追憶のステンドグラス

雪原るい

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一章 ステンドグラスは幻に…

9:無事とは言いがたい…

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酔っ払い達によるバトルロワイヤルは、リベリオとアルヴィドの勝利をもって終了しました。

武力で制圧ですか…一応、2人とも"聖職"に就いているんじゃないのか?と訊きたいところですが――
まぁ、ノリス司祭がGOサインをだしたのだから…いいんだろうな、と思う事にしました。

兄さんなんか、興味なさげにお酒を飲みながらバトルロワイヤルを見てましたよ…多分、結果が読めてたんでしょうね。
まぁ、兄さんまで参加したら誰も止められなくなりますし…え、僕やノリス司祭では無理ですから。

ただ、酒場の椅子やテーブルは兄さんが使っているもの以外は全滅です。
店主は、もう諦めモードのようで普通に無事なコップを拭いたり…兄さんが注文している酒やつまみを用意したり…と動いてました。
あの様子ではよくある事なのだろう――お気の毒に…でも、とりあえず僕の分の椅子をください。



死屍累々となっている酔っ払い達とゴミと化した椅子やテーブルを横目に、僕と兄とノリス司祭の3人は椅子に腰掛けて飲んでます――
兄とノリス司祭がお酒を、僕はジュースをですが。

この2人…酒に強いので、付き合って飲むとこちらがつぶれます。

あぁ…リベリオとアルヴィドは、楽しそうに酔っ払い達を外に運び出していますよ。
なので、しばらくはこっちに来ないでしょう…

――で、ルークの知りたい事でしたよね?話し合いの内容は。
お酒を仰いだノリス司祭は、少し考える素振りをしています…何か言いにくい事柄なのだろうか?
気になっている様子のルークはノリス司祭と兄さんの間をウロウロしていて――少し邪魔だなぁ、と思っていたら…兄が叩き落とした上に、空になったコップに入れて上下逆にしてテーブルに置いた。
これで静かになりますね。

「あぁ、すみません…ルークの件、でしたね。彼は…どうやら、食べられたみたいですよ」

つまみとしてだされた豆を食べながら、ノリス司祭はにこやかに言った。
…それ、にこやかにいう話なのでしょうかねぇ。

本人ルークは、ショックで固まってますが…まぁ、食べられたのならしょうがないですよね。

「ふーん…誰が何目的で食べたんだぁ?んで、やっぱり頭から?」

お酒を飲みながら、あまり興味なさげに兄が言った。
頭から丸かじり…それなら、死亡前の事を覚えていない理由わけもわかります。

でも、兄さん…ノリス司祭が笑ってるから違うみたいですよ?

カップに囚われたルークを助け出したノリス司祭は、手のひらに彼を乗せると軽く投げ上げてキャッチするを繰り返しています。

「エルハルト…それだと目立つでしょう?そうではなく…精力だけでなく、生命力をしっかり絞りとられたようですよ」

根こそぎ…それはそれは――もう、ルークに何と声をかけてあげれば状態です。

えー…病魔と淫魔のダブルパンチですか。
生前のルークは、どうも下級魔族に好かれやすかった――いえ、死後は僕らのような上級魔族に弄られているのだから何かしらの縁でもあるのかもしれませんね。
もういっそ、次の転生先を魔族にしたらどうですか?

あぁ…その前に、神の化身に玩具にされてますが…大丈夫ですかねぇ。

『…ま、まさか彼女が――』

ふるふる震えているルークが言ってますけど、真実を聞きたくなくて…信じたくなくて仕方ないのでしょう。
ですが、ノリス司祭は優しいのでルークの魂を撫でると…「お気の毒ですが…」と止めの一言を――せめて、も少し言葉を濁してあげてくださいよ。
ルークが動かなくなったじゃないですか…まぁ、あの廃墟を見たらなんとなく想像できるというか。

兄はゲラゲラ笑いながら、新たに注文した酒を飲んでいます。
…しかし、本当に面白い事になってきましたね。


***


酔っ払い達を片付け終えたリベリオとアルヴィドの2人が、店主から椅子を貰ってこちらに来ました。
意外に時間がかかったな、と思っていたら外でも一戦交えていたそうだ…笑いながらリベリオが言ってました。
…無駄に元気な酔っ払い達ですねぇ。

遅れてきた2人に、ノリス司祭が簡単に説明をしています――
まぁ、相手が下級魔族だから…神官騎士2人で何とかなるのではないですかね。

僕と兄は空気になれるよう頑張ろうと思いますが、ノリス司祭を盾にして。

――そういえば、ルークは生きて…いえ、死霊ですから生きているかどうかじゃないけど。
何処にいるのか探してみると、すぐに見つけられました…兄の頭の上でぐったりしてましたよ。
うーん、あのぐったり具合から…自ら乗ったりは無いだろうし、ずっと酒を飲んで暇そうにしている兄が自分の頭に乗せたりは無いと信じたい。

それに、ほんの少し前までノリス司祭が持っていたし…なら、犯人はノリス司祭ですね!
ひとり納得していたら、リベリオが疑問を口にしました。

「ふーん…という事は、その魔族2体を討伐すればルークの仇を討てるんだよな?何処にいるか…それが問題だよ」

まぁ、確かにそれが一番の問題ですね…
病魔の方はわかりませんが、淫魔ならこの周辺で食事している可能性はあると思う。
少しでも可能性があるのなら…リベリオかアルヴィドが餌になってくださいね、僕と兄さんとノリス司祭では無理ですから――ルークは、論外ですのであしからず。
ですが、2人の内どちらか餌になったら戦力落ちますかね…?

「なー…ならよー、外にいる酔っ払い使ったらどうだぁ?いっぱいいんだから、ひとりくらい当たり引くんじゃね」

ぐったりしたルークを頭に乗せたままの兄が言ってますが、兄さん…ちょっと飽きてますね、今の状況に。
わかりますよ…その気持ちは。

とにかく、餌になりそうな酔っ払いを捕まえて宿屋に連れて行けばいいんでしょうけど。
――ですが、聖職者がそれをやって大丈夫なのでしょうか?
やる気満々の神官騎士2人を見て、僕は少し思ってしまいました。


ねぇ、そこそこ高位な聖職者なノリス司祭…
貴方、一応人も守る役目を持っているのだから少しは躊躇うという事をしたらどうですか?


まぁ…誰も止めない時点で活きのいい酔っ払い冒険者達の運命は決まったようなものだし。

「だいたい十人前後いれば大丈夫だろ~…って事で、早速願おうかね~」

そう言ったリベリオが、鼻歌交じりに外へ向かいます。

…冒険者達、ご愁傷様!
しっかり餌になってくださいね、と僕ら兄弟は心の中で祈っておきました。

それにしても、ルークはいつまで兄さんの頭に乗ってる気なのか…お前の為に、10人もの冒険者が貞操の危機を迎えようとしているのに――

ふと、アルヴィドの方を見ると…彼は店主から縄をいくつか貰っていました。
あぁ…捕獲した冒険者をそれで縛るのだろうか?

店主に礼を述べたアルヴィドは、足早に外へ向かいます…ほら、準備が着々と進んでますよ?

ルークをつついてみましたが、魂のしっぽ部分で兄の頭をはたく以外の反応はありませんでした。
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