【本編完結】朱咲舞う

南 鈴紀

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第一三話 守りたいもの

第一三話 一〇

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あかりが帰宅してからしばらくして昴たちも邸に帰ってきた。
 ぱっと見たところ大きな怪我もなさそうなことに安堵したのも束の間、あかりは昴へと身を乗り出した。
「ど、どうしたの、あかりちゃん?」
 昴は大いに戸惑っていたが、あかりは構わず予め伝えたいことを書いておいた紙を昴に突きつけた。そこに書かれた言葉を目にした昴は目を瞬いた。
「『大事な話があるの』?」
 あかりはぶんと勢いよく首を振った。そして昴の後ろに並び立つ結月と秋之介にも目配せした。
「俺たちもってことか?」
 秋之介の問いにもあかりは再度肯定すると、よく四人で集まる客間の一室へと彼らを先導した。
客間に着き、皆が落ち着いたところであかりは紙を掲げた。
『ちゃんと話し合わなくちゃいけないと思って。私の今の思いと、これからのことを』
「……」
  あかりは結月、秋之介を見て、最後に昴を見つめた。まるで逃げ出すのは認めないというようなあかりの強い眼差しに、昴は思い当たる節があるのか少しだけ怯んでいるようだった。
  そんな昴へ、あかりは首を振った。
『別に昴を責めたいわけじゃないの』
「……うん」
  昴は一度だけ深呼吸すると、改めてあかりに向き直った。その瞳はあかりに応えるように力強いものだった。
「それで、あかりちゃんの話って?」
  心の準備が整った昴があかりに話を促す。側の結月と秋之介は黙って事の成り行きを見守っていた。
  あかりはこくりと頷いた。
『昴の様子、最近おかしかったよね』
  自覚があるらしい昴は苦笑いを浮かべながら「そうだね」と認めた。
『前にどうしたのって訊いても答えてもらえなかった。だから考えてみたの』
  あかりの瞳には迷いがなかった。昴もそれを感じ取って今度はお茶を濁すようなことは言わなかった。
「……それで、答えはわかった?」
『私が瀕死の重傷を負ったことに昴は責任と恐怖を感じてる。だから本当は私に戦ってほしくない。だけどそれは私の望むところじゃないことも昴はわかってる』
「……」
  否定しないことこそがあかりの推察の裏付けだった。
  昴は黙り込んだまま、苦しげな表情をしていた。
(ねぇ、昴)
  そんな顔をしてほしいのではない。あかりは自身の胸に巣くう靄と同時に昴の葛藤をも打ち払いたかった。そしてそれができるのは他でもない自分だけなのだということもわかっていた。
  赤と黒の瞳がかち合う。
  迷いに揺れる黒い瞳を前にして、あかりは心を決めた。
  これからあかりがどうしたいか、臆することなくきちんと伝えなければいけない。昴はもとより結月と秋之介にも聞き届けてほしいと思った。
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