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第一一話 夏のひととき
第一一話 三
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「何が食べたい?」
あかりが尋ねると小春は歩みを遅くしてきょろきょろと左右に立ち並ぶ屋台を見回した。
「えっと……あ、あれがいいな」
小春が目を留めた屋台へとあかりたちは近づいた。そこは大判焼きの屋台だった。
「いいね。お姉ちゃんも大判焼き好きなんだ」
見回りを始めてからそれなりに時間は立っていて、太陽は真上に昇っていた。小春のついでにあかりも大判焼きを買うことにした。中身はもちろんこしあんに決めていた。
「結月は? お腹空かない?」
結月が甘いものを得意としていないことは承知だが、一応訊いてみた。結月は少し考えてから頷いた。そのまま流れるように小春とあかりに何味がいいか訊くと、自身はあかりと同じこしあんを選んで注文と会計を済ませた。
さりげなさすぎてあかりの入る余地はなかった。嬉しい反面、小春に買ってあげると言った手前複雑な心境ではある。結月から大判焼きを受け取りながら、ついあかりの心の声が漏れ出る。
「ありがとう、だけど複雑だよー」
「?」
結月は不思議そうな顔をしていたから自然と出た行動だったのだろう。そうと知れればあかりは結月のことを憎むに憎めなかった。悔しまぎれにあかりは小春に「美味しい?」と尋ねた。
小春は笑顔で「うん」と答えた。小春の沈んだ気持ちもいくらか晴れたようで、あかりはさっきまでの複雑な心境も忘れて小春に笑み返した。
「小春ちゃんは白あんにしたんだよね」
「そうだよ。お姉ちゃんとお兄ちゃんは?」
「私たちはこしあんだよ」
あかりが言うと小春は目を細めた。
「お姉ちゃんとお兄ちゃんはおそろいなんだね。小春のお父さんとお母さんみたい」
それほどまでに仲良く見えるのだろう。あかりは嬉しくなって結月を振り返った。
「だってよ、結月。嬉しいね」
「……」
「結月?」
結月はぼんやりしていたのか一度目の呼びかけは聞こえていないようだった。二度目にあかりが呼びかけると結月ははっとして顔をあかりに向けたが、目が合うとすぐさま視線を逸らした。その頬はほんのり桃色をしていた。
「えっと……、そう、だね」
小春の両親のように見えるということは遠回しに夫婦のように見えるというようにも捉えられるが、それは自分の考えすぎだろうか。結月が葛藤する一方で、あかりはまったく気にも留めていないようだったが。
「小春ちゃん。次はあっちの屋台に行こう!」
「うん」
先を駆けてゆく二人を見失わないように、結月は小さく頭を振ると彼女たちのあとをついていった。
あかりが尋ねると小春は歩みを遅くしてきょろきょろと左右に立ち並ぶ屋台を見回した。
「えっと……あ、あれがいいな」
小春が目を留めた屋台へとあかりたちは近づいた。そこは大判焼きの屋台だった。
「いいね。お姉ちゃんも大判焼き好きなんだ」
見回りを始めてからそれなりに時間は立っていて、太陽は真上に昇っていた。小春のついでにあかりも大判焼きを買うことにした。中身はもちろんこしあんに決めていた。
「結月は? お腹空かない?」
結月が甘いものを得意としていないことは承知だが、一応訊いてみた。結月は少し考えてから頷いた。そのまま流れるように小春とあかりに何味がいいか訊くと、自身はあかりと同じこしあんを選んで注文と会計を済ませた。
さりげなさすぎてあかりの入る余地はなかった。嬉しい反面、小春に買ってあげると言った手前複雑な心境ではある。結月から大判焼きを受け取りながら、ついあかりの心の声が漏れ出る。
「ありがとう、だけど複雑だよー」
「?」
結月は不思議そうな顔をしていたから自然と出た行動だったのだろう。そうと知れればあかりは結月のことを憎むに憎めなかった。悔しまぎれにあかりは小春に「美味しい?」と尋ねた。
小春は笑顔で「うん」と答えた。小春の沈んだ気持ちもいくらか晴れたようで、あかりはさっきまでの複雑な心境も忘れて小春に笑み返した。
「小春ちゃんは白あんにしたんだよね」
「そうだよ。お姉ちゃんとお兄ちゃんは?」
「私たちはこしあんだよ」
あかりが言うと小春は目を細めた。
「お姉ちゃんとお兄ちゃんはおそろいなんだね。小春のお父さんとお母さんみたい」
それほどまでに仲良く見えるのだろう。あかりは嬉しくなって結月を振り返った。
「だってよ、結月。嬉しいね」
「……」
「結月?」
結月はぼんやりしていたのか一度目の呼びかけは聞こえていないようだった。二度目にあかりが呼びかけると結月ははっとして顔をあかりに向けたが、目が合うとすぐさま視線を逸らした。その頬はほんのり桃色をしていた。
「えっと……、そう、だね」
小春の両親のように見えるということは遠回しに夫婦のように見えるというようにも捉えられるが、それは自分の考えすぎだろうか。結月が葛藤する一方で、あかりはまったく気にも留めていないようだったが。
「小春ちゃん。次はあっちの屋台に行こう!」
「うん」
先を駆けてゆく二人を見失わないように、結月は小さく頭を振ると彼女たちのあとをついていった。
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