【本編完結】朱咲舞う

南 鈴紀

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第一五話 希望の声

第一五話 三

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 予想通り、年末は外に出かける暇もないくらいに忙しかった。雪月の最終日、大みそかの夜になってやっと腰を落ち着けることができた。毎年そうであるように、今年の大みそかも玄舞家に幼なじみで集まって年を越すことになっていた。
「ようやく一段落ついたね」
「つっても新年の演舞があるからなぁ」
 にこやかに温かいお茶をすすっている昴に対して、秋之介はそわそわと落ち着かない様子だった。結月が呆れた目をして横目に秋之介をとらえる。
「秋、いい加減落ち着いたら?」
「逆になんでそんなにゆづは冷静なんだよ。緊張とかするだろ、普通」
「秋は意外と繊細だよね」
「意外ってなんだよ!」
 町のことは心配だが、目の前の光景はいつもの四人らしい大みそかの夜のもので、あかりは密かにほっとしていた。結月と秋之介の気安いやりとりに、思わずくすりと笑みがこぼれる。
「あ……」
 あかりの顏を見て、結月が小さく声をあげる。どうしたのだろうとあかりが首を傾げると、結月は柔らかに微笑んだ。
「あかりがそんな風に笑ったの、久しぶりに見たから」
 結月の隣を見れば、秋之介と昴もどこか安堵したような表情だった。どうやら知らず知らずのうちに心配をかけていたらしい。
(私くらいは笑っていられるようにって思ってたけど……)
 それがどれだけ難しいことか、身をもって実感した。
『町のことがずっと気がかりだったの』
 心配をかけた以上、自分ひとり、胸の内に抱え込んだままというのは良くない気がしたあかりは正直に心境を吐露した。
 町に不穏な空気が漂っていることは昴だけでなく、結月と秋之介とも共有している情報だった。実際、邪気払いの先頭をきっているのは彼らでもある。あかりの発した『町』という一言に三人が見せた顔は芳しいものではなかった。
「あかりが気にするほどじゃねぇ! って言ってやりたいとこなんだけどな」
「今のところ大きな乱れはないけど、油断はできないね」
「各地の結界も、ときどき綻んでる。陰の国が、また動き出したのかも……」
 勘ではあったがなんとなく予想していた答えだったものだから、あかりは特に驚かなかった。今はまだ町に被害が出ていないが今後どうなるかはわからない。
(来年はどんな一年になるんだろう……)
 あかりの不安と憂いを反映するかのように、除夜の鐘が重々しく響く。何かを予感させる始まりの鐘の音だった。
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