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第一四話 交わす約束
第一四話 一三
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午後もいくらか過ぎたころ、結月と秋之介はそろって玄舞家にやって来た。あかりと昴もまたそろって二人を玄関で出迎えた。
「よっ! 数日ぶりだな」
「元気そうで、安心した」
秋之介と結月の変わらない姿に、あかりはにこりと微笑んだ。昴も頷いて応じる。
「二人もね。先に仕事の話を済ませちゃおうか。秋くんは清忠くんに用事があるんだったよね。ゆづくんは椿さんだったっけ」
「ああ」
「うん。あかりの代わり、だったよね」
あかりは首肯した。椿は昴と同い年の玄舞家に仕える女性だ。本来ならあかりが行うはずだった仕事を今年は代わりに担ってくれている。
「僕は秋くんを案内するから、あかりちゃんは椿さんのところにゆづくんを案内してあげてくれるかな」
あかりは了承すると、結月の袂を軽く引いた。そのまま先導するように椿がいるであろう部屋を目指す。目当ての部屋では予想通り椿が数人の女子とともに仕事をしているところだった。開け放したふすまを潜ると、ちょうど椿と目が合った。
「あかり様。どうしてこちらに……?」
椿は立ち上がるとあかりの方へ近づいてきた。そして廊下の陰、あかりの側に結月もいることに気づくとはっとした顔つきになった。
「結月様も! なるほど、昴様より聞き及んでおりました。仕事のお話ですよね?」
「はい。今、大丈夫、ですか?」
「はい、お待ちしておりましたもの。ここだと騒がしいですし、部屋を移しましょうか。毎年の勝手がわかるあかり様もいてくださった方が助かるので、ご一緒に」
三人は連れ立ってさらに部屋を移動した。
玄舞家の家臣が気を利かせて用意してくれた緑茶と茶菓子をつまみながら、あかりたちは話し合いをしていた。とはいえ結月も椿も優秀なのであかりの力など借りずとも、話は順調にまとまっていく。
あかりは僅かな疎外感を感じていた。
(本当なら私が結月と……。ううん、これは仕事なんだから……)
そう思い直してあかりは黙って結月と椿の話に耳を傾けていた。ときおり意見を求められれば助言をするくらいしかあかりにできることはなかったので、その間はぼんやりと二人のやりとりを眺めていた。
「よっ! 数日ぶりだな」
「元気そうで、安心した」
秋之介と結月の変わらない姿に、あかりはにこりと微笑んだ。昴も頷いて応じる。
「二人もね。先に仕事の話を済ませちゃおうか。秋くんは清忠くんに用事があるんだったよね。ゆづくんは椿さんだったっけ」
「ああ」
「うん。あかりの代わり、だったよね」
あかりは首肯した。椿は昴と同い年の玄舞家に仕える女性だ。本来ならあかりが行うはずだった仕事を今年は代わりに担ってくれている。
「僕は秋くんを案内するから、あかりちゃんは椿さんのところにゆづくんを案内してあげてくれるかな」
あかりは了承すると、結月の袂を軽く引いた。そのまま先導するように椿がいるであろう部屋を目指す。目当ての部屋では予想通り椿が数人の女子とともに仕事をしているところだった。開け放したふすまを潜ると、ちょうど椿と目が合った。
「あかり様。どうしてこちらに……?」
椿は立ち上がるとあかりの方へ近づいてきた。そして廊下の陰、あかりの側に結月もいることに気づくとはっとした顔つきになった。
「結月様も! なるほど、昴様より聞き及んでおりました。仕事のお話ですよね?」
「はい。今、大丈夫、ですか?」
「はい、お待ちしておりましたもの。ここだと騒がしいですし、部屋を移しましょうか。毎年の勝手がわかるあかり様もいてくださった方が助かるので、ご一緒に」
三人は連れ立ってさらに部屋を移動した。
玄舞家の家臣が気を利かせて用意してくれた緑茶と茶菓子をつまみながら、あかりたちは話し合いをしていた。とはいえ結月も椿も優秀なのであかりの力など借りずとも、話は順調にまとまっていく。
あかりは僅かな疎外感を感じていた。
(本当なら私が結月と……。ううん、これは仕事なんだから……)
そう思い直してあかりは黙って結月と椿の話に耳を傾けていた。ときおり意見を求められれば助言をするくらいしかあかりにできることはなかったので、その間はぼんやりと二人のやりとりを眺めていた。
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