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第一〇話 夢幻のような
第一〇話 一一
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そこからは真っ直ぐ目的の甘味処に向かった。あかりのお腹の空き具合もいよいよ限界だったからだ。
「皆様、いらっしゃいませ! あかり様、お誕生日おめでとうございます!」
店内は客で賑わっており従業員は忙しそうにしていたが、順番を待ってあかりたちが暖簾をくぐると店主の武蔵が直々に出迎えてくれた。
「ありがとう、武蔵さん」
あかりが応えると、自然と店内の客や従業員から拍手があがった。「おめでとうございます」「おめでとう」という声もあちこちから聞こえる。
「ご注文はお決まりですか?」
「白玉あんみつ、果物とあんこ増し増しで! 結月たちは?」
「おれは、草団子のあんこなし」
「じゃあ俺は磯辺焼きにしよっかな」
「僕はみたらし団子で」
「承りました!」
武蔵は意気揚々と厨房に戻っていった。
あかりたちは空いた席に座りながら、注文した料理が運ばれてくるのを待つ。あかりのはす向かいの席から秋之介が呆れた視線を寄越した。
「それにしても午前中からよく食えるよな」
「ここのあんみつ美味しいんだもん。それに秋だってお餅を頼んだじゃない。人のこといえなくない?」
「量じゃなくて、よく甘いもんばっか食えるよなって話だよ。俺だったら胸焼け起こしそう」
「やだなぁ。年じゃないの?」
「あかりとは三つしか違わねぇよ!」
周囲からくすくすと笑い声があがる。打てば響く幼なじみの会話を、皆微笑ましく思っているのだった。こういうとき、あかりは町の皆から愛されていると感じる。そしてそんな人たちだからこそ守りたいと思うのだ。
「はいはい。お店の中なんだからあんまり騒がしくしないの」
昴の一言で仕切り直す。
「このあとも時間あるけど、あかりちゃん、行きたいところは?」
あかりは指折り数えながら、気になっているお店を列挙した。
「まだまだあるよ! 小間物屋さんに駄菓子屋さんでしょ。反物屋さんものぞきたいな。あとね、お昼ご飯は静香さんのところがいいなーって」
「ちらし寿司のおいなりさん?」
隣に座る結月が言うのへ、あかりは「そう」と頷き返した。
「あそこのおいなりさん、美味しいし、見た目もかわいいし」
金平糖や和菓子、果物などあかりは特に甘い物が好きだが、基本的に好き嫌いはしない質だ。食べ物であればなんでもよく食べるし、食べることが好きだった。甘い物以外に好きな食べ物といえば、天狐である父の影響でいなり寿司が真っ先にあがる。中でも妖狐の静香が作るいなり寿司は絶品だった。
結月たちもあかりの好物は知っていたので、すぐに思い当たって、納得しては頷いていた。
このあとの予定を話し合っていると、注文の料理が運ばれてきた。
「お待たせしました!」
「わあ、かわいい!」
あかりが頼んだ白玉あんみつはいつものものとは違って、白玉やあんこ、果物がうさぎの顔になるように配置されていた。
「お誕生日なんでね。特別仕様ですよ」
にっかり笑う武蔵に、あかりは満面の笑みでお礼を言った。
「ありがとう!」
「いえいえ。ごゆっくり」
結月たちの注文の品もそれぞれの前に置くと、武蔵は慌ただしく厨房に戻っていった。客入りからも予想がつくが、繁盛しているようだ。
「いただきますっ」
食べるのはやや躊躇われたが、食欲には勝てない。あかりはまず白玉を口にした。
「うん、美味しい!」
手作りの白玉は弾力があり、ほのかに甘い。あかりは幸せそうに微笑んだ。
正面に座る昴と目が合った。昴はふふっと小さく笑った。
「どうしたの?」
「うん? 飽きないなーって」
自分の食べる姿が幸せそうだと嬉しくなるとはよく言われていたので、多分そのことだろう。
昴の隣を見ると秋之介にしては珍しく優しい兄の目をしていたし、自身の左隣を見れば結月は慈しむような視線をあかりに注いでいた。
注目されていると思うと気恥ずかしくなって、あかりは食べることに集中することにした。あんみつは変わらず美味しくて、そのうち気恥ずかしさは消え、代わりに幸福があかりの胸を満たした。
「皆様、いらっしゃいませ! あかり様、お誕生日おめでとうございます!」
店内は客で賑わっており従業員は忙しそうにしていたが、順番を待ってあかりたちが暖簾をくぐると店主の武蔵が直々に出迎えてくれた。
「ありがとう、武蔵さん」
あかりが応えると、自然と店内の客や従業員から拍手があがった。「おめでとうございます」「おめでとう」という声もあちこちから聞こえる。
「ご注文はお決まりですか?」
「白玉あんみつ、果物とあんこ増し増しで! 結月たちは?」
「おれは、草団子のあんこなし」
「じゃあ俺は磯辺焼きにしよっかな」
「僕はみたらし団子で」
「承りました!」
武蔵は意気揚々と厨房に戻っていった。
あかりたちは空いた席に座りながら、注文した料理が運ばれてくるのを待つ。あかりのはす向かいの席から秋之介が呆れた視線を寄越した。
「それにしても午前中からよく食えるよな」
「ここのあんみつ美味しいんだもん。それに秋だってお餅を頼んだじゃない。人のこといえなくない?」
「量じゃなくて、よく甘いもんばっか食えるよなって話だよ。俺だったら胸焼け起こしそう」
「やだなぁ。年じゃないの?」
「あかりとは三つしか違わねぇよ!」
周囲からくすくすと笑い声があがる。打てば響く幼なじみの会話を、皆微笑ましく思っているのだった。こういうとき、あかりは町の皆から愛されていると感じる。そしてそんな人たちだからこそ守りたいと思うのだ。
「はいはい。お店の中なんだからあんまり騒がしくしないの」
昴の一言で仕切り直す。
「このあとも時間あるけど、あかりちゃん、行きたいところは?」
あかりは指折り数えながら、気になっているお店を列挙した。
「まだまだあるよ! 小間物屋さんに駄菓子屋さんでしょ。反物屋さんものぞきたいな。あとね、お昼ご飯は静香さんのところがいいなーって」
「ちらし寿司のおいなりさん?」
隣に座る結月が言うのへ、あかりは「そう」と頷き返した。
「あそこのおいなりさん、美味しいし、見た目もかわいいし」
金平糖や和菓子、果物などあかりは特に甘い物が好きだが、基本的に好き嫌いはしない質だ。食べ物であればなんでもよく食べるし、食べることが好きだった。甘い物以外に好きな食べ物といえば、天狐である父の影響でいなり寿司が真っ先にあがる。中でも妖狐の静香が作るいなり寿司は絶品だった。
結月たちもあかりの好物は知っていたので、すぐに思い当たって、納得しては頷いていた。
このあとの予定を話し合っていると、注文の料理が運ばれてきた。
「お待たせしました!」
「わあ、かわいい!」
あかりが頼んだ白玉あんみつはいつものものとは違って、白玉やあんこ、果物がうさぎの顔になるように配置されていた。
「お誕生日なんでね。特別仕様ですよ」
にっかり笑う武蔵に、あかりは満面の笑みでお礼を言った。
「ありがとう!」
「いえいえ。ごゆっくり」
結月たちの注文の品もそれぞれの前に置くと、武蔵は慌ただしく厨房に戻っていった。客入りからも予想がつくが、繁盛しているようだ。
「いただきますっ」
食べるのはやや躊躇われたが、食欲には勝てない。あかりはまず白玉を口にした。
「うん、美味しい!」
手作りの白玉は弾力があり、ほのかに甘い。あかりは幸せそうに微笑んだ。
正面に座る昴と目が合った。昴はふふっと小さく笑った。
「どうしたの?」
「うん? 飽きないなーって」
自分の食べる姿が幸せそうだと嬉しくなるとはよく言われていたので、多分そのことだろう。
昴の隣を見ると秋之介にしては珍しく優しい兄の目をしていたし、自身の左隣を見れば結月は慈しむような視線をあかりに注いでいた。
注目されていると思うと気恥ずかしくなって、あかりは食べることに集中することにした。あんみつは変わらず美味しくて、そのうち気恥ずかしさは消え、代わりに幸福があかりの胸を満たした。
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