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三年目
137:いつのまに、はかられていたのか。
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せっかくだから、とアザレアは友人達に服を剥かれてドレスに着替えることになった。
友人Aと友人Bに服を着付けてもらい、その2に髪を整えてもらうのだ。
「うわ、ドレスに合わせたインナーとかもある」
呟きながら、友人Bはコルセットのようなものを箱から取り出した。
「あなたのために色々と揃えたみたいね」
アクセサリーの入った箱を開けて中身を見、
「……ふぅん。あなたの目の色の石ね」
常識的ね、と呟く。
「なんで『常識的』なんです?」
友人Aの呟きを聞き、その2は首を傾げた。
「え、だって結婚してないのに自分以外の色の石を身に付けるとかおかしいじゃない」
当然の事実だと、友人Aは答える。
「そうだね。ついでにいうと、結婚しててもその相手の目の色の石とかちょっと重いよ」
せめて髪の色までだよねぇ、と友人Bが付け足した。
「うーん……ドレスが当人の髪の色で、石が同じく目の色。可もなく不可でもなく、って感じ」
「そうなんですね……」
箱の中身をざっと目を通した友人Bの返答に、その2は相槌を打つ。
「ま、あなたはずっと大事にされてた箱入り娘らしいから、知らなくても当然かも知れないわね」
知らなかったことを恥じているのか、少し気恥ずかしそうにするその2に友人Aは問題ないと言った。
「……だってあの子も知らないでしょうし、聞いてもどうせ忘れるのよ」
「…………そうなんですね」
友人Bにコルセットらしきものを付けられているアザレアを眺めながら、友人Aはその2を慰める。
「締めるよー」
「ぐえー」
なぜか友人Bは楽しそうで、コルセットを絞められているアザレアは、潰れた小動物のような呻き声を上げていた。
×
「……どう?」
贈られたものを一揃い身に付けたアザレアは、友人達に問いかける。
ハートカットの胸元に、ソフトチュール生地のホルターネックを重ねたノースリーブでAラインのもので、アザレアの蜜柑色の髪によく似た橙色を基調にした明るい色のドレスだ。
それと一緒に、一緒にドレスと同様の生地で作られた二の腕の中ほどまでの長手袋と高さが控えめの金具なしの靴が入っていたらしい。気恥ずかしそうにしながら、アザレアは友人達を伺い見る。
手紙に書いてある通り、全身が放出器官の彼女のために肌の露出が控えめのデザインだった。
「へぇ、良いじゃない」
「うん。似合ってる」
「可愛いですねー」
友人A、友人B、その2はそれぞれの感想を言う。
「そうかな?」
くるり、とアザレアは一回転をすると、柔らかく裾が広がった。
「そうかなぁ……えへへ」
「締まりのない顔ね」
頬を染めるアザレアに、友人Aは少し呆れた様子で微笑む。
「……あれ、」
「どうしたの?」
ドレスをじっと見つめるその2に、友人Bは問いかける。
「いいえ、何でもないです……」
ドレスの一部に、差し色として入った色が、なんとなく見覚えがあるような気がしたのだ
「(……紫色……言うのは野暮なんでしょうね)」
ひっそりと溜息を吐いた。
「ところで、よく魔女ちゃんにぴったりなものが用意できましたよね。服屋さんとかに行ったんですか?」
「……ん? 確かに、なんでわかったんだろ」
その2の問いかけにアザレアは首を傾げる。
思えば、長手袋の指の長さや手首の位置、太さも丁度良い。金具なしの靴の大きさも丁度良いし、中のクッション性も丁度良い。恐らく長時間は居ていても靴ずれは起こりにくい物であろうことは想像に難くない。
それを、アザレアは「(まあ、最近はよく家にも行ってるし)」と、片付けた。
×
それからすぐに寒さや風が酷くなり、魔術アカデミーは春休みに入った。
アザレア達、魔術アカデミー第六学年生には最後の春休み中に卒業パーティーに必要な礼儀作法などの集中講義が行われる。要は、今までの授業の仕上げ作業のようなものだ。
「ね。婚約者の、どの辺りが好きなの?」
講習の休憩時間で、丁度、アザレアの隣に座った友人Bは問いかける。
「……ん、努力家でがんばってるとこ」
アザレアは自身で作った薬草の抜け殻を固めたものを食みつつ、答える。
「それと、本人は否定するけど、誠実で優しいところとか」
「そうなんだ?」
友人Bも軽食がわりの干し肉を齧った。
「あと……なんとなくほっとけないの。……きっと一人でも平気なんだろうけど、放っておいたら危ない気がする」
「『危ない』って、どこが?」
彼なのか、その他なのかと友人Bは問いかける。
「わかんない」
首を傾げ、アザレアは零した。
「だけど……あの人となら結構、うまくいくと思うんだ」
「……へぇ」
友人Bは面白いものを見たような顔をする。
「早く、会えないかなぁ」
そう思いながら過ごしている内に、青空が見える。
久々の青空を見て嬉しい気持ちがある反面、なぜだか漠然とした不安が過ぎった。
友人Aと友人Bに服を着付けてもらい、その2に髪を整えてもらうのだ。
「うわ、ドレスに合わせたインナーとかもある」
呟きながら、友人Bはコルセットのようなものを箱から取り出した。
「あなたのために色々と揃えたみたいね」
アクセサリーの入った箱を開けて中身を見、
「……ふぅん。あなたの目の色の石ね」
常識的ね、と呟く。
「なんで『常識的』なんです?」
友人Aの呟きを聞き、その2は首を傾げた。
「え、だって結婚してないのに自分以外の色の石を身に付けるとかおかしいじゃない」
当然の事実だと、友人Aは答える。
「そうだね。ついでにいうと、結婚しててもその相手の目の色の石とかちょっと重いよ」
せめて髪の色までだよねぇ、と友人Bが付け足した。
「うーん……ドレスが当人の髪の色で、石が同じく目の色。可もなく不可でもなく、って感じ」
「そうなんですね……」
箱の中身をざっと目を通した友人Bの返答に、その2は相槌を打つ。
「ま、あなたはずっと大事にされてた箱入り娘らしいから、知らなくても当然かも知れないわね」
知らなかったことを恥じているのか、少し気恥ずかしそうにするその2に友人Aは問題ないと言った。
「……だってあの子も知らないでしょうし、聞いてもどうせ忘れるのよ」
「…………そうなんですね」
友人Bにコルセットらしきものを付けられているアザレアを眺めながら、友人Aはその2を慰める。
「締めるよー」
「ぐえー」
なぜか友人Bは楽しそうで、コルセットを絞められているアザレアは、潰れた小動物のような呻き声を上げていた。
×
「……どう?」
贈られたものを一揃い身に付けたアザレアは、友人達に問いかける。
ハートカットの胸元に、ソフトチュール生地のホルターネックを重ねたノースリーブでAラインのもので、アザレアの蜜柑色の髪によく似た橙色を基調にした明るい色のドレスだ。
それと一緒に、一緒にドレスと同様の生地で作られた二の腕の中ほどまでの長手袋と高さが控えめの金具なしの靴が入っていたらしい。気恥ずかしそうにしながら、アザレアは友人達を伺い見る。
手紙に書いてある通り、全身が放出器官の彼女のために肌の露出が控えめのデザインだった。
「へぇ、良いじゃない」
「うん。似合ってる」
「可愛いですねー」
友人A、友人B、その2はそれぞれの感想を言う。
「そうかな?」
くるり、とアザレアは一回転をすると、柔らかく裾が広がった。
「そうかなぁ……えへへ」
「締まりのない顔ね」
頬を染めるアザレアに、友人Aは少し呆れた様子で微笑む。
「……あれ、」
「どうしたの?」
ドレスをじっと見つめるその2に、友人Bは問いかける。
「いいえ、何でもないです……」
ドレスの一部に、差し色として入った色が、なんとなく見覚えがあるような気がしたのだ
「(……紫色……言うのは野暮なんでしょうね)」
ひっそりと溜息を吐いた。
「ところで、よく魔女ちゃんにぴったりなものが用意できましたよね。服屋さんとかに行ったんですか?」
「……ん? 確かに、なんでわかったんだろ」
その2の問いかけにアザレアは首を傾げる。
思えば、長手袋の指の長さや手首の位置、太さも丁度良い。金具なしの靴の大きさも丁度良いし、中のクッション性も丁度良い。恐らく長時間は居ていても靴ずれは起こりにくい物であろうことは想像に難くない。
それを、アザレアは「(まあ、最近はよく家にも行ってるし)」と、片付けた。
×
それからすぐに寒さや風が酷くなり、魔術アカデミーは春休みに入った。
アザレア達、魔術アカデミー第六学年生には最後の春休み中に卒業パーティーに必要な礼儀作法などの集中講義が行われる。要は、今までの授業の仕上げ作業のようなものだ。
「ね。婚約者の、どの辺りが好きなの?」
講習の休憩時間で、丁度、アザレアの隣に座った友人Bは問いかける。
「……ん、努力家でがんばってるとこ」
アザレアは自身で作った薬草の抜け殻を固めたものを食みつつ、答える。
「それと、本人は否定するけど、誠実で優しいところとか」
「そうなんだ?」
友人Bも軽食がわりの干し肉を齧った。
「あと……なんとなくほっとけないの。……きっと一人でも平気なんだろうけど、放っておいたら危ない気がする」
「『危ない』って、どこが?」
彼なのか、その他なのかと友人Bは問いかける。
「わかんない」
首を傾げ、アザレアは零した。
「だけど……あの人となら結構、うまくいくと思うんだ」
「……へぇ」
友人Bは面白いものを見たような顔をする。
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そう思いながら過ごしている内に、青空が見える。
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