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第四話 過去との決別
第四話 一〇
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結界の向こう側に佇む純子と視線がぶつかる。その瞬間、二人は同時に地面を蹴った。
純子が鋭い爪を繰り出す。美桜は宙で身を捩ると純子の背後に回り短刀を振るったが、純子は振り向きざま美桜の刃をその爪で弾いた。互いに勢いをつけたまま後退し、着地する。そして一息後に、再度短刀と爪が交わった。純子は短刀を受けていない方の手を美桜に向かって伸ばしたが、美桜は軌道を読んで無駄のない動きでその攻撃をかわす。
互いに傷を負うこともなく、相手に致命傷を与えるでもない。今時点の力量は互角だった。
「ふふっ、さすが美桜さんですわね」
切り結びながら、妖しく微笑む純子を美桜は鋭く睨んだ。
「戸塚はどこ?」
「さて、どちらでしょうね?」
純子は柔らかな微笑を浮かべるが、すっと細められた目はぞっとするほど冷たかった。その仕草に美桜は、純子が戸塚の居場所を知っていることを確信する。
「とぼけないで」
美桜が詰問しても、純子は取り合おうとしなかった。答えの代わりに嘲笑した純子は攻撃速度をあげた。美桜もまたそれに応じるしかない。
二人の戦いには隙がなく、紫苑であっても介入は難しかった。
「どうするの、紫苑」
「……」
美桜の姿を視界から外さないように注意しながら、紫苑はしばし考え込んでおもむろに動き出した。楓は突然紫苑が動き出したことを訝しんでいたが、紫苑が地面に描く図を見て合点がいったようだった。
「六壬式盤? ……ああ、もしかして」
「うん。この状況で美桜に関わるのはかえって足手まといになる。だったらできることをするまで。……戸塚の居場所を、占う」
紫苑は地面に六壬式盤を描き終えると、次いで咒言を唱えた。
その間、何合目かも数えきれないほどに打ち合っていた美桜と純子はともに呼吸を乱し、肩で息をしていた。それでも純子が襲い来るものだから、美桜も必死に対応する。
おそらく純子は美桜を殺さずに捕らえるよう戸塚に命令されていることだろう。美桜は美桜で純子を殺したくはないと思っている。そんな互いの思惑が戦いを長引かせていた。
しかし、このままではらちが明かない。
だから美桜は心を決めた。賭けにはなるが、この状況なら可能性はあると信じて。
美桜はほとんど殺す気で、純子に飛びかかった。
急に発された殺気を感じ取った純子は一瞬怯んだように目を見開き、瞬きの間だけ動きを止めた。だが、すぐに反撃に転じようとする。
美桜の狙い通りだった。
「ふっ!」
純子の動きを反撃するところまで予想して、一瞬の隙を突いて美桜は短刀を突き出した。刃は純子の脇腹を切りつけ、血が衣に滲み出した。
致命傷ではないが、決して軽くはない傷に、純子は呻いて膝をつく。
「悪く思わないで」
美桜は躊躇いを捨て、純子の首に手刀を叩き込んだ。意識を刈り取られた純子はどさりと地面に倒れた。
美桜は動かない純子をじっと見下ろしてから、深く息を吐いた。
もし純子が反撃しようとしなかったら彼女を殺すところだった。純子の考えが読めるわけではないが、それでも彼女の行動の癖は知っていたからこそなんとかなった。
純子が鋭い爪を繰り出す。美桜は宙で身を捩ると純子の背後に回り短刀を振るったが、純子は振り向きざま美桜の刃をその爪で弾いた。互いに勢いをつけたまま後退し、着地する。そして一息後に、再度短刀と爪が交わった。純子は短刀を受けていない方の手を美桜に向かって伸ばしたが、美桜は軌道を読んで無駄のない動きでその攻撃をかわす。
互いに傷を負うこともなく、相手に致命傷を与えるでもない。今時点の力量は互角だった。
「ふふっ、さすが美桜さんですわね」
切り結びながら、妖しく微笑む純子を美桜は鋭く睨んだ。
「戸塚はどこ?」
「さて、どちらでしょうね?」
純子は柔らかな微笑を浮かべるが、すっと細められた目はぞっとするほど冷たかった。その仕草に美桜は、純子が戸塚の居場所を知っていることを確信する。
「とぼけないで」
美桜が詰問しても、純子は取り合おうとしなかった。答えの代わりに嘲笑した純子は攻撃速度をあげた。美桜もまたそれに応じるしかない。
二人の戦いには隙がなく、紫苑であっても介入は難しかった。
「どうするの、紫苑」
「……」
美桜の姿を視界から外さないように注意しながら、紫苑はしばし考え込んでおもむろに動き出した。楓は突然紫苑が動き出したことを訝しんでいたが、紫苑が地面に描く図を見て合点がいったようだった。
「六壬式盤? ……ああ、もしかして」
「うん。この状況で美桜に関わるのはかえって足手まといになる。だったらできることをするまで。……戸塚の居場所を、占う」
紫苑は地面に六壬式盤を描き終えると、次いで咒言を唱えた。
その間、何合目かも数えきれないほどに打ち合っていた美桜と純子はともに呼吸を乱し、肩で息をしていた。それでも純子が襲い来るものだから、美桜も必死に対応する。
おそらく純子は美桜を殺さずに捕らえるよう戸塚に命令されていることだろう。美桜は美桜で純子を殺したくはないと思っている。そんな互いの思惑が戦いを長引かせていた。
しかし、このままではらちが明かない。
だから美桜は心を決めた。賭けにはなるが、この状況なら可能性はあると信じて。
美桜はほとんど殺す気で、純子に飛びかかった。
急に発された殺気を感じ取った純子は一瞬怯んだように目を見開き、瞬きの間だけ動きを止めた。だが、すぐに反撃に転じようとする。
美桜の狙い通りだった。
「ふっ!」
純子の動きを反撃するところまで予想して、一瞬の隙を突いて美桜は短刀を突き出した。刃は純子の脇腹を切りつけ、血が衣に滲み出した。
致命傷ではないが、決して軽くはない傷に、純子は呻いて膝をつく。
「悪く思わないで」
美桜は躊躇いを捨て、純子の首に手刀を叩き込んだ。意識を刈り取られた純子はどさりと地面に倒れた。
美桜は動かない純子をじっと見下ろしてから、深く息を吐いた。
もし純子が反撃しようとしなかったら彼女を殺すところだった。純子の考えが読めるわけではないが、それでも彼女の行動の癖は知っていたからこそなんとかなった。
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