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第二七話 願った未来
第二七話 二
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季節は夏本番の葉月。
自室の縁側であかりは青い空と白い雲、眩しい太陽を見上げていた。ときおり吹く生温い風が部屋に飾られた風鈴をちりんと揺らす。
暑いことは暑いが、あかりはこの夏特有の空気感が好きだった。
「朱咲謡いて声高く。舞い踊りて空高く。祈りの歌が届くとき、貴方に加護がありましょう。心願成就、急々如律令」
機嫌よくあかりが謡を口ずさんでいると、背後から「あかりちゃん」と声をかけられた。気配は察知していたのであかりは特に驚くこともなく「昴」と振り返る。
「不思議だね。あかりちゃんが謡うと、僕の霊力が少しだけ戻ってくる気がするんだ」
「そうなの? だったら、私の祈りは届いてるのかな」
「祈り?」
「昴たちの霊力が戻りますようにって」
「それは……」
顔を曇らせる昴だったが、あかりは「違うんだよ?」と穏やかな声で言い添える。
「負い目を感じてるから償わなきゃって思ってるわけじゃないの。ただ、昴たちの力はこれから先も必要になってくると思うから。大切なものを守りきれるようにするために、この力は受け継いでいかなきゃならないものだって私は思ってる。そのために私は祈ってる、謡ってるんだよ」
「……そっか」
昴はようやく安心したように微笑んだ。あかりは「そうだよ」とにっこり微笑み返して「そういえば、何か用があったんじゃないの?」と話を促す。
「うん、政務のことなんだけどね。そろそろ南の地の復興の準備が整いそうだよ」
「え、本当⁉」
南の地を治める朱咲家の当主であるあかりが戻ってきたことで復興は一気に進んだ。住民は他の地から呼び集めることに成功し、後は邸の立て直しと朱咲の移動だけだ。準備が整いそうだということは邸の再建の目途が立ったということだろう。
慣れ親しんだ土地に帰れることは素直に嬉しかったが、長いこと世話になっていた玄舞家を離れることには寂しさもあった。
それが顔に出ていたのだろう。昴は小さく笑った。
「もう、そんな顔しなくてもいつでも会えるじゃない」
「そうだけど……。でも寂しいものは寂しいの」
「大丈夫だよ。あかりちゃんの側には君を想ってくれる人たちがたくさんいるんだから」
「うん」
真っ先に浮かんだのは三人の幼なじみの顔だったが、他にも愛情深い朱咲や何かと気にかけてくれる司、冥府から見守ってくれているであろう両親たち、これから南の地で暮らしていく民の顔も思い浮かんだ。
自分はこんなにも愛されている。だから寂しくても、大丈夫だと思えた。
「私も会いに来るつもりだけど、昴もたまには遊びに来てね」
「ふふ、わかってるよ」
日常に生きるこんな小さな約束が、あかりにとっても昴にとっても尊いものに思えてならなかった。
自室の縁側であかりは青い空と白い雲、眩しい太陽を見上げていた。ときおり吹く生温い風が部屋に飾られた風鈴をちりんと揺らす。
暑いことは暑いが、あかりはこの夏特有の空気感が好きだった。
「朱咲謡いて声高く。舞い踊りて空高く。祈りの歌が届くとき、貴方に加護がありましょう。心願成就、急々如律令」
機嫌よくあかりが謡を口ずさんでいると、背後から「あかりちゃん」と声をかけられた。気配は察知していたのであかりは特に驚くこともなく「昴」と振り返る。
「不思議だね。あかりちゃんが謡うと、僕の霊力が少しだけ戻ってくる気がするんだ」
「そうなの? だったら、私の祈りは届いてるのかな」
「祈り?」
「昴たちの霊力が戻りますようにって」
「それは……」
顔を曇らせる昴だったが、あかりは「違うんだよ?」と穏やかな声で言い添える。
「負い目を感じてるから償わなきゃって思ってるわけじゃないの。ただ、昴たちの力はこれから先も必要になってくると思うから。大切なものを守りきれるようにするために、この力は受け継いでいかなきゃならないものだって私は思ってる。そのために私は祈ってる、謡ってるんだよ」
「……そっか」
昴はようやく安心したように微笑んだ。あかりは「そうだよ」とにっこり微笑み返して「そういえば、何か用があったんじゃないの?」と話を促す。
「うん、政務のことなんだけどね。そろそろ南の地の復興の準備が整いそうだよ」
「え、本当⁉」
南の地を治める朱咲家の当主であるあかりが戻ってきたことで復興は一気に進んだ。住民は他の地から呼び集めることに成功し、後は邸の立て直しと朱咲の移動だけだ。準備が整いそうだということは邸の再建の目途が立ったということだろう。
慣れ親しんだ土地に帰れることは素直に嬉しかったが、長いこと世話になっていた玄舞家を離れることには寂しさもあった。
それが顔に出ていたのだろう。昴は小さく笑った。
「もう、そんな顔しなくてもいつでも会えるじゃない」
「そうだけど……。でも寂しいものは寂しいの」
「大丈夫だよ。あかりちゃんの側には君を想ってくれる人たちがたくさんいるんだから」
「うん」
真っ先に浮かんだのは三人の幼なじみの顔だったが、他にも愛情深い朱咲や何かと気にかけてくれる司、冥府から見守ってくれているであろう両親たち、これから南の地で暮らしていく民の顔も思い浮かんだ。
自分はこんなにも愛されている。だから寂しくても、大丈夫だと思えた。
「私も会いに来るつもりだけど、昴もたまには遊びに来てね」
「ふふ、わかってるよ」
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