【本編完結】朱咲舞う

南 鈴紀

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第二〇話 青の光

第二〇話 一〇

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 邪気が祓われたことで東青川が氾濫することもなく、結月の両親である春朝と香澄も無事だった。
 ただ、結月だけが目覚めないまま一週間以上経過していた。
 診療の都合上、結月は玄舞家預かりとなっていて、あかりはよく結月のもとにおとなっていた。
今日もまた結月にあてがわれた部屋へ向かうところだ。外廊下でふと足を止めたあかりは空を見上げた。梅雨明けの兆しを見せる空は真っ青で、白い雲がよく映えている。けれどもあかりの心は晴れないままだった。
(でも、結月の前で暗い顔してちゃ駄目だよね)
 あかりは結月の部屋の前でぱんと軽く両頬を叩いてから、「おはよう、結月」と部屋に足を踏み入れた。
 部屋の中央に敷かれた布団の上で、結月は最後に会ったときと変わらずこんこんと眠り続けていた。
(あ、でも……)
 結月の傍らに膝をつき、じっと顔を見つめていたあかりは結月の小さな変化に気がついた。結月は幼少時の人間姿をとれるまでに回復していたが、肌には龍の青い鱗が浮き出ていた。その鱗が薄くなっていたのだ。
 淡い期待と切望をこめて、あかりは呟いた。
「ねえ、結月。早く結月の目が見たいよ。声が、聞きたいよ……」
大好きな美しい青の瞳に自分を映してほしい。優しい声で自分の名前を呼んでほしい。
いつも当たり前のように隣にあったものが今は果てしなく遠い。胸が痛くて仕方なかった。
あかりは縋るように眠る結月の小さくなった左手をとった。常より結月の手はあかりの手よりひんやりしているが、今は殊更に冷えているように感じられる。その現実がまたあかりを打ちのめした。
「……結月も、おんなじだったのかな。私が意識を失って眠り続けてた間……」
 陰の国から助け出された後も、父であった妖狐に喉を裂かれた後も。
 一体結月はどんな気持ちであかりの意識が戻ってくるのを待っていたのだろうか。
 心配や迷惑をかけた自覚はあるが、こんなにも胸が痛むものだと考え及んだことがあっただろうか。不安が掻きたてられ気持ちが落ち着かず、目覚めを願えども一向に叶わないもどかしさに苛まれ、祈る以外何もできない無力感に打ちひしがれる。当たり前に隣にあった存在がなくなってしまうことは空しくて、哀しくて、寒かった。
 そんなことに今さら気づいてしまった。せめて結月の前では暗い顔をしないようにと思っていたが、明るく取り繕うことはもはやできなかった。ここで泣いてはいけないと頭ではわかっているのに、気持ちは不安定で制御が効かない。あかりの瞳に涙の膜が張り、俯いた拍子にぽろりと一粒二粒こぼれ落ちた。
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