200 / 388
第一五話 希望の声
第一五話 二
しおりを挟む
『今日のお菓子は何?』
「さっそく食いものの話かよ!」
「まあまあ、元気な証拠じゃない。今日のお菓子はこれだよ」
昴は黒い小さな結界を出現させ、術を解いた。中からはお茶とカステラが出てきた。
あかりが手を叩いて喜ぶと、昴も嬉しそうな笑みをみせた。
「昨日、寅次さんからもらったんだ。またあかりちゃんに来てほしいって言ってたよ」
寅次とはあかりが町での仕事で何度かお世話になっている北の地の民のひとりである。和菓子屋を経営していて、あかりはそこの店番をさせてもらっていた。四〇歳を過ぎた寅次には妻がいるが子どもがいない。そのためあかりを看板娘だと可愛がってくれていた。
寅次の明るい笑顔を思い浮かべると、次第に町のことが気になりだしてきた。
(私が行けてない間、町の様子に何か変化はないよね……?)
雪月のはじめ頃に感じ出した邪気は昴が手を打ってくれたおかげで膨れ上がってはいなかったが、完全に払拭されたわけでもなかった。
あかりが風邪をひいた後、流れるように年末年始の準備がはじまってしまったため、あかりはしばらく町へ行けていなかった。一度、昴に尋ねたら問題ないと答えが返ってきたが、やはり実際に様子を確認しないことには落ち着かない。
(本当は今からでも町にいきたいところだけど……)
四家のうちのひとつとして年始の祭祀は特に疎かにはできない。演舞の練習はまだ続くだろうし、祭祀の準備も完了していないのだ。町とそこに住まう民を思えばこそ、それらは決して軽んじてはならないと自身に言い聞かせることで、あかりはようやく落ち着きを取り戻した。
「さっそく食いものの話かよ!」
「まあまあ、元気な証拠じゃない。今日のお菓子はこれだよ」
昴は黒い小さな結界を出現させ、術を解いた。中からはお茶とカステラが出てきた。
あかりが手を叩いて喜ぶと、昴も嬉しそうな笑みをみせた。
「昨日、寅次さんからもらったんだ。またあかりちゃんに来てほしいって言ってたよ」
寅次とはあかりが町での仕事で何度かお世話になっている北の地の民のひとりである。和菓子屋を経営していて、あかりはそこの店番をさせてもらっていた。四〇歳を過ぎた寅次には妻がいるが子どもがいない。そのためあかりを看板娘だと可愛がってくれていた。
寅次の明るい笑顔を思い浮かべると、次第に町のことが気になりだしてきた。
(私が行けてない間、町の様子に何か変化はないよね……?)
雪月のはじめ頃に感じ出した邪気は昴が手を打ってくれたおかげで膨れ上がってはいなかったが、完全に払拭されたわけでもなかった。
あかりが風邪をひいた後、流れるように年末年始の準備がはじまってしまったため、あかりはしばらく町へ行けていなかった。一度、昴に尋ねたら問題ないと答えが返ってきたが、やはり実際に様子を確認しないことには落ち着かない。
(本当は今からでも町にいきたいところだけど……)
四家のうちのひとつとして年始の祭祀は特に疎かにはできない。演舞の練習はまだ続くだろうし、祭祀の準備も完了していないのだ。町とそこに住まう民を思えばこそ、それらは決して軽んじてはならないと自身に言い聞かせることで、あかりはようやく落ち着きを取り戻した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる