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第一二話 葉月の凶事
第一二話 一二
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昼ごろになって、昴はようやくあかりのもとへ戻ってきた。
「ゆづくん。あかりちゃんはどう?」
憔悴しきっている昴には少しでもいいから休んでほしかったが、昴の気持ちが痛いほどわかる結月には言い出せない。代わりに昴の問いに素直に答えた。
「ううん。変わら、ない」
「そう……」
昴は崩れるように畳に座り込むと、袂から数枚の護符を取り出した。
「何がいけないんだろう……」
改良を重ねる護符だが、効果は一向に上がらない。結月も護符を見つめて、考え込んだ。
すると外廊下から秋之介が姿を現した。
「よう」
「秋くん」
「お疲れ様、秋」
秋之介は頷くと、遠慮なくその場に腰を下ろした。
「あかり……は、相変わらずだな。で、ゆづと昴は何話してたんだ?」
秋之介はあかりをちらとだけ見ると、すぐに結月と昴に視線を移した。
秋之介の問いには昴が答えた。
「護符が上手く効かないって話してたんだ」
「ふーん。今はどんな改良をしてんだ?」
秋之介は畳に並べられた護符の一枚を手に取るとひらひらと振った。秋之介には意味がわからないが、青い和紙に書かれた文字や記号はこの前見たものとは異なるような気がした。
「あかりの魂魄に、訴えかけるように、してみた」
「そりゃまた大きな方向転換だな」
秋之介の大きく見開かれた瞳が結月に向けられる。結月はしっかりと頷いた。
「うん。なんだか今のあかりは、空っぽな気がして」
ひと月近く様子を見ていたこともあったが、これだけ手を尽くしても回復しないということは、霊力や体力、呪詛の影響ではなく、根本のあかりの内側に問題があるように思えた。
昴も同感だと言い添える。
「僕も治療をしていて思ったんだ。力を注いでも流れ出てる感覚っていうのかな。最初は気のせいかと思ったんだけど、どうも違ったらしい」
「それで『空っぽ』ってことか……」
秋之介は腕を組んで唸っていたが、ぱっと顔を上げた。
「それって俺の降霊術みたいだよな」
「そういえばそうだね」
空にした自身の内側を通じ、依り代に魂を降ろす秋之介の降霊術は、どことなく今回の護符の方向性と似通っていた。
秋之介は護符を凝視しながら、落とすように呟いた。
「例えば、だけどさ。この護符を媒体にして、あかりに呼びかけられねえかな?」
結月と昴は顔を見合わせて難しい顔をした。
「秋の降霊術は、死者を、喚ぶもの……。あかりはまだ、生きてる」
「……」
「うーん。魂に呼びかけるって点では一緒なんだよなぁ……」
「……でも、可能性があるなら……」
「昴?」
結月と秋之介の声が重なる。二人が見た昴の黒い瞳には強い意志が浮かび上がっていた。
「できることがあるなら、僕はやってみたい。なんでもいい。縋れるものがあるなら、それに賭けてみたいんだ」
昴の真っ直ぐな視線を受けて、結月はゆっくりと頷いた。
「……わかった。やるだけ、やってみよう」
「じゃ決まりだな。さっそく準備しようぜ」
秋之介は手を打つと立ち上がった。
一刻後に白古家に集合とし、各々準備にとりかかった。
「ゆづくん。あかりちゃんはどう?」
憔悴しきっている昴には少しでもいいから休んでほしかったが、昴の気持ちが痛いほどわかる結月には言い出せない。代わりに昴の問いに素直に答えた。
「ううん。変わら、ない」
「そう……」
昴は崩れるように畳に座り込むと、袂から数枚の護符を取り出した。
「何がいけないんだろう……」
改良を重ねる護符だが、効果は一向に上がらない。結月も護符を見つめて、考え込んだ。
すると外廊下から秋之介が姿を現した。
「よう」
「秋くん」
「お疲れ様、秋」
秋之介は頷くと、遠慮なくその場に腰を下ろした。
「あかり……は、相変わらずだな。で、ゆづと昴は何話してたんだ?」
秋之介はあかりをちらとだけ見ると、すぐに結月と昴に視線を移した。
秋之介の問いには昴が答えた。
「護符が上手く効かないって話してたんだ」
「ふーん。今はどんな改良をしてんだ?」
秋之介は畳に並べられた護符の一枚を手に取るとひらひらと振った。秋之介には意味がわからないが、青い和紙に書かれた文字や記号はこの前見たものとは異なるような気がした。
「あかりの魂魄に、訴えかけるように、してみた」
「そりゃまた大きな方向転換だな」
秋之介の大きく見開かれた瞳が結月に向けられる。結月はしっかりと頷いた。
「うん。なんだか今のあかりは、空っぽな気がして」
ひと月近く様子を見ていたこともあったが、これだけ手を尽くしても回復しないということは、霊力や体力、呪詛の影響ではなく、根本のあかりの内側に問題があるように思えた。
昴も同感だと言い添える。
「僕も治療をしていて思ったんだ。力を注いでも流れ出てる感覚っていうのかな。最初は気のせいかと思ったんだけど、どうも違ったらしい」
「それで『空っぽ』ってことか……」
秋之介は腕を組んで唸っていたが、ぱっと顔を上げた。
「それって俺の降霊術みたいだよな」
「そういえばそうだね」
空にした自身の内側を通じ、依り代に魂を降ろす秋之介の降霊術は、どことなく今回の護符の方向性と似通っていた。
秋之介は護符を凝視しながら、落とすように呟いた。
「例えば、だけどさ。この護符を媒体にして、あかりに呼びかけられねえかな?」
結月と昴は顔を見合わせて難しい顔をした。
「秋の降霊術は、死者を、喚ぶもの……。あかりはまだ、生きてる」
「……」
「うーん。魂に呼びかけるって点では一緒なんだよなぁ……」
「……でも、可能性があるなら……」
「昴?」
結月と秋之介の声が重なる。二人が見た昴の黒い瞳には強い意志が浮かび上がっていた。
「できることがあるなら、僕はやってみたい。なんでもいい。縋れるものがあるなら、それに賭けてみたいんだ」
昴の真っ直ぐな視線を受けて、結月はゆっくりと頷いた。
「……わかった。やるだけ、やってみよう」
「じゃ決まりだな。さっそく準備しようぜ」
秋之介は手を打つと立ち上がった。
一刻後に白古家に集合とし、各々準備にとりかかった。
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