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第一六話 救いのかたち
第一六話 五
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「今の気配……」
「あかりも気づいた?」
顔を引き締めた結月に、あかりは緊張感を漂わせながら頷いた。
「うん。……あのときの、妖狐」
あかりの脳裏に過ったのは、黒い毛並みと赤い瞳が印象的な陰の国の帝に使われている式神の妖狐の姿だ。喉を裂き、呪詛をも運んできたためにあかりの声が出なくなった原因でもある。
(でも、おかしいわ)
確かに感じるのは件の妖狐の気配なのに、そこに敵意や害意はない。そもそも意思というものがあるのかすら怪しい。言うなれば無色透明な視線といったところだろうか。
振り返ってはみたものの、青柳大路に妖狐の姿は見つけられず、あかりは結月と顔を見合わせた。そのうち気配も消えてしまったので、二人は後ろ髪を引かれる思いで青柳家へと向かうことにした。
青柳家の邸へ着くと、結月は幼なじみでよく使う玄関にほど近い客間にあかりを案内した。
「あかりはここで待ってて。おれ、瓶を置いてくる」
言われた通りあかりは客間で大人しく座って待っていた。
ほどなくしてこちらへ近づいてくる三つの気配を感じた。開かれたふすまの向こうにはお茶ののった盆を手にした結月と春朝、香澄が揃って立っていた。
「おば様、おじ様! お邪魔してます」
あかりが満面の笑みで挨拶をすると、春朝ははっと目を見開き、香澄は瞳を潤ませた。
「結月から聞いてはいたが……。声が戻ったようだね」
「良かったわ、本当に……」
香澄はあかりにあわせて側にかがむと、ひしとあかりを抱きしめた。あかりもまた応えるように香澄の身体をぎゅっと抱きしめ返した。
「心配かけて、ごめんなさい」
「いいえ、いいえ。こうして元気な姿が見られただけで、もう十分よ」
あかりが香澄を第二の母だと慕うように、香澄もあかりを実の娘のように思ってくれていることをあかりは知っている。心配をかけてばかりなことに心苦しさを覚える一方で、親のようにあかりの身を案じてくれる存在がまだいることは嬉しくもあった。
香澄は名残惜しそうにあかりからゆっくりと身を離すと、目尻の涙を拭い、微笑んだ。
「積もる話がたくさんあるわね。まずはお茶でも飲みましょうか」
「あかりも気づいた?」
顔を引き締めた結月に、あかりは緊張感を漂わせながら頷いた。
「うん。……あのときの、妖狐」
あかりの脳裏に過ったのは、黒い毛並みと赤い瞳が印象的な陰の国の帝に使われている式神の妖狐の姿だ。喉を裂き、呪詛をも運んできたためにあかりの声が出なくなった原因でもある。
(でも、おかしいわ)
確かに感じるのは件の妖狐の気配なのに、そこに敵意や害意はない。そもそも意思というものがあるのかすら怪しい。言うなれば無色透明な視線といったところだろうか。
振り返ってはみたものの、青柳大路に妖狐の姿は見つけられず、あかりは結月と顔を見合わせた。そのうち気配も消えてしまったので、二人は後ろ髪を引かれる思いで青柳家へと向かうことにした。
青柳家の邸へ着くと、結月は幼なじみでよく使う玄関にほど近い客間にあかりを案内した。
「あかりはここで待ってて。おれ、瓶を置いてくる」
言われた通りあかりは客間で大人しく座って待っていた。
ほどなくしてこちらへ近づいてくる三つの気配を感じた。開かれたふすまの向こうにはお茶ののった盆を手にした結月と春朝、香澄が揃って立っていた。
「おば様、おじ様! お邪魔してます」
あかりが満面の笑みで挨拶をすると、春朝ははっと目を見開き、香澄は瞳を潤ませた。
「結月から聞いてはいたが……。声が戻ったようだね」
「良かったわ、本当に……」
香澄はあかりにあわせて側にかがむと、ひしとあかりを抱きしめた。あかりもまた応えるように香澄の身体をぎゅっと抱きしめ返した。
「心配かけて、ごめんなさい」
「いいえ、いいえ。こうして元気な姿が見られただけで、もう十分よ」
あかりが香澄を第二の母だと慕うように、香澄もあかりを実の娘のように思ってくれていることをあかりは知っている。心配をかけてばかりなことに心苦しさを覚える一方で、親のようにあかりの身を案じてくれる存在がまだいることは嬉しくもあった。
香澄は名残惜しそうにあかりからゆっくりと身を離すと、目尻の涙を拭い、微笑んだ。
「積もる話がたくさんあるわね。まずはお茶でも飲みましょうか」
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