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第一二話 葉月の凶事
第一二話 九
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あかりが目覚めないまま、さらに十日ほどが経過した。
秋之介は、ほぼ毎日のように結月と玄舞家へ向かっていた。結月や昴ほど態度には出さない秋之介だったが、あかりを心配する気持ちは彼も同じだった。それにあかりを案じるあまり自身を追い詰める結月と昴のことも等しく心配していた。
今日も朝早くから修業と降霊の依頼を片付け、秋之介は結月と合流するべく東に向かって歩き出した。町にはまだ活気があることに、秋之介は安堵した。
結月はすでに集合場所で待っていた。
(やっぱ、真面目だよなぁ)
秋之介は待ち合わせ時間ぴったりに結月にもとへ辿り着いた。
「はよ、ゆづ」
「おはよう、秋」
ほとんど無表情な結月だったが、秋之介には結月が疲れていることがはっきりとわかった。
「また夜中まで何かやってただろ?」
そこまで言い当てられるとは思っていなかったのか、結月は目を見開いた。そして小声で「……うん」と頷いた。
「護符を治癒術に転用できないか、試してた」
「ってことは昴も寝不足だな。気持ちはわかるけどほどほどにな」
秋之介が結月の肩を軽く叩くと、結月は目を瞬かせて秋之介を見つめた。
「……なんだか秋、お兄さんみたい」
「みたいじゃなくて、実際ゆづより年上だからな」
「でも、いつもはもっと、子どもっぽい」
「おまえ、俺に対してだけ辛口だよな……」
秋之介は軽く息を吐くと、空を見上げた。
あかりはこうしてよく空を見上げていた。天気が良いと気分が明るくなると言って、よく笑っていた。天気ではなくどら焼きが美味しいから機嫌がいいのかと言い合った日が、まるで昨日のことのように鮮明に思い出された。それなのに現実は、あかりの笑顔が遠い。
秋之介は結月をちらと見て、顔を前に戻した。
「それにさ、今の俺にできることってこんなことしかねえしな」
「……?」
結月は不思議そうな顔をしながらも、無言で先を促した。
「昴みたいに治癒はできないし、ゆづみたいに護符も扱えない。そういう方面では、俺はあかりの力になれない」
「……」
「だから、できることをする。あかりももちろん心配だ。だけど、同じくらいゆづや昴が心配なんだよ。この役目は譲れねえ」
「秋……」
柄にもなく熱く語ってしまった。秋之介は耳まで赤く染めると、誤魔化すように結月の頭を撫で、髪をかき乱した。
「まあ、そういうことだ。おまえもあんまり無理すんなよ」
そうして秋之介は玄舞大路を踏みしめる。しばらく呆然とその場に立ち尽くしていた結月が後から追いかけてきた。
「秋は、意外と冷静、なんだね」
視線だけ後ろに流して、秋之介は「んー」とうなった。
「自分より慌ててるやつ見ると、こっちは冷静になるってよくあるじゃねえか。そういうことだと思うぜ」
「そう、なんだ。おれ、昴よりは気が動転してないつもり、だったけど……」
「そりゃまあ、そうだけどよ。でも普段のあかりへの溺愛っぷりからして、ゆづが冷静なままでいるってのは考えられねえよ」
秋之介が苦笑すると、結月は居心地悪そうに「そう……」とだけ呟いた。
話しながらの玄舞家への道のりはあっという間に感じられる。門衛に通されて、秋之介と結月はあかりの部屋へ向かった。
秋之介は、ほぼ毎日のように結月と玄舞家へ向かっていた。結月や昴ほど態度には出さない秋之介だったが、あかりを心配する気持ちは彼も同じだった。それにあかりを案じるあまり自身を追い詰める結月と昴のことも等しく心配していた。
今日も朝早くから修業と降霊の依頼を片付け、秋之介は結月と合流するべく東に向かって歩き出した。町にはまだ活気があることに、秋之介は安堵した。
結月はすでに集合場所で待っていた。
(やっぱ、真面目だよなぁ)
秋之介は待ち合わせ時間ぴったりに結月にもとへ辿り着いた。
「はよ、ゆづ」
「おはよう、秋」
ほとんど無表情な結月だったが、秋之介には結月が疲れていることがはっきりとわかった。
「また夜中まで何かやってただろ?」
そこまで言い当てられるとは思っていなかったのか、結月は目を見開いた。そして小声で「……うん」と頷いた。
「護符を治癒術に転用できないか、試してた」
「ってことは昴も寝不足だな。気持ちはわかるけどほどほどにな」
秋之介が結月の肩を軽く叩くと、結月は目を瞬かせて秋之介を見つめた。
「……なんだか秋、お兄さんみたい」
「みたいじゃなくて、実際ゆづより年上だからな」
「でも、いつもはもっと、子どもっぽい」
「おまえ、俺に対してだけ辛口だよな……」
秋之介は軽く息を吐くと、空を見上げた。
あかりはこうしてよく空を見上げていた。天気が良いと気分が明るくなると言って、よく笑っていた。天気ではなくどら焼きが美味しいから機嫌がいいのかと言い合った日が、まるで昨日のことのように鮮明に思い出された。それなのに現実は、あかりの笑顔が遠い。
秋之介は結月をちらと見て、顔を前に戻した。
「それにさ、今の俺にできることってこんなことしかねえしな」
「……?」
結月は不思議そうな顔をしながらも、無言で先を促した。
「昴みたいに治癒はできないし、ゆづみたいに護符も扱えない。そういう方面では、俺はあかりの力になれない」
「……」
「だから、できることをする。あかりももちろん心配だ。だけど、同じくらいゆづや昴が心配なんだよ。この役目は譲れねえ」
「秋……」
柄にもなく熱く語ってしまった。秋之介は耳まで赤く染めると、誤魔化すように結月の頭を撫で、髪をかき乱した。
「まあ、そういうことだ。おまえもあんまり無理すんなよ」
そうして秋之介は玄舞大路を踏みしめる。しばらく呆然とその場に立ち尽くしていた結月が後から追いかけてきた。
「秋は、意外と冷静、なんだね」
視線だけ後ろに流して、秋之介は「んー」とうなった。
「自分より慌ててるやつ見ると、こっちは冷静になるってよくあるじゃねえか。そういうことだと思うぜ」
「そう、なんだ。おれ、昴よりは気が動転してないつもり、だったけど……」
「そりゃまあ、そうだけどよ。でも普段のあかりへの溺愛っぷりからして、ゆづが冷静なままでいるってのは考えられねえよ」
秋之介が苦笑すると、結月は居心地悪そうに「そう……」とだけ呟いた。
話しながらの玄舞家への道のりはあっという間に感じられる。門衛に通されて、秋之介と結月はあかりの部屋へ向かった。
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