【本編完結】朱咲舞う

南 鈴紀

文字の大きさ
160 / 390
第一二話 葉月の凶事

第一二話 一〇

しおりを挟む
「よお、昴」
「おはよう。お邪魔、してます」
「秋くん、ゆづくん」
 振り返った昴は明らかに疲弊していた。結月ともども寝不足であるはずの昴だったが、あかりから離れることはないようだった。あかりの容態を診ながら、護符の改良も進めていたらしい。昴の側には何枚かの護符が落ちていた。
「これが噂の護符か」
 秋之介はかがんで一枚を拾い上げた。昴の「ゆづくんから聞いたの?」という問いに頷きを返す。護符からは結月と昴の気が感じ取れた。
「どんな風に改良してんだ?」
 秋之介の問いにそれぞれが答える。
「おれは、昴の術の効力を、高めるように、した」
「……僕は、あかりちゃんの回復力を促進できないか試してみたよ」
 秋之介は護符をひらりと宙にかざして、それをじっと見上げた。
「なんであかりは目覚めないんだろうな」
 それからあかりへと視線を移す。
 布団に寝かされているあかりは今日も静かに呼吸だけを繰り返している。その姿が人間姿であることから、霊力は回復しているのではないかと思われた。それにこれだけ昴が世話をして休んでいるのだから体力もそれなりには戻ってきているだろう。では、なぜあかりは今もなお意識がないままなのか。秋之介にはそれが不思議でならなかった。
 すると昴が重々しく呟いた。
「……呪詛だったんだ」
「は? 呪詛?」
 目を瞠る秋之介と結月に、昴は暗い表情で答えた。
「僕もずっとなんでだろうって思ってた。それで原因をずっと探ってたんだ。昨夜やっとわかったことで、あの妖狐は高度な呪詛をのせていたらしい」
 それであかりはなかなか目覚めなかったのかと秋之介が納得する一方で、結月は僅かに身を乗り出して昴に訊いた。
「解呪は、したの?」
 昴は頭を動かすのすら怠そうにして言った。
「朝までかけてなんとか。これであかりちゃんの目が覚めるはずだって思いたい」
「うん……。昴、ありがとう」
「……お礼を言ってもらう資格なんて、僕にはないよ」
 昴は自嘲気味に嗤った。結月は困ったような悲しそうな表情を浮かべていた。
 二人を後目に、秋之介はあかりに向かって心中で語りかけた。
(なあ、あかり。やっぱり俺だけじゃ駄目みたいだ。こいつらを救えんのはおまえしかいねえよ。早く起きてさ、いつもみたいに腹減ったって笑ってくれよ)
 しかしあかりは、まぶたを震わすことすらしなかった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

《完結》悪役聖女

ヴァンドール
ファンタジー
聖女になり、王妃となるため十年間も教育を受けて来たのに蓋を開ければ妹が聖女の力を持っていて私はには聖女の力が無かった。そのため祖国を追放されて隣国へと旅立ったがそこで……

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

生きるために逃げだした。幸せになりたい。

白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。 2020/9/19 第一章終了 続きが書け次第また連載再開します。 2021/2/14 第二章開幕 2021/2/28 完結

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

処理中です...