薬術の魔女の結婚事情【リメイク】

月乃宮 夜見

文字の大きさ
163 / 200
同棲生活

163:お仕事の時間拘束。

しおりを挟む
 それから少しして、ラファエラの元には少しずつゴーレムの材料や文献などが大分集まってきていた。店で購入できる材料もあったし、入手し難い材料は薬品づくりでも使う物がほとんどだったので、元から手元にあったのだ。
 店の方も、初日よりは集客は落ち着き始めたものの意外と客足は引かず、その3の手伝いにとても助かっている状態だった。

 しかし。

「ん、今日も遅いのかな」

 用意された食事を食べながら、ラファエラは呟く。
 本格的にフォラクスの屋敷への同棲を始めて数日経つが、彼と顔を合わせる機会がめっきりと減っていたのだ。

「というか、新年度になってから一度も顔を合わせてない」

が、ラファエラはフォラクスの顔を見ていない。

 フォラクスの仕事である『宮廷魔術師』という職業が一体どれほど大事でどのくらい大変なのかなど、ラファエラには全く分からない。
 ただ『国のために魔術の研究を行い、国の儀式に参加している』というような、一般的な知識程度、調べたら分かる程度にしか知らないのだ。

「(それに、『大変』だとしても……かなり真っ黒なお仕事なんだろうなぁ)」

 魔力の性質の問題でラファエラは宮廷魔術師にはなれないのだが、仮に性質の問題が解決したとしても彼の様子を見ていれば、なりたいとは到底思えなかった。

「(……というか、式神の方をお仕事に持っていけばいいのに)」

 使用済みの食器を片付けていく式神達を眺めながら、小さく息を吐く。
 中々会えない状態が続いていたけれど、なんとなく寂しくはなかった。ところどころに、彼がそこに居たであろう魔力の痕跡を見つけられたからだ。

×

 そして、1週間ぶっ続けで開いていた開店記念が終わった。思った以上に商品達が売れたので、新しく補充をする必要があるだろう。明日は店が休みの日なので、その時に商品の補充もしようと決めた。

 「ふー、とっても助かったよ。お手伝いありがと!」

 店を閉めた後、ラファエラはその3ことプルフラスに給料を手渡した。きちんと、1週間休みなく働いてくれた分がきっちりと詰まっている。

「こっちこそ、雇ってくれてありがとう。それに、お礼なんていいよ。前も言ったでしょ、『僕は君を助けたい』って。僕もとっても楽しかったよ」

 嬉しそうにはにかみ、プルフラスは給料を受け取った。

「旅に出るんだったよね」

ラファエラはプルフラスに問いかける。

「うん。魔術アカデミーで同室だった子と二人で、色々な国や世界を見に行くんだ」

 それがどうしたの、と首を傾げたプルフラスに

「これ、あげるね」

と、小さな皮の袋を二つ渡した。手の平に簡単に収まるほどに小さくて、口が縛ってある。

「これは?」

「お守り。おばあちゃんが旅人向けのお守り作ってたの。それ思い出しながらだから、ちょっと効果薄いかもだけど」

 不思議そうな様子のプルフラスにラファエラは答える。皮の素材そのままの色な袋の中身は、石や薬草らしい。

「命を守るってほど強いものじゃないけど、旅路が良いものでありますように、みたいな効果のやつ」

随分と曖昧な言いようだが、ラファエラなりに考えて作ったものだ。

「もう一人の方にも渡しておいてねー」

「……うん、ありがとう。ちゃんとユウキにも渡しておくよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活

しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。 新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。 二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。 ところが。 ◆市場に行けばついてくる ◆荷物は全部持ちたがる ◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる ◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる ……どう見ても、干渉しまくり。 「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」 「……君のことを、放っておけない」 距離はゆっくり縮まり、 優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。 そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。 “冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え―― 「二度と妻を侮辱するな」 守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、 いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...