48 / 54
47 ラメタルの民に告げる
しおりを挟む
ジェスのもう一人のお祖父様のセフェム様が門扉を越えて来て、僕は腰を抜かしそうになった。
だって顔が狼なんだ。それも銀色の狼で、その狼が僕を見下ろして、
「お前がジェスの伴侶で番いかあ。ん、あ、あれ?腹に別のマナがある。タク、タク、どゆこと?」
と今度は横にいるターク先生を見下した。ターク先生は困った顔をしてから、
「やっぱりイベールにすれば良かったかなあ……。でも感知能力はセフェムの方が上だし……」
と一言呟いて、
「彼はジェスの番いで、サリオンといいます。お腹に赤ちゃんがいるのですよ」
とセフェム様に話した。セフェム様は何度も首を傾げてから、
「宿り実?腹ん中に?」
と僕とジェスを交互に見て、
「すげえ、な、タク!腹ん中に宿り木がある!」
ターク先生を抱きしめてくるくる回り出した。
「よく分かっていないでしょう、貴方は。サリオン、この少し飲み込みの悪い獣面が僕のもう一人の伴侶で残念な番いのセフェムです。ジェスの祖父でもありますよ」
ジェスは
「よお、爺様」
と小さな手を挙げて挨拶をする。
「次王座決まった?」
「んー、決まんないなあ。とりあえずジェスとサリオンで一度行ってこい。赤ん坊出してから」
「親父と顔を合わせたくないなあ」
セフェム様がしゃがみこんでふさふさの尻尾を振りながら、ジェスの頭を撫でて、
「タクから、こっちで番い見つけたって聞かされて驚いてたけど、喜んでたぜ。まずは結婚問題はクリアだけど、王位問題がなあ」
なんて鼻に皺を寄せる。
「まだまだレームだって元気ですし、放っておきましょう。ジェスの父親なのに、レームは王座から逃れて冒険者になりたいだけです。ガリウスみたいにですね」
ターク先生がセフェム様の腕に抱えられ、ガリウス王もやってきた。高台にある城の庭に村人が集まっていて、炊き出しを始めている。湯を沸かしタオルを出したテレサと、温かいスープやパンを用意しているのはメーテルとフェンナだ。
「さあ、始めましょう。ガルドバルド大陸王族の力の見せ所です」
僕はガリウス王の左肩に乗せられ、ターク先生は右肩に乗せて、セフェム様がジェスを肩に乗せる。ガリウス王の肩にセフェム様は手をやり、
「魔法陣展開、遠見」
と呟く。すると僕の面前に見たことのない建物と、そこかしこでぼんやりと青く光るものが見えた。
「サリオン、見えますか?この青いマナはラメタルの民のものです。セフェムを通して僕たちはレガリア国の王都を可視化しています。さあ、あなたの出番ですよ」
僕は頷いてガリウス王の肩の上で立ち上がるとセフェム様が
「魔法陣展開、遠声、拡散!」
と更に魔法陣を展開する。その天空に浮かぶ魔法陣に向かって僕は声を張った。
「僕はラメタル国、国王になる者だ。ラメタルの民に告げる。今一度ラメタルに戻りたい者は手を挙げよ。戻りたいと声を出し願うのだ。そなたたちを掬い上げる光の手が差し伸べらるであろう」
するとほんの少しだけ間があったが青いマナが細く高く浮かび上がり、
「魔法陣展開、大移動陣」
ガリウス王が静かに両手を広げると、ターク先生が魔法陣を展開して、
「ガリウス、分散します」
とガリウス王の大移動陣を細かく散らし、その青いマナごと人々を包みあげると、天空にある透明な板敷に乗せていく。レガリア国では空を見て叫び声が出ているようだ。
「防御陣、発動!」
ジェスが大移動陣の周りにジェスの魔法陣を展開する。ジェスの防御魔法陣はすごいんだ。攻撃されるとその攻撃を返してしまうんだ。それは槍でも弓でも同じで、下からの攻撃は無駄に終わる。
こうしてレガリア国の隅々から百人程度のラメタルの民を掬い上げることが出来た。その後は、セフェム様はぐったり倒れてしまい、ガリウス王に担がれて寝台に押し込まれ、僕は心配になりながらも新しいラメタルの民に王都での生活の許可と、ガルドバルド大陸の民との共生について話をする。
「アル!アルフィート!」
「ライカ、ライカァ……俺、俺もう……」
裸で救出された、酷く痛めつけられていたらしい人がライカの伴侶のようで、外で湯に浸けられて傷を治療されていた。
タオルを掛けた下腹部が薄く光って点滅をしている。他の人を治癒していたターク先生が慌ててやってきて、
「降りてきているのですか、腹実が」
とアルフィートに聞く。アルフィートは頷いて、
「もう二日目になる。貴族サロンで引き出されて、でも出なくて……すごく叩かれた。ライカ、腹実が死んじゃったらどうしよう……」
そう言いながら堪えきれず泣き出した。
だって顔が狼なんだ。それも銀色の狼で、その狼が僕を見下ろして、
「お前がジェスの伴侶で番いかあ。ん、あ、あれ?腹に別のマナがある。タク、タク、どゆこと?」
と今度は横にいるターク先生を見下した。ターク先生は困った顔をしてから、
「やっぱりイベールにすれば良かったかなあ……。でも感知能力はセフェムの方が上だし……」
と一言呟いて、
「彼はジェスの番いで、サリオンといいます。お腹に赤ちゃんがいるのですよ」
とセフェム様に話した。セフェム様は何度も首を傾げてから、
「宿り実?腹ん中に?」
と僕とジェスを交互に見て、
「すげえ、な、タク!腹ん中に宿り木がある!」
ターク先生を抱きしめてくるくる回り出した。
「よく分かっていないでしょう、貴方は。サリオン、この少し飲み込みの悪い獣面が僕のもう一人の伴侶で残念な番いのセフェムです。ジェスの祖父でもありますよ」
ジェスは
「よお、爺様」
と小さな手を挙げて挨拶をする。
「次王座決まった?」
「んー、決まんないなあ。とりあえずジェスとサリオンで一度行ってこい。赤ん坊出してから」
「親父と顔を合わせたくないなあ」
セフェム様がしゃがみこんでふさふさの尻尾を振りながら、ジェスの頭を撫でて、
「タクから、こっちで番い見つけたって聞かされて驚いてたけど、喜んでたぜ。まずは結婚問題はクリアだけど、王位問題がなあ」
なんて鼻に皺を寄せる。
「まだまだレームだって元気ですし、放っておきましょう。ジェスの父親なのに、レームは王座から逃れて冒険者になりたいだけです。ガリウスみたいにですね」
ターク先生がセフェム様の腕に抱えられ、ガリウス王もやってきた。高台にある城の庭に村人が集まっていて、炊き出しを始めている。湯を沸かしタオルを出したテレサと、温かいスープやパンを用意しているのはメーテルとフェンナだ。
「さあ、始めましょう。ガルドバルド大陸王族の力の見せ所です」
僕はガリウス王の左肩に乗せられ、ターク先生は右肩に乗せて、セフェム様がジェスを肩に乗せる。ガリウス王の肩にセフェム様は手をやり、
「魔法陣展開、遠見」
と呟く。すると僕の面前に見たことのない建物と、そこかしこでぼんやりと青く光るものが見えた。
「サリオン、見えますか?この青いマナはラメタルの民のものです。セフェムを通して僕たちはレガリア国の王都を可視化しています。さあ、あなたの出番ですよ」
僕は頷いてガリウス王の肩の上で立ち上がるとセフェム様が
「魔法陣展開、遠声、拡散!」
と更に魔法陣を展開する。その天空に浮かぶ魔法陣に向かって僕は声を張った。
「僕はラメタル国、国王になる者だ。ラメタルの民に告げる。今一度ラメタルに戻りたい者は手を挙げよ。戻りたいと声を出し願うのだ。そなたたちを掬い上げる光の手が差し伸べらるであろう」
するとほんの少しだけ間があったが青いマナが細く高く浮かび上がり、
「魔法陣展開、大移動陣」
ガリウス王が静かに両手を広げると、ターク先生が魔法陣を展開して、
「ガリウス、分散します」
とガリウス王の大移動陣を細かく散らし、その青いマナごと人々を包みあげると、天空にある透明な板敷に乗せていく。レガリア国では空を見て叫び声が出ているようだ。
「防御陣、発動!」
ジェスが大移動陣の周りにジェスの魔法陣を展開する。ジェスの防御魔法陣はすごいんだ。攻撃されるとその攻撃を返してしまうんだ。それは槍でも弓でも同じで、下からの攻撃は無駄に終わる。
こうしてレガリア国の隅々から百人程度のラメタルの民を掬い上げることが出来た。その後は、セフェム様はぐったり倒れてしまい、ガリウス王に担がれて寝台に押し込まれ、僕は心配になりながらも新しいラメタルの民に王都での生活の許可と、ガルドバルド大陸の民との共生について話をする。
「アル!アルフィート!」
「ライカ、ライカァ……俺、俺もう……」
裸で救出された、酷く痛めつけられていたらしい人がライカの伴侶のようで、外で湯に浸けられて傷を治療されていた。
タオルを掛けた下腹部が薄く光って点滅をしている。他の人を治癒していたターク先生が慌ててやってきて、
「降りてきているのですか、腹実が」
とアルフィートに聞く。アルフィートは頷いて、
「もう二日目になる。貴族サロンで引き出されて、でも出なくて……すごく叩かれた。ライカ、腹実が死んじゃったらどうしよう……」
そう言いながら堪えきれず泣き出した。
14
あなたにおすすめの小説
【完結】第三王子、ただいま輸送中。理由は多分、大臣です
ナポ
BL
ラクス王子、目覚めたら馬車の中。
理由は不明、手紙一通とパン一個。
どうやら「王宮の空気を乱したため、左遷」だそうです。
そんな理由でいいのか!?
でもなぜか辺境での暮らしが思いのほか快適!
自由だし、食事は美味しいし、うるさい兄たちもいない!
……と思いきや、襲撃事件に巻き込まれたり、何かの教祖にされたり、ドタバタと騒がしい!!
本当に悪役なんですか?
メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。
状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて…
ムーンライトノベルズ にも掲載中です。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る
112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。
★本編で出てこない世界観
男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する
スノウマン(ユッキー)
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。
そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる