【本編完結】朱咲舞う

南 鈴紀

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第一七話 諦めない未来

第一七話 一四

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 直後あたたかな赤い光の粒が天翔を覆っていく。半透明だった彼の身体は淡い光を発しながら四肢の先から消え始めていた。
 いてもたってもいられず、あかりは霊剣を消すと父に駆け寄った。
「お父様……!」
 半透明だがまだ姿の残る天翔の身体を膝をついて抱きしめると、ほんのりと体温が感じられた。できることなら失いたくないその温度をこの先忘れないようにとあかりは腕に力をこめる。
 天翔はあかりの耳もとで囁くように告げた。
「ありがとう、あかり。やっと苦しみから解放される……。あかりには辛い決断だったろうにこう言っては酷かもしれないが、それでもあかりに見送ってもらえて私は幸せ者だね」
「……っ」
 喉の奥が締め付けられ、目頭が熱くなる。それらを堪えるように、あかりはさらに腕に力をこめた。天翔はあかりの頬に頭を擦り寄せた。
「あかり、決して諦めることなく生き抜くんだよ。お父様との約束だ」
「……うん」
「この姿がなくなっても、側にいられなくても、お父様はあかりを愛していること、どうか忘れないでおくれね」
「うん」
 あかりの腕の中にあった感覚はどんどんおぼろげになっていく。そのうち身体も消えて、残るのは顔だけになった。あかりは腕を解くと父に向き合い、微笑んでみせた。
「私、お父様との約束、きっと守るから。大好きだよ、お父様」
 天翔は安心したように目を細めると頷いた。やがて光の中に天翔の姿は完全に溶け消えた。
 あかりと天翔の二人きりだった空間は霧散し、現実世界が戻ってくる。
 あかりは地面に座り込んだまま、まだ天翔の体温が残る自分の両腕を抱いた。堰を切ったように堪えていた涙が嗚咽とともに溢れ出る。
「おと、さ、ま……っ」
 大好きだった母だけでなく、父までも失い、南の地に住まう者はこれで本当にあかり一人になってしまった。
 その喪失感は計り知れず、まるで胸にぽっかりと穴が開いたように虚ろで寂しく、悲しみに抉られた心が痛んだ。
 結月に言われ、父に言ったように、確かにあかりは一人ではない。
 けれども失った人々の代わりなど誰一人としておらず、この現実をまるごと受け止めるには時間がかかることだろう。
 死者を悼み、その魂を癒すように、あかりの透明な涙が雨のように降り注ぐ。
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