カモミールの福音 ~花と〈家族〉に癒される優しい世界の物語~

南 鈴紀

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第一〇話 日常の一幕

第一〇話 一五

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 ちょうど貼り絵が完成したころ、学舎に行っていた子ども達が帰ってきて、食堂に顔を出した。
「たっだいまー! って、このメンツだとオレ浮くな!」
「ただいま、みんな」
 最初にやって来たのはガザとカルリアだった。
 本人が言ったように、ガザのテンションの高さに対応できそうなひとはここにはいない。あいにくと、ツクシ達はまだかくれんぼ中だ。
 カルリアはその脇をすり抜けて、慈乃達に歩み寄った。
「きれいだね。アジサイ?」
 机上の貼り絵を目に留めて、カルリアは微笑んだ。
「光ってるのは雨のしずく?」
「ちがうよ。えーっと、はなの、かご? なんだって」
 メリルがたどたどしく説明するのに、カルリアはじっと耳を傾けた。
「へー、花の加護。もしかして見たの?」
「そうなのよ。きれいだったわ」
 ホノとメリルが「ねー」と顔を見合わせた。
「いいなぁ。私も見たかった」
 カルリアが羨ましそうにため息をつく傍らで、いつの間にかやって来たガザはウルフィニの近くに置かれていた四つ葉のクローバーをつまみ上げた。
「四つ葉じゃん。ウルが見つけたのか?」
「ごこみつけた」
「強運かよ!」
 わいのわいのと話していると、「ただいま」の声とともに続々と子ども達が姿を現した。
「よくできてるじゃないの」
「せっかくだし、廊下に飾ってもらうといいよ」
 クルルとスイセンが貼り絵を見て、それぞれ口にする。
 アスキとライモを連れたシキブとサーヤ、それにヒイラギはガザとウルフィニ、テオとクローバー談議に花を咲かせていた。
「いつつばもあったんだよ」
「オレは六つ葉みつけたことあるぜ」
「……」
「ちょっ、マジだって! そんな目で見るなよ、ラギ!」
「大人げないね、ガザ兄さん」
「サーさんに同意ですぅ」
 ツクシ達はようやくかくれんぼを終えて、食堂に戻って来た。トゥナとソラルも一緒だった。
「なんで俺まで……」
「でも、ソラくんが一番真面目に探してたよね」
「早く終わらせたかったからです」
「ツクシ兄ちゃん、途中でやる気なくすんだもん」
「ほんとほんと。ソラル兄ちゃん達が探してくれて良かったよ」
「え~。ボクだって真面目にやってたよ~?」
 学舎組で最後にやって来たのはタムとヨルメイだった。タムは寝かけていたが、ヨルメイが手を引き、ニアが背を押すことでなんとか歩いているようだった。
「なんだ、みんなここにいる。シノー!」
 ニアが食堂の出入り口で片手を上げる。
「洗濯物と夕飯、今からいける?」
「はい」
 慈乃はニアの隣に並んで、廊下を歩いた。天気の悪い日の洗濯物は遊戯室の一部を使っている。
 渡り廊下に出ると、雨は本降りになっていた。
「梅雨入り、早まりそうねぇ」
 ニアは鬱陶しそうに雨空を見つめたが、慈乃はそこまで嫌だとは思わなかった。
「でも、私は少し楽しみですよ」
 学び家で過ごす初めての梅雨。そこに賑やかな家族がいるのなら、きっと退屈しないはずだ。ついさっき、食堂で繰り広げられた光景を思えば、その予想も現実に変わると確信できた。
 梅雨を予感させる雨音がひどく心地よく感じられた。
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