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第四話 過去との決別
第四話 三
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「さ、触らないで!」
恐怖と嫌悪感に、美桜は反射的にその手を振り払った。同時に胸元のお守りが熱をもち、戸塚の手にばちりと雷を落とす。
「ぐ……っ」
小さく呻く戸塚の右手は火傷を負っていた。彼は憎々しげに顔を歪めると舌を打つ。
「渡良瀬紫苑……。あいつめ、小賢しい真似を……!」
戸塚が吐き捨てる一方で、美桜は己を奮い立たせた。
(紫苑が守ってくれているのだから、私がここで諦めるわけにはいかないわ)
ここで怯えて戸塚に従ってはならない。幸せを奪われたくないのなら自分が抵抗しろ。
美桜の心境など露知らず、戸塚は苛立たしげに呪符を取り出すと、美桜に向けて容赦なく放った。
「傀儡従属、急々如律令!」
美桜は足元に転がったままの短刀を素早く拾い上げると、そのまま流れるようにして呪符を切り裂いた。
「お前までわたしに逆らうのか、夜桜!」
正直に言えば今も怖くてたまらない。だけれど、紫苑と引き離され、以前のように戸塚の言いなりになって望まない生き方をする方がずっと怖い。
美桜は赤い瞳を細め、きっと鋭く戸塚を睨んだ。
「私は絶対にあなたの下に降らない!」
美桜のその一言に、戸塚は顔を真っ赤にして逆上すると怒鳴って風雅を呼びつけた。
「風雅、夜桜を捕まえろ! 殺さなければどんな手を使っても構わない!」
それまで静観していた風雅の顔にじわりと不気味な笑みが広がる。
「主様の仰せのまま、にっ!」
風雅は新しい短刀を懐から取り出すと、躊躇なく美桜に斬りかかった。町で遭ったときには手加減をしていたのだろう。今の風雅の容赦ない攻撃はあまりに速く、一撃が重い。並みの妖なら見切るのが難しいが、美桜だけは別で、風雅の攻撃を確実に受け止め、いなし、距離をとるべく牽制するように短刀を振るって応戦する。
美桜が冷静に対処する一方で、快楽主義の気がある風雅は愉しげに笑っていた。
「やっぱりお前とは戦い甲斐があるなぁ! 平和ぼけしてる『美桜』よりもこっちの方が似合いだと思うぜ、『夜桜』」
「煩いわ」
美桜は冷たく言い捨てると攻撃速度を上げた。無駄口を叩く暇があるのならさっさと風雅を伸して、戸塚に無駄だと分からせてこの戦いを終わりにしてしまいたい。そうしてあたたかで優しい日常に帰るのだ。
大の男相手に美桜が後れを取ることはなく、着実に風雅を圧していく。
(今!)
美桜は時機を見計らって風雅の懐に飛び込むと短刀を下から上へと切り上げた。相手を殺すのではなくあくまで戦意を喪失させるため、手元が狂わないように細心の注意を払いながら、けれども目にも止まらぬ速さで短刀を振り抜く。
風雅が目を見開いたときには既に遅く、刃先が風雅の胸を掠めて……。
恐怖と嫌悪感に、美桜は反射的にその手を振り払った。同時に胸元のお守りが熱をもち、戸塚の手にばちりと雷を落とす。
「ぐ……っ」
小さく呻く戸塚の右手は火傷を負っていた。彼は憎々しげに顔を歪めると舌を打つ。
「渡良瀬紫苑……。あいつめ、小賢しい真似を……!」
戸塚が吐き捨てる一方で、美桜は己を奮い立たせた。
(紫苑が守ってくれているのだから、私がここで諦めるわけにはいかないわ)
ここで怯えて戸塚に従ってはならない。幸せを奪われたくないのなら自分が抵抗しろ。
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「傀儡従属、急々如律令!」
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「お前までわたしに逆らうのか、夜桜!」
正直に言えば今も怖くてたまらない。だけれど、紫苑と引き離され、以前のように戸塚の言いなりになって望まない生き方をする方がずっと怖い。
美桜は赤い瞳を細め、きっと鋭く戸塚を睨んだ。
「私は絶対にあなたの下に降らない!」
美桜のその一言に、戸塚は顔を真っ赤にして逆上すると怒鳴って風雅を呼びつけた。
「風雅、夜桜を捕まえろ! 殺さなければどんな手を使っても構わない!」
それまで静観していた風雅の顔にじわりと不気味な笑みが広がる。
「主様の仰せのまま、にっ!」
風雅は新しい短刀を懐から取り出すと、躊躇なく美桜に斬りかかった。町で遭ったときには手加減をしていたのだろう。今の風雅の容赦ない攻撃はあまりに速く、一撃が重い。並みの妖なら見切るのが難しいが、美桜だけは別で、風雅の攻撃を確実に受け止め、いなし、距離をとるべく牽制するように短刀を振るって応戦する。
美桜が冷静に対処する一方で、快楽主義の気がある風雅は愉しげに笑っていた。
「やっぱりお前とは戦い甲斐があるなぁ! 平和ぼけしてる『美桜』よりもこっちの方が似合いだと思うぜ、『夜桜』」
「煩いわ」
美桜は冷たく言い捨てると攻撃速度を上げた。無駄口を叩く暇があるのならさっさと風雅を伸して、戸塚に無駄だと分からせてこの戦いを終わりにしてしまいたい。そうしてあたたかで優しい日常に帰るのだ。
大の男相手に美桜が後れを取ることはなく、着実に風雅を圧していく。
(今!)
美桜は時機を見計らって風雅の懐に飛び込むと短刀を下から上へと切り上げた。相手を殺すのではなくあくまで戦意を喪失させるため、手元が狂わないように細心の注意を払いながら、けれども目にも止まらぬ速さで短刀を振り抜く。
風雅が目を見開いたときには既に遅く、刃先が風雅の胸を掠めて……。
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