130 / 390
第一〇話 夢幻のような
第一〇話 一〇
しおりを挟む
目的の甘味処は玄舞大路に面している。あかりたちはそのまま南下していった。
小腹は空いていたものの通りに並び立つ店をのぞく余裕はあったので、あかりは気になる店の軒先でときどき立ち止まっては商品を眺めた。
「あっ、これ、きれい!」
あかりが手に取ったのは透き通った青いガラス玉だった。よく見るとガラス玉の中には小さな気泡が浮いている。
隣にいた結月が意外そうに目を丸くした。
「あかりが、赤以外の物を選ぶなんて、珍しい」
あかりは結月に向かって青いガラス玉をかざすと、いたずらっぽく笑って見せた。
「これはまた別なの。ほら、結月の目とよく似てる」
「え?」
濁りなく澄んでいて透明感に溢れている青い玉は、まるで結月の瞳のようだった。
あかりは親指と人差し指でつまんだガラス玉をあらゆる角度から眺めた。外から差し込む光を受けてガラス玉は僅かに風合いを変える。それもまた口よりもずっと雄弁な結月の瞳のようだとあかりは思った。
「うん、でも……」
あかりは満足いくまでガラス玉を観察した後、本物の青い瞳に目を移した。
「こっちの方が断然好きだな」
そうして無邪気に笑った。
ガラス玉は確かに美しいが、結月の瞳には敵わない。様々な感情を乗せて色味を変える青は、あかりにとって特別で、大好きな青だった。
そんな青は今、驚きと惑い、そして最近よく見かけるようになった熱っぽさを湛えていた。涼やかなはずの青を『熱い』と感じるなんておかしな話だと思うが、あかりはどうしてだかその熱さに魅入られたように目を離せずにいた。
先に目を逸らしたのは結月の方だった。
「あの、あかり……」
その弱ったような声にあかりは、はっと我に返って慌てて視線を外した。
「ご、ごめんね! つい……!」
お花見のとき然り、最近は結月を見ると妙に調子が狂うと思う。同じ幼なじみの秋之介や昴を見てもこんなことにはならないのに、一体どうしたというのだろう。
(まさか、何かの術とかじゃないよね……?)
結月にかけられたあかりにしか効かない術か、あかりにかけられた結月をきっかけとする術か。
いま一度確かめようと、あかりは顔を上げるとじっと結月の目を見つめた。
「……」
「どうしたの、あかり?」
見つめた瞳は、今度は当惑一色の青色をしていた。
あかりの方も特に先ほどのような変化はなく、術らしき気配も感じなかった。
「うーん、気のせいだったのかな……?」
「?」
首を傾げるあかりにつられたように結月も向かいで首を傾げていると、店の奥の方を見ていた秋之介と昴が戻って来た。
「なにしてんだ?」
「にらめっこでもしてたの?」
「……ううん、なんでもない」
きっと思い過ごしだと結論付けて、あかりは持ちっぱなしだった青いガラス玉を元の場所に戻した。
小腹は空いていたものの通りに並び立つ店をのぞく余裕はあったので、あかりは気になる店の軒先でときどき立ち止まっては商品を眺めた。
「あっ、これ、きれい!」
あかりが手に取ったのは透き通った青いガラス玉だった。よく見るとガラス玉の中には小さな気泡が浮いている。
隣にいた結月が意外そうに目を丸くした。
「あかりが、赤以外の物を選ぶなんて、珍しい」
あかりは結月に向かって青いガラス玉をかざすと、いたずらっぽく笑って見せた。
「これはまた別なの。ほら、結月の目とよく似てる」
「え?」
濁りなく澄んでいて透明感に溢れている青い玉は、まるで結月の瞳のようだった。
あかりは親指と人差し指でつまんだガラス玉をあらゆる角度から眺めた。外から差し込む光を受けてガラス玉は僅かに風合いを変える。それもまた口よりもずっと雄弁な結月の瞳のようだとあかりは思った。
「うん、でも……」
あかりは満足いくまでガラス玉を観察した後、本物の青い瞳に目を移した。
「こっちの方が断然好きだな」
そうして無邪気に笑った。
ガラス玉は確かに美しいが、結月の瞳には敵わない。様々な感情を乗せて色味を変える青は、あかりにとって特別で、大好きな青だった。
そんな青は今、驚きと惑い、そして最近よく見かけるようになった熱っぽさを湛えていた。涼やかなはずの青を『熱い』と感じるなんておかしな話だと思うが、あかりはどうしてだかその熱さに魅入られたように目を離せずにいた。
先に目を逸らしたのは結月の方だった。
「あの、あかり……」
その弱ったような声にあかりは、はっと我に返って慌てて視線を外した。
「ご、ごめんね! つい……!」
お花見のとき然り、最近は結月を見ると妙に調子が狂うと思う。同じ幼なじみの秋之介や昴を見てもこんなことにはならないのに、一体どうしたというのだろう。
(まさか、何かの術とかじゃないよね……?)
結月にかけられたあかりにしか効かない術か、あかりにかけられた結月をきっかけとする術か。
いま一度確かめようと、あかりは顔を上げるとじっと結月の目を見つめた。
「……」
「どうしたの、あかり?」
見つめた瞳は、今度は当惑一色の青色をしていた。
あかりの方も特に先ほどのような変化はなく、術らしき気配も感じなかった。
「うーん、気のせいだったのかな……?」
「?」
首を傾げるあかりにつられたように結月も向かいで首を傾げていると、店の奥の方を見ていた秋之介と昴が戻って来た。
「なにしてんだ?」
「にらめっこでもしてたの?」
「……ううん、なんでもない」
きっと思い過ごしだと結論付けて、あかりは持ちっぱなしだった青いガラス玉を元の場所に戻した。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
退屈令嬢のフィクサーな日々
ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。
直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。
《完結》悪役聖女
ヴァンドール
ファンタジー
聖女になり、王妃となるため十年間も教育を受けて来たのに蓋を開ければ妹が聖女の力を持っていて私はには聖女の力が無かった。そのため祖国を追放されて隣国へと旅立ったがそこで……
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる