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第二三話 昇る朝陽と舞う朱咲
第二三話 二
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今回の戦いの最前線は鬼門である艮の結界とその周辺だった。そこから町に散らばっていった大勢の陰の国の術使いをあかりと結月を筆頭に各家の家臣たちが打ち払っていたのが先ほど。残りは家臣たちに任せて大丈夫だろうと判断したあかりと結月は前線に舞い戻った。こちらでは昴と秋之介を中心に激しい戦いが繰り広げられていた。
「昴、秋!」
陰の国の術使いを霊剣で打ち払い、味方の援護をしながら、あかりと結月は戦いのただ中にいる昴と秋之介のもとに駆け寄った。
「あかりちゃん、ゆづくんも!」
「町の方はどうなった⁉」
「町民の安全は父様が確保してくれてる。町に散らばった陰の国の強力そうな術使いはあらかた倒した。残りは家臣だけでも大丈夫なはず」
結月が淀みなく現状の説明をすると、昴と秋之介は一瞬だけほっとしてみせたが、すぐに険しい顔つきに戻った。
「前線の方はどうなってるの?」
問いかけるあかりの声もまた硬いものになる。昴は首を左右に振った。
「五分五分だよ。このままいけば数に押し負けそうだ」
「早いとこ陰の国の現帝を見つけてぇとこなんだけど、どこにいるのか未だに見つかんねぇ」
「現帝……」
呟きながらあかりは思い出す。式神となった天翔とともに現帝はあかりの前に何度か姿を現していた。そのときに感じた息をするのも苦しいような重く暗い空気をまとう黒づくめの男のことは忘れるはずもない。陽の国を踏み荒らし、父をまるで使い捨ての物のように扱った彼のことは到底赦せるはずもなく、やりきれない怒りと悲しみが胸の内でない交ぜになる。
思わずあかりの両の手に力がこもるが、深呼吸することで感情を落ち着けた。
(ここで気を乱してはいけないわ。……現帝を倒せるのは、きっと私だけなんだから)
五家が有する力の特徴からいって、最も戦闘に向いているのは言霊と霊剣を操る朱咲家だ。加えて希代の術使いと謳われている四人の中で最も強いのがあかりだった。
(私が、戦いを終わらせる)
こんなにも空しい哀しみの連鎖はここで終わりにしたい。終わりにしなければならない。
「昴、秋!」
陰の国の術使いを霊剣で打ち払い、味方の援護をしながら、あかりと結月は戦いのただ中にいる昴と秋之介のもとに駆け寄った。
「あかりちゃん、ゆづくんも!」
「町の方はどうなった⁉」
「町民の安全は父様が確保してくれてる。町に散らばった陰の国の強力そうな術使いはあらかた倒した。残りは家臣だけでも大丈夫なはず」
結月が淀みなく現状の説明をすると、昴と秋之介は一瞬だけほっとしてみせたが、すぐに険しい顔つきに戻った。
「前線の方はどうなってるの?」
問いかけるあかりの声もまた硬いものになる。昴は首を左右に振った。
「五分五分だよ。このままいけば数に押し負けそうだ」
「早いとこ陰の国の現帝を見つけてぇとこなんだけど、どこにいるのか未だに見つかんねぇ」
「現帝……」
呟きながらあかりは思い出す。式神となった天翔とともに現帝はあかりの前に何度か姿を現していた。そのときに感じた息をするのも苦しいような重く暗い空気をまとう黒づくめの男のことは忘れるはずもない。陽の国を踏み荒らし、父をまるで使い捨ての物のように扱った彼のことは到底赦せるはずもなく、やりきれない怒りと悲しみが胸の内でない交ぜになる。
思わずあかりの両の手に力がこもるが、深呼吸することで感情を落ち着けた。
(ここで気を乱してはいけないわ。……現帝を倒せるのは、きっと私だけなんだから)
五家が有する力の特徴からいって、最も戦闘に向いているのは言霊と霊剣を操る朱咲家だ。加えて希代の術使いと謳われている四人の中で最も強いのがあかりだった。
(私が、戦いを終わらせる)
こんなにも空しい哀しみの連鎖はここで終わりにしたい。終わりにしなければならない。
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