五国王伝〜醜男は美神王に転生し愛でられる〜〈完結〉

クリム

文字の大きさ
30 / 59

31 王気の在処

しおりを挟む
 青緑王の前にはシンラの為の食事が置かれ、シンラは葡萄酒の杯を差し出したトトに、おもむろに切り出された。

「我が官がすまなかった」

 王の前だとは思うがシンラは人だ。空腹を満たすために、前に出された食事を食べながら、無言のまま首を横に振る。

「森の若き王よ。しかし、平伏という行為、あれは、人が感じる王気がさせるのだ。あんな子供の姿でも、直樹は神王だ」

 シンラは頷いた。

 シンラが考えていたのは、直樹は森の伴侶だからこそ、森に黒の低木が根付いたのではないか。シンラはあれを和木と思い込んでいたが、あちこちにあるのだと判明している。黒国に和木の実が付けば、動きがあるはずだが何も話がない。だからこそジジは、直樹をは森の国の一人としてジジは親言使にし国々を回らせるようにしているのだと。

 黒い低木が違う何かだとしたら、どうなのだろう。和木は黒国か森かの別のところにあるのかも知れない。

「森の王は、なにかを焦っておられるのか?」 

 シンラと同じくらいの年齢に見える美麗の王は、シンラよりずいぶん長く生きている。

「森を王国として認めていただきたい」

「王気も感じられない『王』を王と呼べと?」

 息が止まりそうになり、シンラは杯を煽った。

「……そうだ」

「特産はあるのか?掛け値なしの対等な取引をすることが大切だ」

「それは……」

 色の国にはそれぞれ、王の心象に基づいた特産が生まれる。

 しかし森には、なにもない。王は神ではないからだ。森は『在った』のだ。そして『満ちたる者』は『居た』のだから。

「焦られるな、森の王よ」

 何もかも見透されていると感がして、シンラは耳を下げた。

「ああ、分かっている。直樹と和合をしたが、俺は……神王ではない」 

「森の王が、黒王と?あり得ない」

 トトが首を傾げながら、杯に口をつけると、

「もしかして森の王には黒の血が流れているのではないか?」

と尋ねてくる。

 シンラの父母も祖父母も森の民だ。しかしもう一つ……

「森の知恵者ジジは元黒王だ。そして森の王の祖でもある」

 シンラにも薄く黒国神王の血が流れているから、直樹との和合者になったのだろう。

「なんと。だが和合は重畳。しかして、黒王はどちらの国と和合したのやら……」

 黒国にも、森の国にも和合の実はない。

 シンラは黙ったまま、注がれた杯を開けた。



 直樹は青緑の髪を追って、発光する湖を進む。真っ暗な湖の中で、本当に水底が真っ白に光っていて、眩しいくらいだ。

 水泳を習っていた直樹は泳ぎが得意な方だが、ニュトはその何倍も得意のようで、ニュトに置いていかれないようについていく。

 夜光虫というが光る何がいるのか分からない。ただ、底は発光していて、直樹は横を行き過ぎて底に向かう大きな影を見て驚いた。それが直樹に気づいて、直樹に寄ってくる。

 直樹の背よりも大きな魚が、湖の底の光を食べに来ているようで、直樹はニュトを見上げた。

 ニュトは底とは別の光を目指していて、水面ではない何が光る場所に向かい泳いで行ってしまう。直樹は魚を振り切ろうと足に力を入れるが、ニュトの悲鳴のような声が振動し、別の巨魚がニュトの髪をくわえて引っ張っているのを見た。

 直樹は後ろの魚に追い付かれながら、ニュトの髪を引っ張る魚の前に躍り出て、息を手の中に全部吐き出し、それを両手で魚の目の前叩いて弾く。

 二匹の巨魚は目の前の細かな泡と振動に逃げ出し、直樹は吐き出してしまった全ての息に苦しくなり、微かにもがいた。

「……っ」

 目の前に青緑の髪が降り注ぎ、直樹は顔を両手で捕まれ唇を塞がれると、ニュトの息を貰う。

「……ふ」

 再び柔らかな唇が寄せられ空気を貰うと、ニュトが細い指を絡め手を繋いで眩い光の元に泳ぎ込んだ。光は水面で輝き、しかし地上ではない。さらさらの砂を踏みしめ、膝をつく。

 長い髪が水を含んで重たく感じるし、手足が重く震えていた。

「はっ、はあっ、はっ……ニュト様?」

 水の中にある大きな洞窟の中には空気があり、その空間が光っていたのだ。

「やっ……と……たどり着けた。トト様のお役に立てた……」

 洞窟の浅瀬に座り込んではらはらと涙を流すニュトの足元にも壁にもたくさんの丸い玉があり、それが一面に光っている。

 直樹は息を飲んで見渡した。

夜光玉やこうだま!ジジ様のところにあります。すごい、貴重な物なのに、こんなにたくさん。夜の作業では手元が明るくていいって……ニュト様?」

 ニュトが直樹の言葉に何度も頷きながら、片手ほどの丸い光る玉をそっと抱き締めた。

「国の特産がこんなにたくさん。ニュトはダメな子だから、心象が何もない。トト様に迷惑ばかり掛けている。だから、だから、これで……」

 そう呟きながら玉を抱きしめるニュトの足元にまた一つ玉が浮かんでくる。直樹は膝をついたまま、ニュトの様子を見上げていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

処理中です...