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第一〇話 夢幻のような
第一〇話 一三
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「そろそろ午の刻を過ぎる頃合いかな。あかりちゃん、もう食べられる?」
ここまで歩いて移動していたのがいい運動になった。あかりは大きく頷いた。
「もちろん! 静香さんの料理屋さんは西の地だったよね」
四人そぞろ歩いて、玄舞大路から玄舞通に移り、さらに南下して北斗通に出た。白古大路から一本南に入った小路に、その料理屋はひっそりと佇んでいた。
「静香さん、こんにちは!」
「あら、あかり様。いらっしゃいませ。それからお誕生日おめでとうございます」
「ありがとう!」
静香は穏やかに微笑んで、あかりたちを空いている席に通してくれた。武蔵の甘味処ほどではないが、ここも大体の席が埋まっていた。
頼むものはすでに決まっていた。あかりは梅御膳、結月と昴は竹御膳、秋之介は松御膳を注文した。
しばらく待っていると料理が運ばれてきた。
あかりが頼んだ梅御膳は味のよく染みた油揚げの中に彩り豊かなちらし寿司が詰まったいなり寿司と、お吸い物に小鉢もついたお膳だった。七夕に因んだのか、それともあかりの誕生日を記念してかいなり寿司にのった星形のきゅうりが可愛らしい。
結月たちの御膳も基本的には料理は同じで、いなり寿司の数が多いか少ないかの違いだった。
皆に料理が行き渡ったことを確認して、あかりはぱちりと手を合わせた。
「いただきますっ」
「いただきます」
あかりに続いて、三人も声をそろえて手を合わせる。
見た目にも楽しいいなり寿司は、味ももちろん美味しい。あかりはにこにこと上機嫌でいなり寿司を頬張った。
噛むと油揚げに染みたほどよい甘さの煮汁がじゅわっと口中に広がる。酢飯はふっくらとしていて米の甘さも感じられ、きゅうりや金糸卵などの様々な具材の食感も楽しめた。
夢中になって食べていたあかりだったが、昴に呼びかけられて意識をそちらに向けた。
「あとは小間物屋さんと反物屋さんだったよね。それって東の地の?」
「うん。よく行ってるお店がいいな」
昴はこくりと頷いた。
「そうしたら、このあとは東の地に向かおうか。夕方頃には邸に戻れそうだし、ちょうどいいかもね」
「わかった」
その後も雑談を交えながら昼食の時間を楽しんだ。そして話してあった通り、食べ終わった後は東の地へと歩を進めた。
ここまで歩いて移動していたのがいい運動になった。あかりは大きく頷いた。
「もちろん! 静香さんの料理屋さんは西の地だったよね」
四人そぞろ歩いて、玄舞大路から玄舞通に移り、さらに南下して北斗通に出た。白古大路から一本南に入った小路に、その料理屋はひっそりと佇んでいた。
「静香さん、こんにちは!」
「あら、あかり様。いらっしゃいませ。それからお誕生日おめでとうございます」
「ありがとう!」
静香は穏やかに微笑んで、あかりたちを空いている席に通してくれた。武蔵の甘味処ほどではないが、ここも大体の席が埋まっていた。
頼むものはすでに決まっていた。あかりは梅御膳、結月と昴は竹御膳、秋之介は松御膳を注文した。
しばらく待っていると料理が運ばれてきた。
あかりが頼んだ梅御膳は味のよく染みた油揚げの中に彩り豊かなちらし寿司が詰まったいなり寿司と、お吸い物に小鉢もついたお膳だった。七夕に因んだのか、それともあかりの誕生日を記念してかいなり寿司にのった星形のきゅうりが可愛らしい。
結月たちの御膳も基本的には料理は同じで、いなり寿司の数が多いか少ないかの違いだった。
皆に料理が行き渡ったことを確認して、あかりはぱちりと手を合わせた。
「いただきますっ」
「いただきます」
あかりに続いて、三人も声をそろえて手を合わせる。
見た目にも楽しいいなり寿司は、味ももちろん美味しい。あかりはにこにこと上機嫌でいなり寿司を頬張った。
噛むと油揚げに染みたほどよい甘さの煮汁がじゅわっと口中に広がる。酢飯はふっくらとしていて米の甘さも感じられ、きゅうりや金糸卵などの様々な具材の食感も楽しめた。
夢中になって食べていたあかりだったが、昴に呼びかけられて意識をそちらに向けた。
「あとは小間物屋さんと反物屋さんだったよね。それって東の地の?」
「うん。よく行ってるお店がいいな」
昴はこくりと頷いた。
「そうしたら、このあとは東の地に向かおうか。夕方頃には邸に戻れそうだし、ちょうどいいかもね」
「わかった」
その後も雑談を交えながら昼食の時間を楽しんだ。そして話してあった通り、食べ終わった後は東の地へと歩を進めた。
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