【完結】私立秀麗学園高校ホスト科⭐︎

亜沙美多郎

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〜1学期編〜

ご褒美デート

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『寮に帰って着替えてる』

都華咲君からメッセージが届いてました。母さん達を探すのに必死で気付きませんでした。

急いで寮に戻り1125号室の前。数日しか離れてないのに何故か緊張します。

コンコン…。


「……都華咲君?」


………ガチャ…。

「……遅い」

「ご!ゴメンなさい!!莉良が迷子になってしまいまして!」

「なんてな!ウ・ソー!!
お疲れ、椿。とりあえず中入れよ」

「はい。」

良かったです…一瞬怒ってるのかと思ってヒヤヒヤしました。

2人掛けのソファーに座り、数日振りの2人きりの時間です。
「生徒会の挨拶、スゲーカッコよかったぜ」
「本当ですか?終わったあと講堂の外で腰抜かしました」
「あははは!椿らしいな!!で、此処に来たって事は……」
「はい!ミツ先輩から合格頂きました!!」
「おめでとう!!」
ギュッと強く抱きしめ合いました。
「ありがとうございます」
「今日メイクしてんだ」
「はい。ミツ先輩がしてくれました。でも入学式の後泣いちゃったので…多分落ちてますよね」
「顔、よく見せて?」
指で顎を支え、覗き込みます。
「……キレイだ」
僕の目をジッと捉え、唇を重ねました。

頑張ってよかったです。もし失敗していたら、今僕はここに居ません。
都華咲君からの愛を唇から受け取りました。


「そう言えば、明日行きたい所決まった?」
「はい。何処か美味しいスウィーツを食べに行きたいなぁ、と思ってます。入学祝いも兼ねて!」
「お、いいね。どこか良さげなカフェ調べようぜ。….…あ、そうか。今夜はここで泊まれるんだっけ?」
「はい!!」
「じゃ、一瞬待って」
と言うと廊下に出ました。

「おい!!徠駕くうが!!今夜戻ってくんなよ!!」

「え??何で急に??」

「椿が泊まるから!どっか別の部屋に泊まれ!」

「えええ!!そんなぁ酷すぎる!磨理王、泊めてぇ!!」
「俺襲うぞ」
「キャーー。俺、新品なのに?優しくして……」
何やら賑やかな会話が聞こえます。

バタンとドアを閉めて都華咲君が戻ってきました。
「これで安心だ」


「徠駕?」
「そ。新しい住人。天満 徠駕てんま くうがっての」
「もう仲良いんですね」
「バカでノリ良くて面白いぜ」
「へぇ……」
「……寂しいって顔してるな」
「いえ!!だい……大丈夫です!!」
「妬いてくれた方が俺は嬉しいけどな」

都華咲君が目を細めてフッと笑った顔が好きです。

「ほら、ボーっとしてないで店探そうぜ」
「そうですね!」
SNSを見ながらデートプランを練りました。

お昼前に出掛けてサンドウィッチ専門店でランチ。その後買い物に行って、パフェを食べる事に決まりました。
ちゃんとしたデートなんて初めてなのでドキドキします。


「都華咲、入るぞー!」
さっきの徠駕さんという方が部屋に入ってきました。金髪の短髪、クリッとしたツリ目が愛嬌の良さを表しています。
「何?」

「パンツ取りに来た!磨理王が勝負パンツ持ってこいって」

「何?ヤルの?」

「ヤンねーわ!!……一応な……」

「ギャハハ!!襲われる気満々じゃん!」

「だからヤンないって!でもいつ使えるか分かんねぇし、折角だから穿いとこうと思って。ほら、オシャレだろ?」
と、広げて見せてくれたパンツは黒地に大きな紫の花柄が入ったデザインでした。
満足そうに磨理王さんとやらの所へ行かれたので、部屋を追い出した罪悪感は消えました。


「そう言えば椿は今日勝負パンツ穿いてねぇの?」

「そそそそそそんなの持ってません!!」
「じゃあ、明日買うか!!」
「はは……はは…はい…!あの…勝負パンツを穿いたらどうなりますか?」
「あ?そりゃ……離してもらえなくなるんだよ」
ひぃぃぃぃいい!!
僕の混乱した顔を見て、都華咲君はお腹を抱えて笑ってます。本当に!どう対応すれば良いですか!!?
好きな人と付き合うなんて初めてですし、それどころか友達もまともにいたことがない僕は反応に困ってしまうんですよ。
でもそんな僕を可愛いと言って喜んでくれているので、こんな僕でもいいのかなって思っちゃいます。

夕食の後、一緒にシャワーを浴びました。この狭さが好きだったなぁ……としみじみ思い出しました。
都華咲君のシャンプーの香り、不意に触れる肌の感触。
一瞬一瞬が幸せです。

「そろそろ出る?」
「そうですね」
「終始ご機嫌だな」
「勿論です!嬉しくて……」
口元が緩みっぱなしです。だって、今日はずっと一緒にいられるんですもの!ご機嫌でしかいられませんよぉ。

シャワーから出た後はまた入学式の話題になりました。

「都華咲君、代表の挨拶カッコよかったです。見惚れてました」
「なら本望だわ。急に俺が呼ばれてビックリした?」
「はい、すっごくビックリしました。教えてくれてないですもん」
「サプライズしたくてさ。俺が頑張れば、椿も頑張れるかなって」
「勇気、貰いました。絶対成功させる!って思えました!」
「じゃあ、作戦成功だ!!椿もスゲー輝いてたぜ。俺も目が釘付けになった」
「大袈裟ですよ」
「ううん、本当に。頑張ってる椿に見惚れてた。今日は朝からずっと疲れただろ?おやすみ……」

額にチュッとキスをして、眠りにつきました。


次の日……。

目が覚めると、目の前には都華咲君の寝顔。
入学した時は毎日この寝顔が見られると思ってたんですよね。ソッと頬に触れました。


「ん……椿、おはよ……」
「おはようございます。起こしてしまいましたね」
「ううん。大丈夫。まだ起きてない……」 
そう呟くと、僕の腰に手を回し引き寄せました。
都華咲君の胸に顔を埋め、しばらく鼓動に耳を澄ませました。
心地よいリズムで刻まれる心臓の音が、また眠りを誘い、うつらうつらと夢の中へと誘いました。

あまりの心地よさにデートを忘れ、共に二度寝してしまいました!

「都華咲君!!都華咲君!!起きて下さい!!お昼過ぎてます!!」
目が覚めると時間はとうにお昼の12時を回っていました。
折角2 人で考えたデートプランが台無しです。大急ぎでシャワーを浴び、支度を整え寮を出る頃には午後2時前になってました。


「ぅゔーーん!!太陽が眩しいー!」
と都華咲君が背伸びをします。麗かな春の風が心地よいデート日和。2人共腹ペコなので予定していたカフェに向かいました。

テラスに座り、ようやく1食目のご飯です。
都華咲君はガッツリとカツサンド、僕のはクロワッサンに卵とチーズがサンドされています。アイスティーで乾杯しました。

「いよいよ明日から学校ですね」
「そうだな。同じクラスになれるといいな」

秀麗のホスト科は、2クラスに分かれます。

都華咲君は誰とでも直ぐに友達になるタイプなので、寮でも誰とでも仲良く喋ってます。僕は都華咲君と来夢君くらいしか殆ど喋ったことありません。他の人とも仲良くなれるといいのですが…。

そんな不安もありつつ、色々と話しているうちにだんだん楽しみに捉えられるようになってきました。
「楽しんだもん勝ち!」都華咲君が笑って言います。
そうですね、本当にその通りです!!


「あれ?都華咲じゃね?ひっさしぶりだな!」
突然話しかけられて顔を上げると、同じ中学校だった3人組でした。

「おぉ!久しぶりじゃん。元気?」
「元気?って、都華咲連絡くれよぉ!春休み全然遊んでねぇじゃん!」
「悪ぃ!寮への引っ越しが4月入って直ぐだったからな。ま、3人共元気そうで良かったわ!」
「……ってか、お前……二階堂?」
「……はい……」
一人が僕の存在に気付きました。
「何、都華咲こんな地味男クンと連んでんの?」
「地味……!!!」
傷付きましたけど、そう言われても仕方ありません。グッと気持ちを押し殺しました。
秀麗に入ってから、この短期間でも楽しい気持ちで過ごせていたので、ポーカーフェイスの方法を忘れてしまっていました。

「ってか、二階堂ってよく秀麗受かったよな~。何かワイロでも渡したの?」
「マジそれなー!俺が先生だったら気配無さ過ぎて気づかねぇかも!!」
「ギャハハ!それ酷でぇ!!」
「………」
蘇る中学生時代。大体いつもこうなると、人気のないトイレなどに連れ込まれて、髪を引っ張られたり、制服を脱がされて上半身裸の写真を撮られたりしました。
彼らの中で、僕の写真を撮るのは罰ゲームだったようで……。
その写真を後で都華咲君が全て消してくれていたんだそうです。

「……お前ら五月蝿ぇから、もう行けよ」
「え?どうしたの?折角久しぶりに遊ぼうと思って都華咲に声掛けたのに」
「そーそー!地味男クン置いといてぇ、ナンパでも行くべ?」
「それ良いな!都華咲居たら100%イケるっしょ!」

………ガタンッッ!!勢いよく立ち上がったせいで椅子が倒れました。

「すいませんが……消えて下さい……」

3人がフリーズしました。隣で都華咲君がギョッとした顔になったのが分かりました。

でも、2人の時間を邪魔されたくないし、もう中学生の頃の自分を思い出すのも嫌でした。
何もやり返せずに、泣いてばかりの自分を……。

「はっ?なに二階堂の分際で!!」

「おい。聞こえただろ?消えろって」
都華咲君が後押ししてくれました。

「………早く消えろよ。もう、オメーら友達じゃねぇし」
続け様に言い放つと、3人はブツブツと文句を垂れながら去っていきました。



「椿………あっははははは!もーースッゲーービックリした!!いきなり消えろとか、喧嘩売ってんなよ!!ハラハラしたわ!」
「だって……折角のデ……デート……なので……邪魔されたくありませんでした」
「そうだな!!よし、改めて椿の勇士に乾杯しようぜ!」
「……はあぁぁぁ。心臓が今更ドキドキしてます……」
「あはは!!頑張った頑張った!!」

それからやっとのんびりとランチをして、少し買い物に行きました。都華咲君は気に入ったピアスを見つけて、僕は日焼け止めと帽子を買いました。

パフェは流石に次回に持ち越し、ケーキを買って寮に戻りました。

「どう?初めてのデート。楽しんでくれた?」
「はい!!すっっごく楽しかったです!!」
「良かった!また行こうな」


ケーキは夕食の後、徠駕さんと、来夢君も誘って4人で食べました。途中で磨理王さんが乱入し、徠駕さんはケーキの半分程を磨理王さんに奪われてしまいましたが……。

都華咲君は寝る間際になって僕の勝負パンツを買い忘れたことに気が付いたらしく、激しく後悔したそうです。
(僕は忘れていてくれてよかったんですけどね)


さぁ!!明日からいよいよ学校!!頑張ります!!

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