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〜2学期編〜
それは突然に
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毎朝、目が覚めると来夢君は既にジョギングに行って居ません。
隣で寝ているのに、いつだって僕が起きないようにソッと起き出していくのです。僕が起きる頃には来夢君の温もりも消えていて、隣には気配だけが残っています。
暑かった頃は、僕も目覚めて直ぐにシャワーで汗を流していましたが、10月も下旬、最近は来夢君が帰ってくるまで布団から出ることもなく、温もりを探すように枕を抱き寄せ微睡んでいます。
そして、だいたい僕がウトウトと再び眠りにつきかけた時に、ドアの鍵が開く音が聞こえます。
「ふう……」
ジョギングから帰ってきた来夢君が一息つくと、そのままシャワーをしにお風呂へ入りました。
僅かに聞こえるシャワーの音に耳を澄ませながら、もう少し寝るか起きるか葛藤するのです。
結局今日はそのまま寝てしまいました。
来夢君の気配に気が緩んだみたいです。
いつの間にかシャワーから出てきた来夢君がベッドの脇に座り、頭を撫でてくれていました。
「ん……おはよう……ございます……」
「おはよう、椿。良く眠れたか?」
「はい……。来夢君の手、大きくて気持ちいいです」
髪を撫でる手を持ち、頬に当てました。
このまま、もう少し眠っていたいような……。
「時間までゆっくりしてろよ。起こしてやっから」
「……いつも……居ない……です……」
「ん?何だ?」
「いつも、僕が目覚めると、来夢君が居ないんです」
「……!!そうだな。そう言われてみると、俺は毎朝目が覚めると隣に椿が居てくれてる。明日は久しぶりに休もうかな?」
そう言うと、布団に入って腕枕をしてくれたので、また頭がフワフワっとして……なんだかとても優しい夢を見たように思いました。
・
・
・
今日は珍しく、朝食を生徒会寮で食べました。
「たまには生徒会メンバーで……」と、誤魔化しましたが……朝から都華咲と天翔君のイチャイチャを見るのは精神的にキツいですよ。
こんな時は、生徒会で良かったって思っちゃいます。
でも、朝と晩ご飯は逃げられるものの……お昼ご飯はどうしても一緒ですし、教室でも僕が入る隙もないくらい引っ付いているので……
「ハァ……」
あの二人を思い出しただけで、自然とため息が漏れてしまいます。
(学校、行きたくないな……体調悪くならないですかねぇ?……)
ここ最近、朝が憂鬱で憂鬱で……。
「椿、休み時間の度にB組来てもいいぞ?」
と、来夢君は言ってくれますが……。
「遼ちゃんや紫音君も居るので、大丈夫ですよ」
心配ばかりかけるのも、心苦しいですしね。
今日も体調万全で、校舎へと向かいました。
この時、都華咲からメッセージが届いていたのに気付かなくて……。先に来夢君と2人で寮を出てしまっていたのです。
後から教室に入ってきた都華咲は勿論、凄く機嫌が悪くて……挨拶するのも躊躇いました。
「都華咲、すみません。メッセージ、気付かなくて……」
「ハァ……朝食にも来ねえし!移動くらい一緒にしたいって思ってくれねえんだ?」
だって……僕が2人のイチャイチャをどれだけ我慢しているか……都華咲は知らないでしょう?
「思って……ます……けど……」
「思ってて普通、先行くかよ?……もう良から!」
「……すみません……」
ここで泣くのは良くないって分かるので、涙が落ちない内に教室から離れました。
僕が……悪いですか?
今日だって、天翔君と引っ付いて来たじゃないですか。
それを気にせず、都華咲の隣で笑えって言うんですか?
いくら天翔君は友達だと言われても……僕はそんなに寛大にはなれません。
それでも友達と仲良くしないで。なんて口が裂けても言えないですし。
トイレの個室で必死に泣くのを堪え、乱れた呼吸を整えました。
来夢君に甘えてB組に行きたかったですが、来夢君や磨理王の顔を見ると、絶対泣くのを我慢出来ないって分かるので……。
(どうしても無理になったら、早退させてもらおう)
そう自分に言い聞かせ個室から出ると……目の前に天翔君が!!
1人……ですか?都華咲は?
状況を理解出来ずに居る僕に、天翔君がゆっくりと口を開きました。
「……椿……。オレ……オレね……、都華咲が……好き……だよ」
「っっ!!!」
天翔君はそれだけ言うと、走り去ってしまいました。
それはあまりにも突然の出来事で、僕はその場から動けず……頬を伝う涙を拭う事も出来ませんでした。
徐々に込み上げる思いと共に、強烈な吐き気に襲われ再び個室に飛び込み蹲ると、そこから動けなくなりました。
ただ、どんなに吐いても吐いても胸の苦しみは僕の中から出て行ってはくれず……
だんだん意識が朦朧としたのは覚えていますが……
次に目を覚ましたのは医務室のベッドの上でした。
先生に話を伺ったところ、朝礼の時間になっても教室に来ない僕を心配して遼ちゃんが探してくれ、トイレで倒れてるのを発見してくれたんだとか。
そして慌てて永新先生を呼び、先生が医務室まで運んでくれたのだそうです。
(後で遼ちゃんにお礼を言わないと……)
そっか……都華咲は……探してくれなかったんですね。そりゃそうです。僕に怒ってますもんね。
考えるとまた吐きそうになるので、なるべく都華咲の事は脳内から排除しました。
「体調が優れないので……」
と面会謝絶にしてもらい、午前中いっぱいは寝て起きては泣き、泣き疲れては眠り……を繰り返しました。
お昼休み、誰にも会わないように教室から荷物を取ると、1人寮に帰りました。
目に見えて分かる僕と都華咲の結末をどう受け入れれば良いのか分からず、考えれば考えるほど、また吐き気に襲われます。
カバンの中でスマホが着信を知らせてきますが、それに対応する気力も残ってはいません。
制服のまま布団に入ると、泣き疲れてまた眠っていました。
.₊̣̇.ෆ˟̑*̑˚̑*̑˟̑ෆ.₊̣̇.ෆ˟̑*̑˚̑*̑˟̑ෆ.₊̣̇.ෆ˟̑*̑˚̑*̑˟̑ෆ.₊̣̇.ෆ˟̑*̑˚̑*̑˟̑ෆ.₊̣̇
大切なお時間を頂き、ありがとうございます。
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次回もどうぞ宜しくお願いします。
隣で寝ているのに、いつだって僕が起きないようにソッと起き出していくのです。僕が起きる頃には来夢君の温もりも消えていて、隣には気配だけが残っています。
暑かった頃は、僕も目覚めて直ぐにシャワーで汗を流していましたが、10月も下旬、最近は来夢君が帰ってくるまで布団から出ることもなく、温もりを探すように枕を抱き寄せ微睡んでいます。
そして、だいたい僕がウトウトと再び眠りにつきかけた時に、ドアの鍵が開く音が聞こえます。
「ふう……」
ジョギングから帰ってきた来夢君が一息つくと、そのままシャワーをしにお風呂へ入りました。
僅かに聞こえるシャワーの音に耳を澄ませながら、もう少し寝るか起きるか葛藤するのです。
結局今日はそのまま寝てしまいました。
来夢君の気配に気が緩んだみたいです。
いつの間にかシャワーから出てきた来夢君がベッドの脇に座り、頭を撫でてくれていました。
「ん……おはよう……ございます……」
「おはよう、椿。良く眠れたか?」
「はい……。来夢君の手、大きくて気持ちいいです」
髪を撫でる手を持ち、頬に当てました。
このまま、もう少し眠っていたいような……。
「時間までゆっくりしてろよ。起こしてやっから」
「……いつも……居ない……です……」
「ん?何だ?」
「いつも、僕が目覚めると、来夢君が居ないんです」
「……!!そうだな。そう言われてみると、俺は毎朝目が覚めると隣に椿が居てくれてる。明日は久しぶりに休もうかな?」
そう言うと、布団に入って腕枕をしてくれたので、また頭がフワフワっとして……なんだかとても優しい夢を見たように思いました。
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今日は珍しく、朝食を生徒会寮で食べました。
「たまには生徒会メンバーで……」と、誤魔化しましたが……朝から都華咲と天翔君のイチャイチャを見るのは精神的にキツいですよ。
こんな時は、生徒会で良かったって思っちゃいます。
でも、朝と晩ご飯は逃げられるものの……お昼ご飯はどうしても一緒ですし、教室でも僕が入る隙もないくらい引っ付いているので……
「ハァ……」
あの二人を思い出しただけで、自然とため息が漏れてしまいます。
(学校、行きたくないな……体調悪くならないですかねぇ?……)
ここ最近、朝が憂鬱で憂鬱で……。
「椿、休み時間の度にB組来てもいいぞ?」
と、来夢君は言ってくれますが……。
「遼ちゃんや紫音君も居るので、大丈夫ですよ」
心配ばかりかけるのも、心苦しいですしね。
今日も体調万全で、校舎へと向かいました。
この時、都華咲からメッセージが届いていたのに気付かなくて……。先に来夢君と2人で寮を出てしまっていたのです。
後から教室に入ってきた都華咲は勿論、凄く機嫌が悪くて……挨拶するのも躊躇いました。
「都華咲、すみません。メッセージ、気付かなくて……」
「ハァ……朝食にも来ねえし!移動くらい一緒にしたいって思ってくれねえんだ?」
だって……僕が2人のイチャイチャをどれだけ我慢しているか……都華咲は知らないでしょう?
「思って……ます……けど……」
「思ってて普通、先行くかよ?……もう良から!」
「……すみません……」
ここで泣くのは良くないって分かるので、涙が落ちない内に教室から離れました。
僕が……悪いですか?
今日だって、天翔君と引っ付いて来たじゃないですか。
それを気にせず、都華咲の隣で笑えって言うんですか?
いくら天翔君は友達だと言われても……僕はそんなに寛大にはなれません。
それでも友達と仲良くしないで。なんて口が裂けても言えないですし。
トイレの個室で必死に泣くのを堪え、乱れた呼吸を整えました。
来夢君に甘えてB組に行きたかったですが、来夢君や磨理王の顔を見ると、絶対泣くのを我慢出来ないって分かるので……。
(どうしても無理になったら、早退させてもらおう)
そう自分に言い聞かせ個室から出ると……目の前に天翔君が!!
1人……ですか?都華咲は?
状況を理解出来ずに居る僕に、天翔君がゆっくりと口を開きました。
「……椿……。オレ……オレね……、都華咲が……好き……だよ」
「っっ!!!」
天翔君はそれだけ言うと、走り去ってしまいました。
それはあまりにも突然の出来事で、僕はその場から動けず……頬を伝う涙を拭う事も出来ませんでした。
徐々に込み上げる思いと共に、強烈な吐き気に襲われ再び個室に飛び込み蹲ると、そこから動けなくなりました。
ただ、どんなに吐いても吐いても胸の苦しみは僕の中から出て行ってはくれず……
だんだん意識が朦朧としたのは覚えていますが……
次に目を覚ましたのは医務室のベッドの上でした。
先生に話を伺ったところ、朝礼の時間になっても教室に来ない僕を心配して遼ちゃんが探してくれ、トイレで倒れてるのを発見してくれたんだとか。
そして慌てて永新先生を呼び、先生が医務室まで運んでくれたのだそうです。
(後で遼ちゃんにお礼を言わないと……)
そっか……都華咲は……探してくれなかったんですね。そりゃそうです。僕に怒ってますもんね。
考えるとまた吐きそうになるので、なるべく都華咲の事は脳内から排除しました。
「体調が優れないので……」
と面会謝絶にしてもらい、午前中いっぱいは寝て起きては泣き、泣き疲れては眠り……を繰り返しました。
お昼休み、誰にも会わないように教室から荷物を取ると、1人寮に帰りました。
目に見えて分かる僕と都華咲の結末をどう受け入れれば良いのか分からず、考えれば考えるほど、また吐き気に襲われます。
カバンの中でスマホが着信を知らせてきますが、それに対応する気力も残ってはいません。
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