カモミールの福音 ~花と〈家族〉に癒される優しい世界の物語~

南 鈴紀

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第一〇話 日常の一幕

第一〇話 二

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 早速おままごとを始めた。
「じゃあ、お母さ「役はどうするの~?」
「決めてあるわ。はい」
 ホノはポケットから折りたたまれた紙を取り出すと、それをツクシに手渡した。ツクシは紙を開いて、書かれてある役を読み上げる。
「え~っと……。お父さんがスギナで、お母さんがボク。娘が上からシノちゃん、ホノちゃん、メリルちゃんで~、  息子が双子のレヤくんとフィオくん、テオくん、ウルくんだって~」
「ままごとしなくても、大体そんな感じじゃねえか」
 呆れたため息を吐くスギナに、ホノがびしりと指を突きつけた。
「全然違うわ! ちゃんとやってよね」
「そうよ~、あなた。かわいい娘のお願いはきいてあげるものでしょ~?」
 早くも役になりきっているツクシが追い打ちをかける。スギナは渋々承諾した。
「はぁ……。わかったよ……」
 ホノは満足げににこりと笑うと、ん。朝ごはんにしましょう」
「そうね~。ホノちゃんはレヤくんとフィオくんを起こしてきてくれる~? テオくんとウルくんはお父さんを起こしてきて~。シノちゃんとメリルちゃんはご飯運ぶの手伝ってね~」
 ツクシお母さんはてきぱきと指示を出していく。それに従って、各々も動いた。
「レヤ! フィオ! 早く起きないと学舎に遅れるわよ」
「学舎に通ってることになってるんだ……」
「マジか! 学生だってよ、フィオ。早く行こうぜ!」
「その前に朝ごはんよ!」
 レヤとフィオは学舎に通っているという設定らしい。まだ役に入りきれないフィオはそこが気になったようだが、レヤはむしろその設定に喜んでいるようだった。
 ホノにどやされながら、ツクシのもとに集まる。そこには既にスギナ達の姿もあった。
「お父さん、おはよう」
「……おはよう」
 ホノがハキハキ挨拶するのに対し、スギナお父さんはぼそぼそ返す。
「お父さんはね、おつかれぎみなんだって」
「それにていけつあつなんだよって、おかあさんがいってた……」
 スギナを起こしてきたテオとウルフィニが解説する。やけに口達者な息子である。
「みなさん、ごはんができましたよ」
「ストップ、シノ姉!」
「え、え?」
 突然の中断命令に慈乃の動きが止まる。
「おままごとなのよ? しゃべり方、直して」
「え、あ、はい……」
 ホノの勢いに圧されて、慈乃は思わず頷いてしまったが、役であったとしても他人に敬語なくして話すなんてできるだろうかと不安になった。
 ちらりとホノを見ると厳しい目を向けてきた。これは逃げられそうにない。
 慈乃は小さく息を吸って、心を落ち着ける。そして、言い直した。
「……みんな、ごはんよ」
「まずまずね。まあ、いいわ」
「シノちゃんがですますで話さないのって、すごく新鮮だね~」
「っていうか、できたんだな」
 子ども達よりツクシとスギナの方がよほど驚いたようで、素に戻って感心していた。
 その間にも、慈乃とメリルは予め用意していた空の器や紙でできた食べ物を机に並べていく。
「それでは~、おててを合わせて、いただきま~す」
「いただきます」
 ツクシの号令の後に続いて、皆も声を揃える。
 食べるふりをしながら、ツクシが美味しいか順に尋ねた。
「美味しいかしら~、シノちゃん」
「美味しいで……、美味しいわ。お母さんは料理上手ね」
「シノちゃんは素直でいい子ね~。お父さんにも見習ってほしいわ~」
 含みのある視線をスギナに投げかける。ツクシの顔にははっきりと『からかいたい』と書いてあった。
「……及第点」
「ほら~、こういうところよ~」
「ごちそうさま! オレ学校行ってくる!」
「あっ、オレも!」
 食器を置いて立ち上がるレヤとフィオを、ホノも追いかけようとする。ホノは振り向きざま、様子を眺めていた慈乃に声を掛けた。
「シノ姉も、遅刻するわよ」
「あ、私も学生なんですね……」
「ちなみにメリル達はお留守番ね」
「メリル、いいこでまってるね」
「……いってらっしゃい」
 メリル達に見送られ、慈乃はホノの後に続いて食堂から退出した。
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