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第六話 幸せはいつもそばに
第六話 一五
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「さて、最後は黄麟様のお社だね」
最後は中央御殿の中にあるお社だ。普段は関係者以外立ち入れないが、三が日の間は一般向けに外門だけ開放されている。裏庭は広く立派で、一面に黄色の玉砂利が敷かれている。また、松の木が植えられ、池には鯉が泳ぎ、朱塗りの小さな橋が架かっている。その奥に黄色のお社は設えられていた。
他とは違い、人はたくさんいるもののどこか厳粛な空気が漂うそこで、あかりは黄麟の加護と陽の国の民に祝福があるよう祈った。
初詣が終わるとすっかり日が暮れてしまった。冬の日が暮れるのは早く、辺りはすっぽりと闇に包まれている。
中央御殿の外門を出ると、屋台の灯りが列のように連なり、玄舞大路を華やかに飾っていた。普段なら油を節約するところだが、正月は別だ。人々の笑顔が照る灯りの下にうかがえ、笑い声もあちこちから聞こえた。
「いいなあ」
あかりは独り言をこぼした。毎年のことだが、元日には四家と黄麟家合同の夕食会が予定されている。そのため、あかりたちが夜の元日の屋台を見て回ったことはない。屋台は三が日の間出ているが、一番盛り上がるのは睦月一日だと言われていたのであかりは幼少時からずっと気になっていたのだ。
耳ざとくあかりの呟きを拾った結月たちは、三人で顔を見合わせると頷きあった。
「あかり、夜の屋台、行きたいんだよね」
「昔っから行きたい行きたいって言ってたもんな」
「そ、それはそうだけど……」
でも夕食会の時間を考えると、と続けようとしたが、昴に微笑みとともに制された。
「夕食会のことならまだ時間はあるし大丈夫だよ。ただ、僕は早めに御上様に挨拶しなきゃだから一緒に行ってあげられないけど」
「俺も親父に呼ばれてるから行けねーけど、ゆづがいりゃ平気だろ」
突然の話にあかりは「いいの……?」としか答えられなかった。結月がはっきりと頷く。
「半刻しかないけど、それでもよければ」
だんだんと現実を理解してくるにつれ、あかりの顔に笑顔の花が咲いていった。
「うん! ありがとう!」
「それじゃあ、半刻後」と言う秋之介と昴と別れて、あかりと結月は夜の町へ繰り出した。
最後は中央御殿の中にあるお社だ。普段は関係者以外立ち入れないが、三が日の間は一般向けに外門だけ開放されている。裏庭は広く立派で、一面に黄色の玉砂利が敷かれている。また、松の木が植えられ、池には鯉が泳ぎ、朱塗りの小さな橋が架かっている。その奥に黄色のお社は設えられていた。
他とは違い、人はたくさんいるもののどこか厳粛な空気が漂うそこで、あかりは黄麟の加護と陽の国の民に祝福があるよう祈った。
初詣が終わるとすっかり日が暮れてしまった。冬の日が暮れるのは早く、辺りはすっぽりと闇に包まれている。
中央御殿の外門を出ると、屋台の灯りが列のように連なり、玄舞大路を華やかに飾っていた。普段なら油を節約するところだが、正月は別だ。人々の笑顔が照る灯りの下にうかがえ、笑い声もあちこちから聞こえた。
「いいなあ」
あかりは独り言をこぼした。毎年のことだが、元日には四家と黄麟家合同の夕食会が予定されている。そのため、あかりたちが夜の元日の屋台を見て回ったことはない。屋台は三が日の間出ているが、一番盛り上がるのは睦月一日だと言われていたのであかりは幼少時からずっと気になっていたのだ。
耳ざとくあかりの呟きを拾った結月たちは、三人で顔を見合わせると頷きあった。
「あかり、夜の屋台、行きたいんだよね」
「昔っから行きたい行きたいって言ってたもんな」
「そ、それはそうだけど……」
でも夕食会の時間を考えると、と続けようとしたが、昴に微笑みとともに制された。
「夕食会のことならまだ時間はあるし大丈夫だよ。ただ、僕は早めに御上様に挨拶しなきゃだから一緒に行ってあげられないけど」
「俺も親父に呼ばれてるから行けねーけど、ゆづがいりゃ平気だろ」
突然の話にあかりは「いいの……?」としか答えられなかった。結月がはっきりと頷く。
「半刻しかないけど、それでもよければ」
だんだんと現実を理解してくるにつれ、あかりの顔に笑顔の花が咲いていった。
「うん! ありがとう!」
「それじゃあ、半刻後」と言う秋之介と昴と別れて、あかりと結月は夜の町へ繰り出した。
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