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第七話 運動会の応援へ
第七話 六
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招集にはやや時間を要したが、やがて午後一番のプログラムが開始した。
「あ、大縄跳びね」
ホノが小さく声を上げる。レヤとフィオが得意げに胸を張った。
「オレ達もいつもやってるし」
「なー」
大縄跳びのルールは制限時間内に連続で跳べた最高回数を競うものだった。開始の笛が鳴ると、競技場のいたるところから回数を数える声があがる。
「タムのチームはすごいね。四〇回を超えたようだ」
ミトドリが放送席前のチームを眺めて呟いた。慈乃もそちらを見る。
「……タムちゃん、寝ていませんか……?」
「そうだね。寝ているね」
なんでもないことのようにミトドリはさらっと答える。
「大丈夫だよ。毎年あのような感じだから」
「はあ……」
それは大丈夫といえるのか。いや、しかしタムならおかしくないように思えてきた。ミトドリが躊躇なく言い切ったからだろうか。
笛が終了の合図を出すと、集計して、次の学年と交替した。
混乱した頭を振って、気持ちを切り替える。
(この学年には……。いたわ、クルルちゃん。トゥナくんも同じチームなのね)
クルルは縄の中央で危なげなく跳んでいた。どこよりも高く跳ぶ必要がある縄の端にはトゥナがいて、軽やかに飛び跳ねている。ふたりとも真剣な顔をしていた。
慈乃も心の中で数を数える。
(三〇……三一、三二、三三、三四……あっ)
三四回目でひっかかってしまった。
「せーの!」という掛け声とともにもう一度跳び始めるも、今度は二〇回にも満たず、その後も記録は更新できなかった。
「クル姉でも難しいのね」
ホノは残念そうにしていた。
各学年の大縄跳びが終了して結果が発表されると、次のプログラムの準備に入った。次は女子によるダンスだ。
花を両手に持って音楽に合わせて踊る姿は、女子らしくしなやかでもありのびやかでもあり、まるで花の精の舞のようだった。数百人のユニゾンは圧倒的で、アシンメトリーも見事なもので、観客は皆一様に目を奪われていた。
万雷の拍手を受けて女子たちは退場し、今度は笛の音がピーっと大きく響く。それを皮切りにはだしの男子達が競技場になだれ込む。しかし、無秩序ではなく、あっという間に整列がなされた。
二度目の笛は短かった。統一された動きで皆のポーズが変わる。
次のプログラムは男子による組体操らしかった。
一人技から始まり、二人技、三人技と徐々に規模が大きくなっていく。五人で扇、六人でピラミッドと技の難易度も上がっていった。七人では三段タワーを披露した。最後に百人規模の大型ピラミッドを四つ作り上げると、笛の音で崩れ、再び整列した。そして最後の笛がなると、門のところまで一糸乱れぬ動きで退場していった。
こちらも拍手喝采で幕を閉じた。
ウタセがプログラム用紙に目を落とす。
「いよいよ最後の種目だね」
最後の種目は全校生徒による大玉送りだった。
スタートの合図とともに児童生徒の頭上を大きな玉が転がり、送られていく。小さい子ほど玉に触りたがるからか最初はあちこち脱線していた大玉は、後半、学年が上がるにつれ、ほとんど落ちることなくゴールへと向かった。
この勝負では白組が勝った。
そのまま整列して、閉会式が執り行われる。
結果発表では紅組の勝利が報告されて、紅組は大歓声を上げた。白組も悔しそうにしていたが拍手を送る。
先生や実行委員の挨拶、クールダウンの体操の後、運動会の閉会が告げられた。子ども達は椅子を片付けるために校舎に戻っていった。
「わたしたちも帰る支度をしないとね」
ミトドリが言ったので、慈乃達も持ってきた物やごみを集めて、片付けた。
帰る道でも、レヤとフィオは興奮気味だった。
「来年はオレ達も運動会に出られるんだ」
「楽しみだよな!」
「元気だね~、ふたりとも」
ツクシが大きな欠伸をもらし、目尻に浮かんだ涙を拭った。その目はとても眠そうだ。
その眠気が移ったように、ツクシと手をつなぐマリカも欠伸をしていた。
「うう~、マリちゃん寝ないで~。ここで寝られたら、ボク負ぶっていける自信ないよ~」
「んー、ねむねむー」
「えええ~」
結局ツクシはマリカを負ぶってあげた。そしてミオとは手をつなぎ直す。
学び家に着くころには、空はすっかり夕暮れ色に染まっていた。
ニアは後ろ歩きになって慈乃と向かい合う。
「今日の夕飯は何にしよっか。みんな頑張ってたし、ちょっとだけ豪華にしない?」
ニアの紅赤色の髪は夕陽に照らされ、いつにも増して鮮烈な色を放っている。顔は逆光になってよく見えないが、目を細めた一瞬だけ、エメラルドグリーンの瞳が煌めいた。
「いいですね。きっと疲れているでしょうから、レモンを使えたらいいです」
「あー、それいい!」
夕方になり、少しだけ強くなった風がさあっと花園を駆け抜けた。
「いつもよりキラキラ!」
「きれいだね」
慈乃の後ろを歩くメリルとテオがわっと声をあげた。ウルフィニは無言で、慈乃の髪をじっと見つめている。
慈乃の視界の端にちらついた自らの髪の一筋は、夕陽の住む鏡のようだった。
「あ、大縄跳びね」
ホノが小さく声を上げる。レヤとフィオが得意げに胸を張った。
「オレ達もいつもやってるし」
「なー」
大縄跳びのルールは制限時間内に連続で跳べた最高回数を競うものだった。開始の笛が鳴ると、競技場のいたるところから回数を数える声があがる。
「タムのチームはすごいね。四〇回を超えたようだ」
ミトドリが放送席前のチームを眺めて呟いた。慈乃もそちらを見る。
「……タムちゃん、寝ていませんか……?」
「そうだね。寝ているね」
なんでもないことのようにミトドリはさらっと答える。
「大丈夫だよ。毎年あのような感じだから」
「はあ……」
それは大丈夫といえるのか。いや、しかしタムならおかしくないように思えてきた。ミトドリが躊躇なく言い切ったからだろうか。
笛が終了の合図を出すと、集計して、次の学年と交替した。
混乱した頭を振って、気持ちを切り替える。
(この学年には……。いたわ、クルルちゃん。トゥナくんも同じチームなのね)
クルルは縄の中央で危なげなく跳んでいた。どこよりも高く跳ぶ必要がある縄の端にはトゥナがいて、軽やかに飛び跳ねている。ふたりとも真剣な顔をしていた。
慈乃も心の中で数を数える。
(三〇……三一、三二、三三、三四……あっ)
三四回目でひっかかってしまった。
「せーの!」という掛け声とともにもう一度跳び始めるも、今度は二〇回にも満たず、その後も記録は更新できなかった。
「クル姉でも難しいのね」
ホノは残念そうにしていた。
各学年の大縄跳びが終了して結果が発表されると、次のプログラムの準備に入った。次は女子によるダンスだ。
花を両手に持って音楽に合わせて踊る姿は、女子らしくしなやかでもありのびやかでもあり、まるで花の精の舞のようだった。数百人のユニゾンは圧倒的で、アシンメトリーも見事なもので、観客は皆一様に目を奪われていた。
万雷の拍手を受けて女子たちは退場し、今度は笛の音がピーっと大きく響く。それを皮切りにはだしの男子達が競技場になだれ込む。しかし、無秩序ではなく、あっという間に整列がなされた。
二度目の笛は短かった。統一された動きで皆のポーズが変わる。
次のプログラムは男子による組体操らしかった。
一人技から始まり、二人技、三人技と徐々に規模が大きくなっていく。五人で扇、六人でピラミッドと技の難易度も上がっていった。七人では三段タワーを披露した。最後に百人規模の大型ピラミッドを四つ作り上げると、笛の音で崩れ、再び整列した。そして最後の笛がなると、門のところまで一糸乱れぬ動きで退場していった。
こちらも拍手喝采で幕を閉じた。
ウタセがプログラム用紙に目を落とす。
「いよいよ最後の種目だね」
最後の種目は全校生徒による大玉送りだった。
スタートの合図とともに児童生徒の頭上を大きな玉が転がり、送られていく。小さい子ほど玉に触りたがるからか最初はあちこち脱線していた大玉は、後半、学年が上がるにつれ、ほとんど落ちることなくゴールへと向かった。
この勝負では白組が勝った。
そのまま整列して、閉会式が執り行われる。
結果発表では紅組の勝利が報告されて、紅組は大歓声を上げた。白組も悔しそうにしていたが拍手を送る。
先生や実行委員の挨拶、クールダウンの体操の後、運動会の閉会が告げられた。子ども達は椅子を片付けるために校舎に戻っていった。
「わたしたちも帰る支度をしないとね」
ミトドリが言ったので、慈乃達も持ってきた物やごみを集めて、片付けた。
帰る道でも、レヤとフィオは興奮気味だった。
「来年はオレ達も運動会に出られるんだ」
「楽しみだよな!」
「元気だね~、ふたりとも」
ツクシが大きな欠伸をもらし、目尻に浮かんだ涙を拭った。その目はとても眠そうだ。
その眠気が移ったように、ツクシと手をつなぐマリカも欠伸をしていた。
「うう~、マリちゃん寝ないで~。ここで寝られたら、ボク負ぶっていける自信ないよ~」
「んー、ねむねむー」
「えええ~」
結局ツクシはマリカを負ぶってあげた。そしてミオとは手をつなぎ直す。
学び家に着くころには、空はすっかり夕暮れ色に染まっていた。
ニアは後ろ歩きになって慈乃と向かい合う。
「今日の夕飯は何にしよっか。みんな頑張ってたし、ちょっとだけ豪華にしない?」
ニアの紅赤色の髪は夕陽に照らされ、いつにも増して鮮烈な色を放っている。顔は逆光になってよく見えないが、目を細めた一瞬だけ、エメラルドグリーンの瞳が煌めいた。
「いいですね。きっと疲れているでしょうから、レモンを使えたらいいです」
「あー、それいい!」
夕方になり、少しだけ強くなった風がさあっと花園を駆け抜けた。
「いつもよりキラキラ!」
「きれいだね」
慈乃の後ろを歩くメリルとテオがわっと声をあげた。ウルフィニは無言で、慈乃の髪をじっと見つめている。
慈乃の視界の端にちらついた自らの髪の一筋は、夕陽の住む鏡のようだった。
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