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52 女友達
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新生ラメタル王国と申しましょうか、王国には女官長がいます。王族の方々を中心にお世話を采配するわたくしと、バルドガルド大陸からお越しくださっているターク様はじめ別大陸以外の方々のお世話を采配するフェンナです。
初めはフェンナさんと呼んでいましたが、次第に名前で呼び合う仲になりました。フェンナは巨人族の中でも小柄なユミル族の出身で、彼女自身の個性もあり、やや小柄です。一方わたくしはヒト族の女としては大柄なほうでして、骨格はともあれよく似た背格好をしていたからでしょうか、それともユミル王族の気品を彼女から感じ取ったからでしょうか、元ラメタル王女として彼女からとはすぐに意気投合いたしました。
お互い忙しい身ではありますがフェンナとは一日一回、お世話の擦り合わせと称したお茶会を二人だけで開きます。場所はいつも女官部屋の一番端の丸いテーブル。明るい出窓には、毎日フェンナの心づくしの新しい花が花瓶に飾られています。
「メーテル、お待たせしました」
気品溢れるフェンナは女官長の長いスカートの裾を少しつまみ礼を取る。ついやってしまう貴人令嬢の癖らしく、わたくしもそうだったと微笑んだ。
「主様が王城内に温泉を掘りたいとのことですが、お許しいただけます?」
温泉……ですか。
「温水脈があるのですか?」
「そこは主様ですので、欲しいと思われたら……」
ターク様はガルド神の寵児、願えば叶いますわね。
「陛下からも話を受けております。良いのではないですか?」
するとフェンナはわたくしの手を取りました。どうしたのでしょう。
「本来ラメタルはメーテルの国ですわ。主様はメーテルが許したらと言っております」
ああ、ターク様は……あの頃と変わらないのですね。
「わたくしは構いません」
それにフェンナはホッと胸を撫で下ろしました。
「不寝番ですが、外はアルベルトさん、中はテレサさんだけで構いませんか?」
わたくしが話しますとフェンナが頷きました。
「主様の部屋は王様が結界陣を貼られてお過ごしになられますので大丈夫かと。外はセフェム様が夜警に入りたいと申しておりました。獣人族の方々は基本短睡眠ですから」
ではアルベルトには少し休憩を増やしましょう。アルベルトは拗ねるかしら、あの子は仕事が大好きですから。
中はテレサが譲らないでしょう。テレサのご褒美のような仕事ですから。日々積極的に交合をなさるようで、腹実は本当に心配ですが陛下は若いですし、お子様は沢山いることが素晴らしいですわ。
「そういえばメーテルはなぜ主様とお知り合いに?」
「お話ししていなかったかしらね」
フェンナが下町のバラックでターク様に命を救われたのだと聞いていますのに、わたくしとしたことがフェンナに話していないだなんて。
「お恥ずかしい話でしてよ?わたくしが会ったのは、この王城の瓦礫の中。わたくしが絶望の中で死を望んでいた瞬間ですわ」
わたくしは一度言葉を切って紅茶で喉を湿らせる。フェンナは若草色の瞳を見開くようにして、まるで何も知らぬ少女のような顔をしていました。
「パールバルト王国のレイモンド伯に保護されたわたくしは、母が亡くなった後わたくしの宿り木があることを知り絶望して瓦礫の山の王都に行き死ぬ覚悟をいたしました。わたくしは腹実がないと分かったからです。そこへターク様が転移陣でいらして、捨てる命ならば貰いたいと、わたくしをレイモンド伯の養女とし王女様の話し相手としたのです。まさか王女様がラメタル王族の血を引いているとは知らずにですわ」
ターク様は多分ご存知だったのだと思います。王女様はわたくしを『お姉様』と言っては慕ってくださり、レムリカント王国に嫁す際もわたくしをお連れくださいました。そして大切なサリオン様をこの世にお出しくださり……。
「春の神降しの頃に不意に居なくなっていたのは、ユグドガルド大陸に行っていたからなのですね」
フェンナはくすりと笑いました。多分お二人の伴侶様方にひどく嗜められたのでしょうね。
テレサがクッキーを焼いて持って来てくれました。わたくし達が試食したあと、陛下と配偶者殿下にお出しするのでしょう。
「蜂蜜を使ったものと、ビートから取れた砂糖で作ったものです」
ビートはラメタル王国の王都からパールバルト王都の土でよく育つようで、ロキ様が栽培を広げていき一大砂糖産地となりました。甘いものが安価に手に入り、外食ができる店も増えて、ラメタル王国は賑やかになっています。
「良い出来です。陛下方にも是非」
「いつも素敵なお菓子をありがとう、テレサさん」
「はいっ!」
テレサがクッキーを持って礼を取り出ていきました。
「姫殿下も殿下も体調も良く、そろそろタイタン王国へ伺う手配を致しましょう、フェンナ」
「ええ、メーテル」
わたくし達は微笑み合って立ち上がった。
初めはフェンナさんと呼んでいましたが、次第に名前で呼び合う仲になりました。フェンナは巨人族の中でも小柄なユミル族の出身で、彼女自身の個性もあり、やや小柄です。一方わたくしはヒト族の女としては大柄なほうでして、骨格はともあれよく似た背格好をしていたからでしょうか、それともユミル王族の気品を彼女から感じ取ったからでしょうか、元ラメタル王女として彼女からとはすぐに意気投合いたしました。
お互い忙しい身ではありますがフェンナとは一日一回、お世話の擦り合わせと称したお茶会を二人だけで開きます。場所はいつも女官部屋の一番端の丸いテーブル。明るい出窓には、毎日フェンナの心づくしの新しい花が花瓶に飾られています。
「メーテル、お待たせしました」
気品溢れるフェンナは女官長の長いスカートの裾を少しつまみ礼を取る。ついやってしまう貴人令嬢の癖らしく、わたくしもそうだったと微笑んだ。
「主様が王城内に温泉を掘りたいとのことですが、お許しいただけます?」
温泉……ですか。
「温水脈があるのですか?」
「そこは主様ですので、欲しいと思われたら……」
ターク様はガルド神の寵児、願えば叶いますわね。
「陛下からも話を受けております。良いのではないですか?」
するとフェンナはわたくしの手を取りました。どうしたのでしょう。
「本来ラメタルはメーテルの国ですわ。主様はメーテルが許したらと言っております」
ああ、ターク様は……あの頃と変わらないのですね。
「わたくしは構いません」
それにフェンナはホッと胸を撫で下ろしました。
「不寝番ですが、外はアルベルトさん、中はテレサさんだけで構いませんか?」
わたくしが話しますとフェンナが頷きました。
「主様の部屋は王様が結界陣を貼られてお過ごしになられますので大丈夫かと。外はセフェム様が夜警に入りたいと申しておりました。獣人族の方々は基本短睡眠ですから」
ではアルベルトには少し休憩を増やしましょう。アルベルトは拗ねるかしら、あの子は仕事が大好きですから。
中はテレサが譲らないでしょう。テレサのご褒美のような仕事ですから。日々積極的に交合をなさるようで、腹実は本当に心配ですが陛下は若いですし、お子様は沢山いることが素晴らしいですわ。
「そういえばメーテルはなぜ主様とお知り合いに?」
「お話ししていなかったかしらね」
フェンナが下町のバラックでターク様に命を救われたのだと聞いていますのに、わたくしとしたことがフェンナに話していないだなんて。
「お恥ずかしい話でしてよ?わたくしが会ったのは、この王城の瓦礫の中。わたくしが絶望の中で死を望んでいた瞬間ですわ」
わたくしは一度言葉を切って紅茶で喉を湿らせる。フェンナは若草色の瞳を見開くようにして、まるで何も知らぬ少女のような顔をしていました。
「パールバルト王国のレイモンド伯に保護されたわたくしは、母が亡くなった後わたくしの宿り木があることを知り絶望して瓦礫の山の王都に行き死ぬ覚悟をいたしました。わたくしは腹実がないと分かったからです。そこへターク様が転移陣でいらして、捨てる命ならば貰いたいと、わたくしをレイモンド伯の養女とし王女様の話し相手としたのです。まさか王女様がラメタル王族の血を引いているとは知らずにですわ」
ターク様は多分ご存知だったのだと思います。王女様はわたくしを『お姉様』と言っては慕ってくださり、レムリカント王国に嫁す際もわたくしをお連れくださいました。そして大切なサリオン様をこの世にお出しくださり……。
「春の神降しの頃に不意に居なくなっていたのは、ユグドガルド大陸に行っていたからなのですね」
フェンナはくすりと笑いました。多分お二人の伴侶様方にひどく嗜められたのでしょうね。
テレサがクッキーを焼いて持って来てくれました。わたくし達が試食したあと、陛下と配偶者殿下にお出しするのでしょう。
「蜂蜜を使ったものと、ビートから取れた砂糖で作ったものです」
ビートはラメタル王国の王都からパールバルト王都の土でよく育つようで、ロキ様が栽培を広げていき一大砂糖産地となりました。甘いものが安価に手に入り、外食ができる店も増えて、ラメタル王国は賑やかになっています。
「良い出来です。陛下方にも是非」
「いつも素敵なお菓子をありがとう、テレサさん」
「はいっ!」
テレサがクッキーを持って礼を取り出ていきました。
「姫殿下も殿下も体調も良く、そろそろタイタン王国へ伺う手配を致しましょう、フェンナ」
「ええ、メーテル」
わたくし達は微笑み合って立ち上がった。
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