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本編

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 輝惺様に包まれて、そのまま眠ってしまった。

 このところ考えすぎて疲れていたのか、丸二日も眠っていたみたいだ。

 輝惺様も時折様子を伺いに来てくれていたみたいだけど、あまりにも気持ちよさそうに眠っているものだから起こせなかったと笑っていた。

 ようやく目が覚めた時、ちょうど輝惺様が隣に座っていた。

 まさか日を跨いで眠っていたとは思ってなくて焦ったけれど、輝惺様はそれでも僕の体調を気遣ってくれた。

「うーん……お腹が空きました」

「ふふ、そうだろうね。何も食べずに眠っていたのだから。ちょうど、麿衣まえがお茶と食事を運んでくれたところなのだ。一緒に食べよう」

「麿衣様、来られていたのですね」

 聞けば、僕が眠っている間に大地神の神殿へ出向いていたらしい。

 花のお礼も兼ねて、これまでの経緯を話したところ、やはり麿衣様は概ね気付いていたと言っていた。

「狼神同士、付き合いが長いからね。なんとなく互いのことが分かるのだ」

 照れ臭そうに笑って言った。

 それでも何も聞かずに協力してくれる狼神には感謝しているとも言っていた。

 その時に、僕が眠ったまま起きないと話したところ、光の神の神殿まで食事を運んできてくれていたそうなのだ。

 輝惺様はなんでもできそうな気がするが、実は料理だけは苦手でお粥すら作れない。

 意外すぎて初めはコッソリ笑ってしまった。

 でも料理だけは頼ってもらえると確約されたのが、同時に嬉しいと思っている。

「今日、如月が目覚めてくれて良かった」

「どうしてですか?」

「実は、麿衣は地上界にやしろを構えていて、そこに毎日沢山のお供物が届く。今日は特に多かったらしく、一人では食べきれないほどの食事を運んでくれたのだ」

「そうなのですね!! 僕いっぱい食べられますよ!!」

 元気になった姿を見せたくて勢いよく立ち上がったのはいいが、たちまち眩暈でへたり込んでしまった。

(うっ……。急に立ち上がったから……気分が悪くなっちゃった)

 考えれば分かりそうなものなのに。こういう子供みたいなところは自分でも直したいと思っている。

 輝惺様はこんな僕を見ても幻滅しないでいてくれるから優しい。

 目が回るのが治った頃、今度こそはゆっくり立ちあがろうとした。すると輝惺様に抱き上げられ、一瞬何が起きたのか理解できなかった。

「えっ」

 突然体が宙に浮き、おもわず輝惺様を見る。

 顔が近くて目を見開いてしまった。

(キ……キレイすぎる~~)

 神々しい顔をこんなにも近くで見るなんて、贅沢しすぎだ。バチが当たるかもしれない。

「輝惺様! 歩けますから!!」

「病み上がりなのだ。無理はいけない」

「でも……」

「私がこうしたいのだ」

 お構いなく居間まで歩いていく輝惺様。

 こんな状態、嬉しいけど落ち着かない!!

 本当は首に腕を回したりしたいし、なんなら須凰すおう天袮あまね様みたいに頬を寄せたりしてみたい。

(やっぱりそんなの、いけない!!)

 焦らないと決めたのだ。

 輝惺様も僕を番の相手として見ると言ってくれた。

 ゆっくり距離を縮めていこう。

 せっかちな性格もこれを機に直したい。

 でも……でも……。

 ゆっくりと腕を伸ばした。

 輝惺様の肩に顔を埋める。輝惺様はお日様のような暖かくて柔らかい香りがする。

(このくらいなら、いいよね)

 少しだけ二人の距離が近付いた気がした。
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