【本編完結】朱咲舞う

南 鈴紀

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第二三話 昇る朝陽と舞う朱咲

第二三話 三

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 あかりが決意を新たに霊剣を握り直すと同時に陰の国の式神が飛来した。昴がいち早く結界を張り、秋之介と結月も臨戦態勢をみせる。あかりもまた素早く霊剣を構えた。
「せっかくあかりちゃんが戻ってきてくれたことだし、反閇でもお願いしようかな」
「確かにここらで一掃しておきたいな。次から次へと湧いて出てきてきりがねえ」
「あかり、まだ反閇使える?」
 霊力と体力をかなり消費する反閇はそう何度も使えるものではないが、出し惜しみしている場合でもない。あかりは力強く頷いた。
「もちろん!」
 あかりの返事をきくと三人は自身の役割を果たすための定位置についた。あかりはまぶたを閉じ、深呼吸をしてからすっと目を開けた。あかりのまとう空気が張り詰めたものに切り替わる。大きく息を吸い込んで、あかりは流れるように謡い、舞い出した。
「天神の母、玉女。南地の母、朱咲。我を護り、我を保けよ。我に侍えて行き、某郷里に至れ。杳杳冥冥、我を見、声を聞く者はなく、その情を覩る鬼神なし」
 あかりを中心に赤い光が溢れ出す。視界の端で青と白、それから黒の光が明滅していた。
「我を喜ぶ者は福し、我を悪む者は殃せらる。百邪鬼賊、我に当う者は亡び、千万人中、我を見る者は喜ぶ」
霊剣で四縦五横を切りながら、しなやかに、けれども力強く禹歩を踏む。
「青柳、白古、朱咲、玄舞、空陳、南寿、北斗、三体、玉女」
 最後に「急々如律令!」と叫び、周囲に円を描くように霊剣を振り切った。
赤い光の波に飲み込まれた陰の国の式神の魂が浄化され天に還っていく手応えを感じる。また、側にいた陰の国の式神使いも気を失って倒れていったが、彼らの顔も憑き物が落ちたように安らかなものだった。
 味方の陽の国の術使いが感嘆の息をつき、称賛のどよめきがあがる。
「良かっ……っぅ」
 あかりがほっと胸を撫でおろしたのも束の間、膝から力が抜ける。すかさず隣にいた結月があかりの身を支えた。
「……今日、術を行使しすぎ。これ以上無理をしたら、かえって危険」
「そう、だけど……」
 荒い息の合間にあかりは必死に言葉を紡ぐ。結月の言うことは正論だが、それを簡単に受け入れられるほど現状は易しくないことも確かな事実だった。
 やはり休むわけにはいかないと伝えようとあかりが口を開きかけたとき、玄舞家の家臣である時人が駆けてきた。
「昴様っ!」
 普段は落ち着いている時人がこんなにも焦った顔をしていることは珍しい。昴は目つきを鋭くさせると「どうしたの?」と訊いた。
「急報です……!」
 時人は一度息を吸い込むと、一息にはっきりと告げた。
「陰の国の現帝により中央御殿の守りが破られました!」
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