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31 王気の在処
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青緑王の前にはシンラの為の食事が置かれ、シンラは葡萄酒の杯を差し出したトトに、おもむろに切り出された。
「我が官がすまなかった」
王の前だとは思うがシンラは人だ。空腹を満たすために、前に出された食事を食べながら、無言のまま首を横に振る。
「森の若き王よ。しかし、平伏という行為、あれは、人が感じる王気がさせるのだ。あんな子供の姿でも、直樹は神王だ」
シンラは頷いた。
シンラが考えていたのは、直樹は森の伴侶だからこそ、森に黒の低木が根付いたのではないか。シンラはあれを和木と思い込んでいたが、あちこちにあるのだと判明している。黒国に和木の実が付けば、動きがあるはずだが何も話がない。だからこそジジは、直樹をは森の国の一人としてジジは親言使にし国々を回らせるようにしているのだと。
黒い低木が違う何かだとしたら、どうなのだろう。和木は黒国か森かの別のところにあるのかも知れない。
「森の王は、なにかを焦っておられるのか?」
シンラと同じくらいの年齢に見える美麗の王は、シンラよりずいぶん長く生きている。
「森を王国として認めていただきたい」
「王気も感じられない『王』を王と呼べと?」
息が止まりそうになり、シンラは杯を煽った。
「……そうだ」
「特産はあるのか?掛け値なしの対等な取引をすることが大切だ」
「それは……」
色の国にはそれぞれ、王の心象に基づいた特産が生まれる。
しかし森には、なにもない。王は神ではないからだ。森は『在った』のだ。そして『満ちたる者』は『居た』のだから。
「焦られるな、森の王よ」
何もかも見透されていると感がして、シンラは耳を下げた。
「ああ、分かっている。直樹と和合をしたが、俺は……神王ではない」
「森の王が、黒王と?あり得ない」
トトが首を傾げながら、杯に口をつけると、
「もしかして森の王には黒の血が流れているのではないか?」
と尋ねてくる。
シンラの父母も祖父母も森の民だ。しかしもう一つ……
「森の知恵者ジジは元黒王だ。そして森の王の祖でもある」
シンラにも薄く黒国神王の血が流れているから、直樹との和合者になったのだろう。
「なんと。だが和合は重畳。しかして、黒王はどちらの国と和合したのやら……」
黒国にも、森の国にも和合の実はない。
シンラは黙ったまま、注がれた杯を開けた。
直樹は青緑の髪を追って、発光する湖を進む。真っ暗な湖の中で、本当に水底が真っ白に光っていて、眩しいくらいだ。
水泳を習っていた直樹は泳ぎが得意な方だが、ニュトはその何倍も得意のようで、ニュトに置いていかれないようについていく。
夜光虫というが光る何がいるのか分からない。ただ、底は発光していて、直樹は横を行き過ぎて底に向かう大きな影を見て驚いた。それが直樹に気づいて、直樹に寄ってくる。
直樹の背よりも大きな魚が、湖の底の光を食べに来ているようで、直樹はニュトを見上げた。
ニュトは底とは別の光を目指していて、水面ではない何が光る場所に向かい泳いで行ってしまう。直樹は魚を振り切ろうと足に力を入れるが、ニュトの悲鳴のような声が振動し、別の巨魚がニュトの髪をくわえて引っ張っているのを見た。
直樹は後ろの魚に追い付かれながら、ニュトの髪を引っ張る魚の前に躍り出て、息を手の中に全部吐き出し、それを両手で魚の目の前叩いて弾く。
二匹の巨魚は目の前の細かな泡と振動に逃げ出し、直樹は吐き出してしまった全ての息に苦しくなり、微かにもがいた。
「……っ」
目の前に青緑の髪が降り注ぎ、直樹は顔を両手で捕まれ唇を塞がれると、ニュトの息を貰う。
「……ふ」
再び柔らかな唇が寄せられ空気を貰うと、ニュトが細い指を絡め手を繋いで眩い光の元に泳ぎ込んだ。光は水面で輝き、しかし地上ではない。さらさらの砂を踏みしめ、膝をつく。
長い髪が水を含んで重たく感じるし、手足が重く震えていた。
「はっ、はあっ、はっ……ニュト様?」
水の中にある大きな洞窟の中には空気があり、その空間が光っていたのだ。
「やっ……と……たどり着けた。トト様のお役に立てた……」
洞窟の浅瀬に座り込んではらはらと涙を流すニュトの足元にも壁にもたくさんの丸い玉があり、それが一面に光っている。
直樹は息を飲んで見渡した。
「夜光玉!ジジ様のところにあります。すごい、貴重な物なのに、こんなにたくさん。夜の作業では手元が明るくていいって……ニュト様?」
ニュトが直樹の言葉に何度も頷きながら、片手ほどの丸い光る玉をそっと抱き締めた。
「国の特産がこんなにたくさん。ニュトはダメな子だから、心象が何もない。トト様に迷惑ばかり掛けている。だから、だから、これで……」
そう呟きながら玉を抱きしめるニュトの足元にまた一つ玉が浮かんでくる。直樹は膝をついたまま、ニュトの様子を見上げていた。
「我が官がすまなかった」
王の前だとは思うがシンラは人だ。空腹を満たすために、前に出された食事を食べながら、無言のまま首を横に振る。
「森の若き王よ。しかし、平伏という行為、あれは、人が感じる王気がさせるのだ。あんな子供の姿でも、直樹は神王だ」
シンラは頷いた。
シンラが考えていたのは、直樹は森の伴侶だからこそ、森に黒の低木が根付いたのではないか。シンラはあれを和木と思い込んでいたが、あちこちにあるのだと判明している。黒国に和木の実が付けば、動きがあるはずだが何も話がない。だからこそジジは、直樹をは森の国の一人としてジジは親言使にし国々を回らせるようにしているのだと。
黒い低木が違う何かだとしたら、どうなのだろう。和木は黒国か森かの別のところにあるのかも知れない。
「森の王は、なにかを焦っておられるのか?」
シンラと同じくらいの年齢に見える美麗の王は、シンラよりずいぶん長く生きている。
「森を王国として認めていただきたい」
「王気も感じられない『王』を王と呼べと?」
息が止まりそうになり、シンラは杯を煽った。
「……そうだ」
「特産はあるのか?掛け値なしの対等な取引をすることが大切だ」
「それは……」
色の国にはそれぞれ、王の心象に基づいた特産が生まれる。
しかし森には、なにもない。王は神ではないからだ。森は『在った』のだ。そして『満ちたる者』は『居た』のだから。
「焦られるな、森の王よ」
何もかも見透されていると感がして、シンラは耳を下げた。
「ああ、分かっている。直樹と和合をしたが、俺は……神王ではない」
「森の王が、黒王と?あり得ない」
トトが首を傾げながら、杯に口をつけると、
「もしかして森の王には黒の血が流れているのではないか?」
と尋ねてくる。
シンラの父母も祖父母も森の民だ。しかしもう一つ……
「森の知恵者ジジは元黒王だ。そして森の王の祖でもある」
シンラにも薄く黒国神王の血が流れているから、直樹との和合者になったのだろう。
「なんと。だが和合は重畳。しかして、黒王はどちらの国と和合したのやら……」
黒国にも、森の国にも和合の実はない。
シンラは黙ったまま、注がれた杯を開けた。
直樹は青緑の髪を追って、発光する湖を進む。真っ暗な湖の中で、本当に水底が真っ白に光っていて、眩しいくらいだ。
水泳を習っていた直樹は泳ぎが得意な方だが、ニュトはその何倍も得意のようで、ニュトに置いていかれないようについていく。
夜光虫というが光る何がいるのか分からない。ただ、底は発光していて、直樹は横を行き過ぎて底に向かう大きな影を見て驚いた。それが直樹に気づいて、直樹に寄ってくる。
直樹の背よりも大きな魚が、湖の底の光を食べに来ているようで、直樹はニュトを見上げた。
ニュトは底とは別の光を目指していて、水面ではない何が光る場所に向かい泳いで行ってしまう。直樹は魚を振り切ろうと足に力を入れるが、ニュトの悲鳴のような声が振動し、別の巨魚がニュトの髪をくわえて引っ張っているのを見た。
直樹は後ろの魚に追い付かれながら、ニュトの髪を引っ張る魚の前に躍り出て、息を手の中に全部吐き出し、それを両手で魚の目の前叩いて弾く。
二匹の巨魚は目の前の細かな泡と振動に逃げ出し、直樹は吐き出してしまった全ての息に苦しくなり、微かにもがいた。
「……っ」
目の前に青緑の髪が降り注ぎ、直樹は顔を両手で捕まれ唇を塞がれると、ニュトの息を貰う。
「……ふ」
再び柔らかな唇が寄せられ空気を貰うと、ニュトが細い指を絡め手を繋いで眩い光の元に泳ぎ込んだ。光は水面で輝き、しかし地上ではない。さらさらの砂を踏みしめ、膝をつく。
長い髪が水を含んで重たく感じるし、手足が重く震えていた。
「はっ、はあっ、はっ……ニュト様?」
水の中にある大きな洞窟の中には空気があり、その空間が光っていたのだ。
「やっ……と……たどり着けた。トト様のお役に立てた……」
洞窟の浅瀬に座り込んではらはらと涙を流すニュトの足元にも壁にもたくさんの丸い玉があり、それが一面に光っている。
直樹は息を飲んで見渡した。
「夜光玉!ジジ様のところにあります。すごい、貴重な物なのに、こんなにたくさん。夜の作業では手元が明るくていいって……ニュト様?」
ニュトが直樹の言葉に何度も頷きながら、片手ほどの丸い光る玉をそっと抱き締めた。
「国の特産がこんなにたくさん。ニュトはダメな子だから、心象が何もない。トト様に迷惑ばかり掛けている。だから、だから、これで……」
そう呟きながら玉を抱きしめるニュトの足元にまた一つ玉が浮かんでくる。直樹は膝をついたまま、ニュトの様子を見上げていた。
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