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第二七話 願った未来
第二七話 四
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霜月は去り行き、雪月を迎えた。
雪こそまだ降らないが、空気はきんと冷えている。南朱湖の側は一段と寒かったが、水面に映る冬晴れの空は青く澄んでいて気持ちが良い。
「年内に間に合って良かったね」
「うん。本当によくできてるね、邸もご尊像も」
あかりたちが見上げる先にはまるで思い出の中から蘇ったような赤の邸と鳳凰を模した朱咲の立派なご尊像がある。
南の地の復興は目前で、あとはあかりや朱咲、民の引っ越しを残すのみとなった。
「いよいよかぁ。なんだかどきどきする」
あかりが草案を作った町を新たな民はどう思うだろう。不安もあるが同じくらい期待もあって、あかりの胸は高鳴っていた。
「活気があって、笑顔が溢れる町になるといいなぁ」
あかりが呟くと胸の内から鈴音が響いた。
『大丈夫じゃよ。妾の自慢の愛し子が心をこめて作り上げ、他でもない妾が加護を授ける町なのだから』
「朱咲様……」
『それにしてもご尊像ができたからには妾はあかりの内から離れねばならぬな。妾はそれがちと寂しい』
「私もです」
朱咲が胸の内にいることがいつしか当たり前になっていた。朱咲は愛情深く、あかりに優しく寄り添ってくれた。朱咲が離れていくことは寂しいが、与えてくれたぬくもりはきっと心に残り続けるだろう。
「離れても、たまにはお声を聞かせてくださると嬉しいです」
『そなたが望めば、もちろんじゃ』
朱咲はふっと吐息で笑ったようだった。
『だが、離れるのはもう少し先じゃな。それまではそなたのもとに居させてもらうぞ』
「はい」
あかりの返事を聞き届けると、朱咲はすっと気配を消した。
会話が終わったとみた昴があかりに声をかける。
「朱咲様も大丈夫だって言ってくださった?」
「昴にも朱咲様の声が聞こえたの?」
首を振る昴は苦笑を浮かべていた。
「まさか。でもあかりちゃんが頑張ってきた姿を僕が知ってるくらいなんだから、朱咲様もきっと大丈夫だと言ってくださるような気がしただけだよ」
「そっか。……うん、大丈夫だって言ってくださったよ」
昴が小さく頷く傍らで、秋之介が「そういえば」と邸からあかりへと視線を移した。
「引っ越し作業は明日からやるんだっけか。俺たちも手伝うぜ。な、ゆづ、昴?」
「もちろん」
「当然だよ」
「わっ、本当⁉ すごく助かるよ~!」
玄舞家に一時的に身を置いていたあかりの荷物はそう多くはないが、以前ほど家臣がいない朱咲邸に引っ越すのはいささか心細く感じていたあかりにとって秋之介たちの申し出は嬉しいものだった。
そんな彼らの協力もあって、あかりの引っ越し作業は数日で済んだ。
新しい町民の移住が落ち着いた頃になって、地鎮祭を執り行い、朱咲をご尊像へ移して南の地は無事再興を果たした。
それが新しい年を迎える十日ほど前のことだった。
雪こそまだ降らないが、空気はきんと冷えている。南朱湖の側は一段と寒かったが、水面に映る冬晴れの空は青く澄んでいて気持ちが良い。
「年内に間に合って良かったね」
「うん。本当によくできてるね、邸もご尊像も」
あかりたちが見上げる先にはまるで思い出の中から蘇ったような赤の邸と鳳凰を模した朱咲の立派なご尊像がある。
南の地の復興は目前で、あとはあかりや朱咲、民の引っ越しを残すのみとなった。
「いよいよかぁ。なんだかどきどきする」
あかりが草案を作った町を新たな民はどう思うだろう。不安もあるが同じくらい期待もあって、あかりの胸は高鳴っていた。
「活気があって、笑顔が溢れる町になるといいなぁ」
あかりが呟くと胸の内から鈴音が響いた。
『大丈夫じゃよ。妾の自慢の愛し子が心をこめて作り上げ、他でもない妾が加護を授ける町なのだから』
「朱咲様……」
『それにしてもご尊像ができたからには妾はあかりの内から離れねばならぬな。妾はそれがちと寂しい』
「私もです」
朱咲が胸の内にいることがいつしか当たり前になっていた。朱咲は愛情深く、あかりに優しく寄り添ってくれた。朱咲が離れていくことは寂しいが、与えてくれたぬくもりはきっと心に残り続けるだろう。
「離れても、たまにはお声を聞かせてくださると嬉しいです」
『そなたが望めば、もちろんじゃ』
朱咲はふっと吐息で笑ったようだった。
『だが、離れるのはもう少し先じゃな。それまではそなたのもとに居させてもらうぞ』
「はい」
あかりの返事を聞き届けると、朱咲はすっと気配を消した。
会話が終わったとみた昴があかりに声をかける。
「朱咲様も大丈夫だって言ってくださった?」
「昴にも朱咲様の声が聞こえたの?」
首を振る昴は苦笑を浮かべていた。
「まさか。でもあかりちゃんが頑張ってきた姿を僕が知ってるくらいなんだから、朱咲様もきっと大丈夫だと言ってくださるような気がしただけだよ」
「そっか。……うん、大丈夫だって言ってくださったよ」
昴が小さく頷く傍らで、秋之介が「そういえば」と邸からあかりへと視線を移した。
「引っ越し作業は明日からやるんだっけか。俺たちも手伝うぜ。な、ゆづ、昴?」
「もちろん」
「当然だよ」
「わっ、本当⁉ すごく助かるよ~!」
玄舞家に一時的に身を置いていたあかりの荷物はそう多くはないが、以前ほど家臣がいない朱咲邸に引っ越すのはいささか心細く感じていたあかりにとって秋之介たちの申し出は嬉しいものだった。
そんな彼らの協力もあって、あかりの引っ越し作業は数日で済んだ。
新しい町民の移住が落ち着いた頃になって、地鎮祭を執り行い、朱咲をご尊像へ移して南の地は無事再興を果たした。
それが新しい年を迎える十日ほど前のことだった。
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