325 / 390
第二三話 昇る朝陽と舞う朱咲
第二三話 一二
しおりを挟む
「動静緊縛、急々如律令」
青の輝きとともに式神三体の動きが封じられるも一瞬のことだった。
元は妖だったであろう式神に既に自我はなく、ただただ狂ったように結月に襲い掛かる。
それでもなお結月は見切りをつけることができず、同族を傷つけることに抵抗があった。袂から新たに取り出したのは攻撃用の霊符ではなく、邪気払いのための霊符だ。
ここまで邪気に染まってしまっては所詮気休め程度の効果にしかならないだろう。真に邪気を祓って救いたいのならば、やはりあかりの反閇に頼るしかないことはわかっていた。
優しいといえば聞こえは良いが、詰めが甘いだけなのかもしれない。あるいは己の弱さだろうか。
(それでも……)
敵国の式神であっても、魂を消滅させることなく元の持ち主に還したい、そのために強くなるのだと四人で交わした約束があるから。
(約束を、守りたい)
「除災与楽、青柳護神、急々如律令」
明るく柔らかな青の光が霊符を中心に溢れ出す。光に触れそうになった式神が怯んだようにびくりと動きを止めるが、すぐにまた動き出す。
(もっと、力が必要、なのに……)
中央御殿に駆けつける前、あかりの反閇を助けていた結月もまた残る体力と霊力はほんの僅かなものだった。霊符の使役を重ねていくうちに、呼吸が苦しくなってくる。
それでも式神があかりの邪魔をしないように、あかりを傷つけないように、結月は間断なく霊符を展開した。
「月光照夜、急々如律令。……っ!」
何枚目かになるかわからない霊符を使役したとき、結月の視界が一瞬白く染まり、突き抜けるような痛みが頭に走った。あまりの痛みに息が詰まり、とっさに頭を押さえる。
(こんなことしてる場合じゃない……! 次の、霊符を……)
しかし意思とは裏腹に腕は痺れて言うことを効かない。
そしてそれは確実に隙となり、敵に好機を与えることになった。
三体の式神のうちの二体は結月に向かってきたが、残る一体は現帝と戦う秋之介のもとへ突っ込んでいった。
(止め、ないと……!)
そう思うのに身体は金縛りにあったようにまるで自由がきかなかった。
結月に向かってきた式神二体の攻撃はかろうじて避けられたが、秋之介を守るための力がうまく使役できない。結月が焦る間にも、式神は容赦なく秋之介に攻撃をしかけていた。
秋之介は現帝の相手をしながら、周囲を飛び回る式神の攻撃もいなしていたが、彼もまた力の消耗が激しかったらしく、いつまで攻撃を回避できるのか胆が冷えるような躱し方だった。
結月が相対する式神もいよいよ異変に気付いたらしい。結月の手が鈍ったことでこの場に二体は必要ないと判断したようで、一体は結月の出方をうかがい、もう一体はくるりと身を翻した。
走って行った先、その狙いは……。
青の輝きとともに式神三体の動きが封じられるも一瞬のことだった。
元は妖だったであろう式神に既に自我はなく、ただただ狂ったように結月に襲い掛かる。
それでもなお結月は見切りをつけることができず、同族を傷つけることに抵抗があった。袂から新たに取り出したのは攻撃用の霊符ではなく、邪気払いのための霊符だ。
ここまで邪気に染まってしまっては所詮気休め程度の効果にしかならないだろう。真に邪気を祓って救いたいのならば、やはりあかりの反閇に頼るしかないことはわかっていた。
優しいといえば聞こえは良いが、詰めが甘いだけなのかもしれない。あるいは己の弱さだろうか。
(それでも……)
敵国の式神であっても、魂を消滅させることなく元の持ち主に還したい、そのために強くなるのだと四人で交わした約束があるから。
(約束を、守りたい)
「除災与楽、青柳護神、急々如律令」
明るく柔らかな青の光が霊符を中心に溢れ出す。光に触れそうになった式神が怯んだようにびくりと動きを止めるが、すぐにまた動き出す。
(もっと、力が必要、なのに……)
中央御殿に駆けつける前、あかりの反閇を助けていた結月もまた残る体力と霊力はほんの僅かなものだった。霊符の使役を重ねていくうちに、呼吸が苦しくなってくる。
それでも式神があかりの邪魔をしないように、あかりを傷つけないように、結月は間断なく霊符を展開した。
「月光照夜、急々如律令。……っ!」
何枚目かになるかわからない霊符を使役したとき、結月の視界が一瞬白く染まり、突き抜けるような痛みが頭に走った。あまりの痛みに息が詰まり、とっさに頭を押さえる。
(こんなことしてる場合じゃない……! 次の、霊符を……)
しかし意思とは裏腹に腕は痺れて言うことを効かない。
そしてそれは確実に隙となり、敵に好機を与えることになった。
三体の式神のうちの二体は結月に向かってきたが、残る一体は現帝と戦う秋之介のもとへ突っ込んでいった。
(止め、ないと……!)
そう思うのに身体は金縛りにあったようにまるで自由がきかなかった。
結月に向かってきた式神二体の攻撃はかろうじて避けられたが、秋之介を守るための力がうまく使役できない。結月が焦る間にも、式神は容赦なく秋之介に攻撃をしかけていた。
秋之介は現帝の相手をしながら、周囲を飛び回る式神の攻撃もいなしていたが、彼もまた力の消耗が激しかったらしく、いつまで攻撃を回避できるのか胆が冷えるような躱し方だった。
結月が相対する式神もいよいよ異変に気付いたらしい。結月の手が鈍ったことでこの場に二体は必要ないと判断したようで、一体は結月の出方をうかがい、もう一体はくるりと身を翻した。
走って行った先、その狙いは……。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
退屈令嬢のフィクサーな日々
ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。
直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。
《完結》悪役聖女
ヴァンドール
ファンタジー
聖女になり、王妃となるため十年間も教育を受けて来たのに蓋を開ければ妹が聖女の力を持っていて私はには聖女の力が無かった。そのため祖国を追放されて隣国へと旅立ったがそこで……
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる