【本編完結】朱咲舞う

南 鈴紀

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第一六話 救いのかたち

第一六話 一七

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 飛び出したあかりを追いかけるように昴も後に続く。先ほどの伝令役とは別の者が結月と秋之介を呼びに行っている間、あかりと昴は玄舞大路をひた駆けた。中央御殿を通過し、朱咲大路に入ってまもなくして結月と秋之介が合流した。
「昴、あかり!」
「詳細は、聞いてる?」
 あかりから目を離さないようにしながら、昴は結月の問いに答えた。
「うん。天翔様と思われる妖狐が離の結界付近に現れて暴れてるらしい。現帝の姿は見つかっていないみたいだけど、敵の数が多くて味方は苦戦中。今は幼帝派の術使いが応援に駆けつけてくれていて持ちこたえてるようだね」
「お父様……どうして……っ」
 昴が共有する情報を話し半分に聞いていたあかりが呻くように呟く。
 二週間前は苦しそうにしながらも大人しく、またあかりの思いも届いていた様子だった。しかし、今回はまるで別人のように、それこそ昨年の葉月にあかりたちを襲ったときのように、暴れているという。優しかった父が望んで誰かを傷つけるとは思えない。であるならば天翔は式神として無理を強いられているのだるう。やりきれなさがあかりの胸を締め付けた。
「言ってても始まらねえ。さっさと行くぞ!」
 秋之介の一言に、皆は駆ける速度をさらに上げた。
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