまま動いていないのが見える。
どうしてこんなことが平気で出来るか……。人をなんだと思っているのか。そこまで考えて、そうだと、思い出した。
この人たちにとって、オメガは人ではないのだと……。
「儂はな、こいつに昨晩お前が来るから部屋に案内しておけよと頼んでおいた。それなのに、うっかり眠りやがって。おかげでこっちが起こされる羽目になったわ!! お仕置きをされて当然だろうが。しかし、反省をしているのかと思いきや、オメガ同士で仲良しこよしか。お前は伯爵から儂との子を産ませてくださいと聞いていたが違うのか? 結婚したいのだろう? ならば何をするべきか考えて行動しろ」
ドミナクス辺境伯は、奴隷の子を怒鳴りつけ部屋から追い出した。
私の部屋にいない時は別の仕事をやらされているようだ。
「いいか、これだけは勘違いするな。婚約者でもない奴が、これ以上優遇してもらえると思うな。部屋と食事を与えてやっただろう。それ以上を望むなら、しっかりと奉仕しろ。その分を上乗せで褒美をくれてやる。
あぁ、そうだ。あの奴隷も最初は儂と結婚させたいと言って連れてこられた奴だったなぁ。その割にはヒートもほ殆どなく、仕方なく発情誘発剤を飲ませてやったんだが、毎回それではこっちとしても金がかかって仕方ないだろう? 薬だってタダじゃないんだ。
最終的にはオメガとして使い物にならなくなった。それなのにまだ、ここで働かせてやっている。儂の善意でな」
「そんな……」
「自分だけは例外と思うなよ。お前だって、ちゃんとオメガらしく出来ないなら行末はアレだからな」
ほくそ笑みながら吐き捨てるように言う。
何故、あの子が抑制剤を飲んでいないのか……もうヒートを起こすことがないからだ。
私と同じくらいの年齢だろうに、一体いつから……。
こんな人が辺境伯爵だなんて……とても信じたくはなかった。
権力を駆使してオメガを制圧し、体が壊れるまで凌辱する。
他にも奴隷にされたオメガが沢山居たのだろう。もしかすると、私が見ていないだけで、あの子以外にも奴隷がいても変ではない。使用人はいないのか……騎士だって……。
なんだってこんな非道な人の言いなりにならなければいけないんだ。
悔しくて唇を噛む。
知らずのうちにドミナクス辺境伯を睨んでいたようだ。
「反抗など可愛らしい。お前如きが睨んだところで何も怖くないわ。そんなことよりも、さっさと準備しろ」
「何の……でしょうか……」
「何のって……自分がなんのためにここに来たのか知らなかったは通らんぞ。さっきも説明してやっただろう。儂との子が必要なんだろうって。じゃあ、さっさとベッドに上がって服を脱げ!!」
怒りは徐々に苛烈し、腕を振り上げる。
びくりと体が強張って、振り下ろされる腕に身構えた。
頭に衝撃が走ると同時に目の前に星が散る。
暴力は、この人にとっては息をするのと同じくらい身に馴染んでいるようだった。
父よりも年配とはいえ、力にはとても及ばない。そもそも体格が違う。
私の首根っこを掴むとベッドに放り投げられ、体を押さえ込むように組み敷いた。
「ほら、儂のアルファ性を解放してやるから、さっさとヒートを起こせ。オメガのお手並み拝見といこうじゃないか」
「う……」
まだ正午にもならない明るい部屋で、ドミナクス辺境伯はアルファのフェロモンでオメガのヒートを呼び起こしたのだった。
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